アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母が作った貼り絵たち。

記憶について No.22 裏ワザ

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(2017年7月20日  アルツハイマー認知症の診断から約10年5ヶ月

クラフトパンチのおママ流裏ワザを使って抜いたハートを使っています。上手い具合に2色になっています。)


裏ワザがあった!

  時々、おママは昔に型抜きしたパーツを思い出したように貼り絵に使います。
それで時間がある時に、しまい込んでいたクラフトパンチの入った箱を出してみました。

 

  案の定、おママは興味津々です。
「前は随分使っていましたね。」
「そうだったわね〜。」
何処となく確証のない相槌でしたが、私が紙を挟んで力を掛けて型抜きして見せると、そのガチャンという音におママの脳は共鳴したようです。

 

  ガチャン、ガチャン、ガチャン❗️
私は紙を横にずらしながらハート型を幾つも型抜きしてみました。

すると、形の欠けたハートが出来たのです。
ハート型ならぬ三日月❗️
「あれっ。ハートが欠けちゃったわ。」
すると、おママはケタケタ笑いました。
要するに前に抜いた箇所から十分に間隔を取らないで、新たに型抜きしてしまったのです。


「貸してごらんなさい。それは良くある事なのよ。こんな時には…。」
おママはちょっと得意げに微笑んで続けました。
「こんな事、教えて良いかどうか…。」
「なになに?奥の手ですか。」
「まぁね。これはね、裏返して使うのよ。」
「へ?」


  おママはクラフトパンチの上下をひっくり返しました。
確かにクラフトパンチを裏返して紙を挟むと、型抜きされる部分がはっきり見えます。

 

( ⬇️は参考写真です。星型のクラフトパンチは通常の使い方。ハート型は裏返した状態。抜き加減がはっきり分かるので、ちょうど良い色合いを狙って型抜きできます。)

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「なるほど。思ったように型抜き出来るのね。」
「わざと欠けさせることも出来るのよ。」
「すごいですね。」
おママは独自に編み出したクラフトパンチの裏技を思い出したようです。

 

肝心な事は…。
  熱心にクラフトパンチで型抜きをするおママ。しみじみと語り始めました。

「私は娘が2人いたのよ。」
「……⁉️」


  一応、この日は娘を2人産んだ記憶があるのですね。

そのうちの1人が私なのですが…。それは…ご存知ではないのかな…?
いつもは優しい?私ですが、この日はおママの言う事を上手く咀嚼出来ません。


(なんだ、そりゃ〜〜❗️クラフトパンチの裏技は思い出せても、私が娘だとは思い出せないのか〜〜⁉️)


と言いたい心境でしたが、ぐっと堪えました。(笑)


「そうですか。」
「子育てが終わって…、こういう事は、こういう事はなんと言うんだか…。」
「手仕事ですか?」
「そうそう。その子達が学校を出てから作り始めました。
おママは並んでいるファイルを指差しながら、
「それでこんなに沢山増えててしまったのよ。」
「そうなんですか…。」


   おママは気が済むと、クラフトパンチで抜いたばかりの沢山のハート型を集め始めました。
「これ、あなたにあげるわ。持ってお帰りなさいね。」
「は、はい。ありがとうございます。」
私はおママに言われた通り、ハート型を持ち帰れるように紙に包みました。

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(2017年7月19日撮影)

当たらずとも遠からす。
  あながち、おママの言っている事は間違ってはいません。
でも、貼り絵を始めたのは2人の娘が結婚して随分経ってからです。
学校を出てからと言うのも、ちょっと間が空きすぎじゃないか?

おママが趣味の手仕事として皮工芸を始めたのは、確か私が中学生くらいでしたか?
まだ、娘どもはバリバリ学校に行ってましたよね〜。(笑)

 

  記憶について、
以前にも感じた事ですが、手先から蘇る記憶ってあるのだと思います。

 

おママの場合は娘の記憶より、手の指先の記憶の方が強いのですね…。
僻みたくもなりますわ。(涙)

 

  おママには、持って帰るように言われたハート型ですが…。
私は帰る前に、こっそりおママの作業机の上に戻しておきました。
きっと、一連の事を全部忘れて、可愛いハート型を発見したら、
おママはとても喜ぶでしょう。

 

  私の目論見通りでした。
翌日、私はファイルの中にこの貼り絵を見つけました。
なかなか、洒落てますね〜、おママ❣️

 

 

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 おママの貼り絵を見て下さり有難う御座います。