アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

言葉

『おママ』というのは、母の愛称です。

ジジ、オネコ、私が母を話題にする時、『おママ』というのです。

f:id:harienikki:20170323232233j:plain

(2017年3月13日 診断から約10年1カ月    振り子の時計見たいですね〜と私が言ったら、そうかしら?とおママは笑っていました。)

 

  私は実際、おママに話しかける時は、
心持ち優しく「お母さん」もしくは「お母様」と呼びます。
なるべく丁寧に喋るようにしています。

 

  私はおママがアルツハイマー認知症と診断されてから暫くは、
実の母娘の遠慮のない物言いをしていました。

 

  でもふとした時に、昔に知り合いだった方が言っていた事を思い出したのです。
その方は女性。当時、70代前半でした。

「若い人の言葉はとてもキツく感じるわ。

どうして、ぞんざいで荒っぽいのかしら。嫌だわ!」

聞いてみると、灯油屋の配達に来る青年の言葉が荒くて怖いと仰っていました。
でも、当時30代の私には、配達青年の言葉はたいして酷いものとも思えませんでした。

(若い者にとって普通の物言いでも、高齢の方の気持ちにはキツく感じるのかもしれない。)
漠然とそう思ったものです。

 

   おママがアルツハイマーと診断されてから5年くらい経った頃でしょうか…。
ヤカンに湯を沸かすだけの事ですが、私はしょっちゅうおママと口論になっていました。

実家のヤカンは沸騰したら鳴ります。
私がコーヒーを入れるために沸騰させようとしても、おママは鳴る前にどうしてもポットに入れてしまいます。

「頼むから、ヤカンが鳴るまで火にかけといてよ!」
「もう沸いたわよ!」
「ちょっと、ダメよ。もう少し、鳴るまでそのままにしてよ!私がやるから!」
「うちのヤカンは鳴らないのよ!私は何十年使っていると思っているのよ!知りもしないで勝手な事言わないで!」

しまいにおママは激昂してしまいました。
これではお互い精神衛生上良くないわ〜。
そう悩んだ時にあの女性の事を思い出したのです。

 

「お母さん、心配しないでね。ヤカンは私がちゃんと見てますから。」
と優しく私が言えば、おママはこう応えてくれます。
「あら、あなた、すみませんね〜。」

 

言い方1つで、ちょっとした言葉1つで、お互い楽になりました。

 

   一昨年2015年に、オネコも私も自分達の存在が、おママには娘と認識されていないのではないかと思うようになりました。
それから、私はおママに尚更丁寧に話しかけるようにしました。

他所の人が聞いたら、他人行儀に聞こえると思います。
でも、もし…、おママが私達を娘と実感できていないのだとしたら、
家族ならではのフランクな言い方ではビックリしてしまうでしょう。
蔑ろにされたと思うかもしれません。

 

  認知症のケアで「ユマニチュード」という手法があります。
私はそれを実践しているわけでもないし、出来ているとも思えません。
でも、これからも、優しいトーンで丁寧な言葉で語りかける。
それだけは続けようと、自分に言い聞かせています。

 

ansinkaigo.jp

ファイルを見ながら 2017年3月21日

f:id:harienikki:20170323233205j:plain

         (2017年3月9日 診断から約10年1カ月)

 

最近、おママとなるべく話をしようと思っています。

特に今日は午前中にジジと私の2人とも出掛けていたから、おママは一人ぼっちでお留守番でした。そんな日は特にね。

 

   今だにアルツハイマー認知症のおママが、数時間を1人で家にいること自体、

奇跡のように思います。

何をして過ごしたかと言えば、貼り絵を2枚こしらえていました。

本当に貼り絵に感謝です。

 

   昼過ぎに2人でファイルを開いて話しました。

 

「形をまとめて切っておくのよ。気が向くまま、それを組み合わせていくから、

続けて何枚もできる事があるんです。」

 

おママの場合、殆どの記憶は5分くらいしか持ちません。

だから、おママが今この時にそう語っても、制作時の考えとは違うと思います。

でも、指差しながら語るおママはとても良い表情をしています。

 

そして3枚の貼り絵を指し示し、

「これはとてもこだわったのよ〜」

と、言うのです。

 

その1枚が一番上の貼り絵です。

2枚目はこれ。⬇︎

そして3枚めは過去記事で使ったこちら⬇︎です。

f:id:harienikki:20170323233349j:plain

            (2017年3月7日 診断から約10年1カ月)

harienikki.hatenablog.com

 

    共通点は画面を斜めにわたるパーツです。まるで流れのように見えます。

その太さが1列、2列、3列と幅を広げていく点が違いでしょう。

 

「斜めの流れの間に、うまく細かいパーツを配置していくのが難しかったのよ。

その太さが変わると、又バランスが違うし…。」

 

