(2019年12月2日 アルツハイマー型認知症の診断から約12年10ヶ月)
*月が変わると…
1ヶ月終わって月が変わると、まず何をしますか?
私はカレンダーをピリッとめくります。
実家のダイニングに掛けているのは、毎年電気屋さんから頂くカレンダーです。
大抵、西洋絵画の写真なので、綺麗だし格調高くて数字も大きいし、とても良いカレンダーだと思います。
おママは捨てられない世代の人なので、綺麗なカレンダーは取って置く主義の人でした。
私は情け容赦なく、捨てられるし、割れ物を処分する時に包んだりします。
時には下記の過去記事のようにジグゾーパズルを手作りして遊んだりもしますが、
上手くいかない事も多々あります。結局切断した西洋絵画の写真は貼り絵のパーツになってしまいました。⬇︎
*昨年11月のカレンダー
師走に入って最初に実家へ行った12月2日。ダイニングのカレンダーはまだ11月のままでした。
それをピリッとめくった私は、かねてより胸に秘めていた計画を実行に移しました。
1ヶ月間このルノワールの『花瓶の菊』を眺めながら、
(小菊が溢れんばかりに生けられていて綺麗だわ。まるで花の模様みたい。ジグゾーパズルか貼り絵に使えないかしらね)
と思っていたのです。
⬇︎これ。
ハサミを入れようとした時、私はある事に気がつきました。
(お花の部分はどのピースも似たような柄になってしまって、パズルだったら変化がなくて、おママには難しいかも。)
それで、急遽直線的に切り分けて貼り絵に使い易い大きさにしようと思ったのです。
私がハサミと紙を持っていると、おママは「なになに?それをどうするの」とにじり寄ってきました。そして一緒に切ってみました。
⬇︎これは一部です。
本当にごめんなさい。貴方の絵の写真をバラバラに切断して…。
ただ、コラージュをしてみようとしただけなんです…。m(_ _)m
この写真、過去記事にも登場しています。(^O^)
それは⬇︎こちら。
2019年12月版の『今月のイチ押し』の貼り絵は、12月2日に制作された連作の名残を使った作品だったのです。
*興に乗ずる。
最近のおママは症状が進んで、自分が貼り絵を続けている事を普段は忘れています。
作業机に向かった時、貼り絵を収納しているファイルを開いた時、
おママは天啓に打たれるように思い出すのではないか?
私はそう想像しております。
そのため、この時も初めは
「これをどうするの? 貼り絵に使うって? なにそれ…。」
なんて言っていました。
貼り絵の台紙にしている越前和紙の葉書を机の上に出して、その白い葉書の上に切り分けたパーツを乗せてみると、なんと映える事でしょう❗️
急におママは興に乗ったのか、次々と連作を仕上げていきました。
その数、5枚。(^O^)
1番上の作品は、5連作の最後、5作目に当たります。
*連作の順に見てみると…。
最近は寒いので、暖房がよく効くダイニングテーブルで制作をしています。
⬇︎この写真は最初の1作目の構成を考えているところです。ところが5作目の一部分も隣に見えていますね。
①1作目
写真を撮ったり、切り屑を片付けている私に
「こうしても良い?」とか「どうしたら良いの?」と聞くたびに、
「ああ、それで良いんじゃない」と私に軽く言われながら仕上げた貼り絵です。
どうも調子が戻ってこないようなので、糊付けの時はずれないように抑えるなど、少々手伝いました。
②2作目
中央に大きめの四角を配置したおママ。その角を落として柔らかい形にしたのはおママです。こういう場合、中央を先に糊付けした方が周辺のパーツの配置を考える上でも良いと思い、
「まず、真ん中の四角を貼ってしまったら?それが中央にきちんと収まると周りがやり易くなるわよ」
などと私が口を出しているのを聞きつけたオネコは苦言を呈しました。
「好きにやらして上げなさいよ。」
いえいえ、助言をしただけですけど…。
でも、少しは反省して、私はこの日はそれ以後、おママの作業を放置しました。
周辺の三角形の色合いや四隅の正方形の配置など、おママはかなり考えているのだと思いました。
③3作目
切れ端や余った部分を並べただけのようですが、遊び心が踊っているような、リズムを感じます。私が気がついた時には糊付けも終わっていました。
④4作目
⬆︎4作目を制作中の写真。
たくさん切った正方形のパーツだけで構成した貼り絵です。
配置を考えていた時は見事なシンメトリーでしたが、糊付けの時に位置が微妙に崩れてしまいました。でも、それほど強烈な破綻はないようです。
ブツブツ言いながら、色合わせを考えていたようです。
おママ流石でした。
⑤5作目
本日トップにご紹介した貼り絵です。
私が台所で夕ご飯の支度をしている間に、おママは中央の風車?と両脇の三角と正方形を配置して糊付けしていました。
「これで良い事にするわ。」
とおママは笑顔で私に宣言しました。
「素敵ですよ。裏に日付を書いてファイルにしまいましょう。」
私はそう答え、ボールペンや貼り絵を収納しているファイルを取りに行って戻ると、
おママは再びこの貼り絵に向き合っていました。
そして、小さな5つのパーツ(8角形と円形もどき)を、おママはほとんど迷う事なく決めて貼り付けたのです。
5枚目ともなると、昔からの勘が蘇ってくるのでしょう。自信を持ってデザインを決めているおママの姿に、私はたくましさを感じました。
ここ数ヶ月、「お題方式の貼り絵」が増えましたが、おママは1つのお題で何作か制作する事がよくあります。
そして、決まって最初の作品より後の作品の方が楽しげで、おママの遊び心が溢れているような気がします。
認知症歴12年。本当に一時的ではありますが、それでも、おママはやっているうちにデザイン感覚や勘を取り戻す事ができるような気がしました。
(注)「お題方式の貼り絵」とは
昨年の夏ぐらいから、おママは貼り絵に使う紙を自分で1から探して選ぶ事が難しくなってきました。それが出来ない時の方が多いのです。
それで、あらかじめ私が作業机に何種類かの紙や切れ端を出して置き、まるでおママが貼り絵をやり掛けていたと思えるようにお膳立てをする事が増えました。私はこれを「お題方式の貼り絵」と呼んでいます。
おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございました。