(2018年1月10日 アルツハイマー型認知症の診断から約10年11ヶ月)
*先週金曜日の午後
寒いわりには、昼ご飯の支度の時から、おママは元気でした。
「あなたにこんな事をして頂いたら申し訳ないわ。私がやるわ。」
他人行儀に(ほぼおママからすると私は他人です)丁寧な話し方をして、妙に頑張ってお手伝いをしようとしていました。でも少しやったら頭が痛くなるのですね。
「ふらっふらするのよ。へんなの。」
「まぁ、お母さん、ゆっくり座っていてくださいな。」
「すみません。お願いしますね。」
それでも食欲はあるし、食後の洗い物はいつものように率先してやってくれました。
その後、私が階下のパソコン部屋で掃除でもしようかなと思っていると、ジジがバタバタと2階から降りてきました。
「おママが暇を持て余して『することが何もない。何をやったらいいか分からない』と言っているよ❗️」
あら〜。そうですか…。
「様子を見てこようか。」
階段を上りながら、私はふと考えました。
おママはアルツハイマー型認知症ですから、「することが何もない」と言うのは不思議ではありません。でも、今までおママからあまり聞きかなかった言葉です。それでジジも私に伝えたかったのでしょう。
診断から11年。意欲や気力の減退は仕方ない。
* ちょとした違いですが…。
「もう、どうしたらいいかわからないー‼️」
よくおママは昼食の支度をしなきゃと焦って訴えます。また、夕飯の時も然り。
この手の叫びは、だいたい食べる事に終始しています。
これは長年おママが家事を務めてきた中で、如何に食事の支度に大きな比重があったか。そのあらわれだと私は思います。それと、人間はつくづく食べる生き物ですしね。(笑)
やらなければならない事が朧げに分かっていて、何をしたらいいかわからない。
やる事がなくて(分からなくて)、何をしたらいいかわからない。
これは微妙に違いますね。
今回は後者です。
私が子供の頃から見てきたおママは、いつも何かをやっている人でした。
家事、介護、夫や娘どものあれこれ…。
その間、趣味で始めた皮工芸をコツコツ続けました。その後、皮による本の装丁の勉強から工芸金箔やモザイク技法、その派生としてマーブル紙も染めました。私は好きな事、やりたい事を見つけて取り組むおママの背中を見て育ちました。
その延長線状に現在の貼り絵があります。
この病を得ても、今まで「やる事がある」おママは幸せだった。
(それも失われていくのは、自然の摂理…。)
なんてね。心穏やかに悟りの境地で2階に上がると、おママはにこやかに微笑みました。
「あら、あなた、どうしたの?」
私はてっきりおママが無気力にぼんやりしている様を想像していたのですが、違うではないか。
「何か紙でやりますか…。」
「えっ!なになに?」
心なしか、ぱっとおママの顔が輝きました。
それから、2人で包装紙の細かい模様を切り抜きました。楽しそうにハサミを手にしているおママを見て思いました。
(もしかして、今回は気力の問題じゃなくて、単なる構ってちゃんだったのか?)
構ってちゃんは不安感の顕れだと思うけど、とりあえずおママが笑っているので、良しとしましょう。
因みに…。
私が無気力にぼんやりしている時、ゴロゴロしている時は、大抵やるべき事は分かっているのですが、やりたくない時であります。(笑)
おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。