   おママは自作を解説してくれました。それがとても信憑性があり、納得できる内容だから驚きです。

たとえ、制作時と違っていても、後々の貼り絵を見ている時の考えでも…。

面白いな〜と思いました。

おつかい

   先週の水曜日の事です。

ジジの体調がイマイチなので、午後のおつかいには「私が御一緒します!」と志願しました。久しぶりにおママとお遣いに行きたかったのには理由があります。

f:id:harienikki:20170325004342j:plain

           (2017年3月13日  診断から約10年1ヶ月)

 

  私なりに、
おママが買い物をする時の様子と、
駅前から家まで帰れるか?
1人で帰れなくとも、せめて自分の家の外観はわかるか?確認したかったからです。

 

  往きは下り坂だから楽に思えますが、おママの歩みはのろくなったと思います。

 

「あれからこっちが、もっと小さければいいのにね〜。」

と…。

アルツハイマー認知症のおママは言葉が出にくい時があります。
訳しますと、
『家からスーパーまでもっと近ければ良いのに』ですね。
一応、『近い』ですよ
と、訂正しておきました。

 

  歩いている時から
「なにを買うんだっけ?」
を連発していました。それを覚えているのは難しいようですが、レジのお支払では小銭もバッチリ使えます。

買物袋は少し重いですが、
「私、持つわ〜」
と言うので、どうぞどうぞ。おママよろしくね。私はひどい娘ですわ。

 

   帰りはなるべくおママに、前を歩いてもらいました。曲がり角も悩む様子はありません。

 

  難所は途中の上り坂。
おママは荷物を抱えてとぼとぼ歩きながら言うのです❗️


「このくらいなら良いけど、もっと重くなるようなら、あの押して歩く車を持って来たのにね〜。」
えっ‼️
ジジのシルバーカー‼️今年買った新参ものを覚えているのか⁉️

 

harienikki.hatenablog.com

 

  坂を上がり切って、家が見える頃。流石のおママも息を切らしているので、私は言いました。
「持ちましょうか?」
すると、おママは笑って、

「なにを今更!もう、家がそこにあるっていうのに!」
おママの指先はしっかり自分の家を指していました。

 

良かった‼️
ミッション、クリア❗️
まだ、おママは我が家が分かるのだわ。

 

   それに少しオマケ付きだから尚更嬉しい。

 

  この話をオネコにしたらシルバーカーの件に反応していました。(笑)
「娘だって、娘かどうか分かんなくなるのに❗️

まだ買って日の浅い手押し車が記憶に残っているなんて❗️どういう事かしらね。」
不思議ですよ。本当に。

「きっと記憶はまだらで、分かっている時と、分かってない時があるのね〜。」
しばし、オネコと2人で笑い話に花を咲かせました。

おいくつ⁉️

  例によって例の如くですが…。

今日もおママは居並ぶ貼り絵のファイルを眺めては、
「こんなに…」
と、自嘲気味に言いかけました。

 

f:id:harienikki:20170325004615j:plain

         (2017年3月7日 診断から約10年1ヶ月)


   私はいつものように、『こんなに有って、私か死んだらどうするの』
という続きを想定して、応えを準備していました。

 

すると、変化球が飛んできたのです。

 

「わたしがこの先お婆さんになっても、ずーっとやってたら、大変なことになるわ…。どっかで区切りを付けなきゃと思うけど、どうしても、やりたくなっちゃうのよね〜。」
「………。」

おそらく、私の笑顔は固まっていたでしょう。


  おママ…。今、幾つのつもりでいるの?
もしかして60歳くらい?

 

(83歳よ。すでにお婆さんですが…。)

 

  そう言いたいところですが、自分を若いと思っている時に真実を伝えるべきか?
女心が傷つくだけですわ。(笑)


「好きな事、やりたい事は続けた方が良いですよ…。」
と、私は当たり障りなく言いました。

おママはその時々で認識している年齢が変化するようです。
平均すると70歳くらいの認識でいる事が多いのですが、今回は更に若返っているようでした。

  でも、私は少し考えました。
数日前にジジの介護認定についてオネコと話をした時の事です。
ジジよりおママは足腰丈夫で元気です。

それでオネコが、
「もしかしたら、おママはこのまま10年くらいいけるかもね〜。」
と言いました。

 

  確かに…。
これからもお婆さんになっていく伸び代がある❗️
まだ83歳なのだから。
おママ元気でいてね。

年賀状

f:id:harienikki:20170325004936j:plain

   <四角の細かいパーツの配置にはものすごくこだわっていました。>

        (2017年3月6日 診断から約10年1ヶ月 )

 

 貼り絵のファイルを開いて、おママと新作を眺めながら話していると、
「あれっ?」
貼り絵ではない葉書が混ざっているではありませんか。
それは年賀状3枚です。80歳を過ぎると頂く枚数も少なくなりますね。

女学校時代のお友達と知人からでした。それも3年前の…。

 

これ…。
葉書は葉書でも、私の頭ではちょっと分類が違います。

 

「これは年賀状ですね。」
「あら、そう?」
「おママの作った貼り絵とは違うし…。」
「そうかしらね〜?」

 

f:id:harienikki:20170325005048j:plain

               (2017年3月16日撮影)

 

