アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母が作った貼り絵たち。

おママのルリユール「影絵とお話」『暮らしの手帖』第二世紀より

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(2018年9月3日 アルツハイマー認知症の診断から約11年7ヶ月)

 

台風15号で大きな被害のあった千葉県内が気がかりです。

いまだに停電が続き休校になっている学校もあるとのことです。

停電で心配なのは医療機関

一般家庭ではエアコンが使えないことによって熱中症が懸念されます。

そして、建物の被害も多いようです。

携帯電話も使えず、SNSで情報発信が出来ず、情報が充分に伝わっていない様です。

まだ被害の全容が完全には見えていないとの報道に、心配が募ります。

www3.nhk.or.jp

 突然のことでした。

9月11日午後。

おママは自分の部屋に居ました。何か不穏な気配で蠢いていたのです。古くて開けようとすれば軋むタンスの引き出しを、ギシギシ動かしたり物を出したりしまったり…。

(なんだろう?)

私は気にはなっていたのですが、夕食の支度中。便宜上放置していました。

ジジも大相撲をテレビ観戦中。おママは眼中になかった様です。

 

しばらくすると、おママは箱を持ってリビングに現れました。

「ねぇ、これ、ほら!見て。キレイよ。」

箱には一冊の本が入っていて、おママはそれを開いて見せました。⬇︎

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確かに綺麗ですね❗️

童話でしょうか?藤城清治さんの影絵が挿絵になっています。

私は直ぐに思い出しました。

「お母さん!これはお母さんの作品じゃないの!」

 

そうなんです。おママが50代から認知症になる数年前まで取り組んだヨーロッパの伝統的な製本技法ルリユールの作品でした。

 

私はその本を手にしてパタンと閉じました。皮で装丁され、モザイク技法や工芸金箔の技法を組み合わせたデザインに懐かしさがこみ上げてきました。

「ちょっと‼️ なかがキレイで見ていたのに…。」

おママは私の行動に不満顔でした。

おママの言わんとする事は分かりますよ。藤城清治さんの影絵はとても綺麗ですもの。でもね、私には昔のおママが精魂込めた装丁の方が大事なのよ。

 

⬇︎それはこちら。表紙

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⬇︎裏表紙

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おママらしいデザインです。(^O^)

 

以前、⬇︎こちらの記事でもおママのルリユールの作品をご紹介しています。

harienikki.hatenablog.com

 

ルリユールとは([おママのルリユール「星の牧場」]にも記載しています。)

「ルリユール」はフランス語です。

意味はヨーロッパの伝統的な製本技法。

 

  映画かドキュメンタリーなどで、ヨーロッパの歴史ある名家の書斎を見た事があるでしょうか? 書斎の壁面全体を覆い尽くす蔵書の全てに、その家独自の装幀を施されているのです。上等な皮革の上にはキラキラ輝く金箔で文様や紋章が入っている…。

想像するだけでも、ウッっとりするほど美しい本たちです。

  ヨーロッパでは16世紀にグーテンベルクの印刷技術が普及して、本の出版は盛んになりました。

その頃は出版と印刷、製本の職分がはっきり分かれていなかったので、職人間で権利の間の揉め事も多かったそうです。

  そこで1686年にルイ14世が「パリ市では出版、印刷の2業者と製本業者はお互いの職分を超えてはいけない」という御触れを出したとか。

以後、本は仮綴の状態で販売され、購入者は好みの製本屋にそれを持ち込んで製本してもらうというスタイルが定着していたそうです。

  そうなると、富ある者は豪華な蔵書にしますね。そこまで上等にしなくても、自分オリジナルの装幀になるのですから素敵ですね。当時の人々にとって、今では考えられないほど、本は愛着のある貴重なものだったはずです。

本がおしなべて愛蔵本であった時代、ヨーロッパで培われた伝統製本技法がルリユールです。

 参考にさせていただきました。⬇️ ありがとうございます。

letterpresslabo.com

 

 暮らしの手帖』から

 おママは装丁をする時、古くなってグズグズに解けそうになっても捨てられなかった、思い入れのある本を使いました。

汚れてしまった表紙を取り、丁寧に綴じ直してします。そして、本のイメージに合うデザインをおママなりに考えて装丁しました。

それはとても細かく時間のかかる作業ばかりです。

まだ実家にいた頃の私は、集中して取り組むおママの背中に、心の旅路を行く姿を感じていました。

 

主婦としてバリバリの現役の頃、『暮らしの手帖』はおママに最も影響を与えた雑誌です。お料理の作り方、商品の実験など、高度成長期の主婦にとって指針になる情報が満載でした。

その中で影絵作家の藤城清治さんが挿絵を手掛けた「お母さんが読んで聞かせるお話」はおママが大好きだったシリーズだったのでしょう。

 

1992年、今から27年前です。

おママは57歳でした。

古くなった雑誌を全部残しては置けないと覚悟を決め、せめてその美しさと物語に心惹かれた部分だけでも名残にしたいと思ったのかしら。

おママは第二世紀(第1号は1969年昭和44年初夏から100号1986年昭和61年)の『暮らしの手帖』30冊から30話分を大事に取り出して『影絵とお話』にまとめました。

 

改めて見直しますと、私にとっておママの装丁は格別のものですが、その中の全ページが宝石箱の様に思えます。

 

⬇︎中表紙や目次は手書きです。

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拡大写真

ボルドーの皮をベースにして、濃紺、白、オレンジ、緑の皮をモザイクしています。技法的にはボルドーの皮の表面で、他の色を嵌め込みたい部分を鋭いナイフで削り細かいヤスリをかけて凹ませます。そこに薄く削いで幾何学文様に切った色皮を嵌め込んでいます。

タイトルと金のラインは金箔で箔押しをしています。専用の糊と熱したコテをを使っていました。文字は活版印刷の活字を特注で作ってもらい、それで金箔押しをしていました。

おママ本人は完成させた当初も現在も、満足のいく仕上がりではないかもしれません。でも、おママの貼り絵の雰囲気って、27年前には出来上がっていた様な気もします。(^O^)

 

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 ⬇︎「お母さんが読んで聞かせるお話」をまとめた書籍です。

www.kurashi-no-techo.co.jp

www.kurashi-no-techo.co.jp

 

本日アップの貼り絵

去年(平成18年)9月3日に制作された作品です。

丁度、1年前でした。(^O^)

こんなデザインがルリユールで実現したら素敵だな〜と思いました。

 

 

おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。