このファイルは貼り絵用だから…。


「年賀状は引出しに仕舞いましょうね。」
私がそう勧めても、あまり納得いかない様子でした。
しかし、おママは取り出した年賀状を撫でながら、
「あ、そうかも〜」
と、ようやく納得してくれました。


  おママのなかでは自分の作った貼り絵と年賀状の区別が付かないのね。(笑)

  この時は開いた場所に、2人で新作の貼り絵を移動させました。
しかし、後で考えると、私は余計な事をしてしまったのかも知れません。

 

   おママが自分で年賀状を貼り絵ファイルに納めた時、

おママなりの思いや考えがあったはずです。忘れてしまったとしても…。


もしかしたら、お友達からの年賀状をファイルに入れて眺めたかったのかも…。

 

  何もおママの目の前で入れ替えなくても良かったのではないか?

私はそこに思い至らず、自分の尺度を押し付けたような気がしてきました。

 

  アルツハイマー認知症のおママに寄り添っている気になってましたが、

私もまだまだだな〜と、思うこの頃です。(笑)

 

ヘビーローテーション

f:id:harienikki:20170325005338j:plain

(2017年3月10日 診断から約10年1ヶ月)

f:id:harienikki:20170325005407j:plain

(2017年2月22日 診断から約10年)

 

   上の貼り絵には共通点があります。

言うまでもなく、同じ和紙の千代紙を使いました。

過去にも登場していますが、この2月末から3月に上旬にかけては、

大変なヘビーローテーションでした。

バリエーションはいくらでも作れる❗️と言わんばかりにです。

3月7日はこの連作を4枚、11日は5枚作りました。

他の日もこの千代紙を見ない日はないくらいでした。

それには強いこだわりも感じます。

でも、おママは楽しそう。それが一番ですね。

f:id:harienikki:20170325005604j:plain

   それで、元の千代紙はこんな感じでした。

オネコの記憶だと、小津和紙で買ったかも〜⁉︎との事です。

結構、模様を意識して上手に使っていると思います。

さすがに使い過ぎて、今日は飽きたのか貼り絵はお休みでした。

でもこれからもまだまだ登場しそうな予感もします。

しばらく、連作が続くかもしれませんが、見ていただけたらと思います。

どうぞよろしくお願い致します。

 

   追伸…。2007年(診断の年)の貼り絵にも登場しているので、それ以前に購入したのですね。

紙類の在庫の中から、その都度、発見しては夢中になったのでしょう。

 

harienikki.hatenablog.com

 

 

harienikki.hatenablog.com

 

 

 

 

食器洗い

f:id:harienikki:20170325005828j:plain

             (2017年3月1日  診断から約10年1ヶ月)

 

   唐突ですが、お料理と後片付け。どちらがお好きですか?(笑)

殆どの方はお料理でしょう!(実は私は片付けですが…。)

 

   おママもそうだったと思います。だってオネコも私も中学生になる前から夕飯の後片付けをやらされていましたから。

 

   食べる事も作る事も大好きだったおママ。
一般的に、認知症になると料理が出来なくなると言われます。
おママもそうです。

 

   おママはアルツハイマー認知症と診断されてから1、2年は簡単な物は作っていたようです。
そして、10年近く野菜のたっぷり入ったスープを毎日作って、ジジの健康維持に貢献してきました。
しかし、昨年(2016年)夏頃から作れない日が増えました。
嫌がると言うでもなく、自然に作らなくなったのです。ジジも私達も「やれ」とは言いませんし…。

 

f:id:harienikki:20170325005855j:plain

                     (2017年3月10日撮影)

 

ところが、後片付けの食器洗いはまだまだ上手です。

 

   朝は微妙ですが(笑)
昼食後は率先してパパッと洗います。

私がお客様に見えるのでしょう。外面良いですね〜。

終わったら、
「洗って下さって、ありがとうございます!」
私がそう感謝を伝えれば、おママの笑顔も輝きます。

   夜はジジに
「洗い物、どうした?あ、まだみたいね〜。」
と優しく言われれば
「あら、ほんと!」
と素直にやるらしい。ご機嫌が悪いと、時々ブーブー言いますが…。(笑)

 

  やればキレイに洗い上げ、水切れの良いように考えて並べるのも感心です。

 

   お料理は作れなくても、片付けは出来る…。
お料理は準備や下拵えがあり、幾つもの作業が重なっていたりしますから、複雑なんでしょう。
   それにひきかえ食器洗いは、洗うという作業だけ。分かり易いのかも。
あ、お湯で洗ったり水で洗ったりしているようです。洗剤も使います。

 

harienikki.hatenablog.com

 

  前述の…、『朝は微妙』の件ですが…。
ジジによると、朝食後は作業机に向かって貼り絵を始めてしまうそうです。

   今日ですか…。
案の定、実家に着いてすぐに、私がやりました。(笑)

出来ることは続けて欲しいけど、無理に呼びつけてまでという気にはなりません。

子供の躾と違いますしね。

ご当人はやっぱり❗️貼り絵に没頭してました〜!