(2021年5月15日 アルツハイマー型認知症の診断から約14年3ヶ月)
*レッツ ゴー
7月の中旬ごろから、おママの頭髪を見る度に気にはなっていたのです。
8月中には行かなきゃね。
そうしたら、8月16日にジジから言われました。
「おママね、髪が伸びて自分でも気になるみたいだよ。」
そうでしょう。癖っ毛なので伸びた髪が膨らんで、頭がとても大きく見えますもの。
前回おママを美容院に連れて行ったのはいつだったか?
ブログにはアップしていませんでしたが、4月16日でした。
丁度4ヶ月です。ここいらが限界ですね。(^◇^;)
昼食後、
「お散歩がてら美容院に行きましょう」
と誘ったら、おママは「おさんぽ」と聞いて目を輝かせました。外を歩きたかったのでしょう。
「髪の毛が伸びましたね。美容院に髪を切りにいきましょう。」
語彙が乏しくなったおママにはそう説明しても混乱するだけです。
かみ?きる?びよういんってなに?
だから、私はあくまでおママが反応する「さんぽ」を強調しました。
帽子をかぶって、さぁ出発です。
あいにくに曇天で、今にも雨が降りそうでした。
おママ本人にすれば「おさんぽ」の行き先も用事も理解できないまま連れ出されるのです。
こちらとしたら、騙して連れ出すのとさして変わりません。
ほんの少しだけど、心の隅にやましさがありました。
*雲行き怪しい
駅前の美容院まで通常歩いて6分です。でもおママと一緒ならゆっくり歩きます。
玄関を出て、角を二つ曲がったところでおママは立ち止まりました。
あいにくに小雨が降ってきました。
「あぁ、わたし、だめだわ。きょうはだめなの。」
「そうですか。だめなのですか?」
「そうなの。だめなの。なんか、もう、だめなの。」
「すぐですよ。蒸し暑いですね。でも、もうすぐ着きますから涼しい所で座って休めますよ。」
「そうなの?」
最近おおママは語彙が極端に少なくなっています。
どこに行くのかわからない。
この人(チャーコ)悪い人じゃなさそうだけど、よくわからないし不安だわ。
しかも顔には変なもの(マスク)つけているし、雨も降っている。
この感情の全てが「だめなの」に集約されているのでしょう。
もし、どうしても帰ると言い張ったり、一歩も動かなくなったら、私は戻ろうと思いました。しかし、不思議とおママは歩いていました。
少し進んでは
「あぁ、わたし、だめだわ。きょうはだめなの」
を繰り返しながら、結局、美容院に着いてしまいました。(^◇^;)
*「連れ」なんですよ
天気が悪いせいか、店内は空いていていました。美容師さんに勧められるまま鏡の前に移動するおママを見て、私は一抹の不安がよぎりました。
これまで、おママがカットしている間、私は待合室で待機していました。
しかし、現在のおママは前回4月のおママとは違います。症状は進んでいます。
もし、私の姿が見えないと、おママは一人で不安になるのではないか?
突然、帰ろうとして美容師さんを困らせるかも知れません。
私という「連れ」がすぐ側に居ればおママも安心でしょう。
それで美容師さんに事情を話して、おママのすぐ近くで待たせてもらうことにしました。
順調にカットが終わり、シャンプー台へ移動します。
「さっぱりして素敵ですよ。」
そう声をかけたら、おママは嬉しそうに微笑みました。
私はホットしました。「だめなの」と言われても連れてきて良かったです。
しかし、しかしです‼️💢
おママがシャンプーをしてもらっている数分間で、私の存在は失くなったのです。
終了後、私がお会計をしようと財布からお札を出そうとしたら、ママは驚愕の声を上げました。
「どうして!あなたが!」
私の分を払うんですか?
そう言わんばかりに、おママは私の手を制止しました。
しかも、私の顔をマジマジと見て首を傾げるではありませんか。
これは、私がおママの「連れ」である事を忘れ果て、見知らぬ他人が代金を払ってくれるのかと思ったようです。
「私は芙貴子さんと一緒に来ましたし、お父さんからお金を預かっていますから。」
「え……、そうなんですか?
あなたが?そうだったのかしら?」
「そうです‼️」
私は言い切って、速やかにお会計を済ませ、おママと店を出ました。
「芙貴子さんのお家へ帰りましょう。」
「そ、そうね…。」
小雨がまだ降っていました。
傘をポンと開いた頃には、おママの御機嫌も良くなりました。
さっきのお会計の時の一件はなんだったのでしょう。
それは既におママの記憶に御座いません。
私をすっかり「連れ」と認識した体で、一緒にスーパーに寄っておやつを買い帰宅しました。
私がおママにとって既に「娘」でも「家族」でもない事は百も承知しています。
しかし、今回はずっとおママの目の端に私の姿が見えるように努めていたのに❗️
それでも、シャンプーしている間に忘れられた❗️
一緒に来た「連れ」という存在も忘れられてしまったのですね。
私って、おママにとって何なのでしょう。
私の存在は?
そんなにすぐに消滅しちゃうの?
ちょっぴりショックでしたわ。
(↓)4年前の「連れ」について。この時既におママは私やオネコを娘とは思っていませんでした。でも、今の方が症状は進行しております。
*本日アップの貼り絵
5月15日土曜日の作品です。
もう制作から3ヶ月以上も経ってしまったのか?
そう思うほど、この作品を初めて見た時の衝撃は、今も色褪せません。
「おママ…またやったのね…。」
誰でも日常的に手にする「バッグクロージャー」を2つも貼っているではありませんか。
しかも、それが結構効果的だったりして…。(^。^)v
不思議な抽象表現で、「何だろう?」と想像力を掻き立ててくれます。
こういう作品を見ると、私はおママの感覚に脱帽するよりほかありません。(^O^)
あ、「バッグクロージャー」とは市販のパンの袋を留めている奴です。
おママは以前もたまにこれを貼り絵に使っていました。でも、貼ったはいいが取れやすいのです。今回も写真撮影の時は取り扱いに要注意でしたわ。(^◇^;)
私が実家にいない日に「お題パック」を使って制作されました。
(↓)お題はこちら。おママは「お題」以外のものを自分で見つけて貼り込んでいるのが興味深いところです。
(↓)この作品の残りをお題に使っています。
(↓)元々はこのような千代紙でした。。
(↓)これは昨年7月に小津和紙で購入した千代紙です。
私はこの貼り絵が獅子舞に見えるのですが、上下を逆にしても興味深い。(↓)
立ち上がって踊る獅子舞しょうか?
皆様、お好きに感じていただけたら嬉しいです。
*「お題方式の貼り絵」と「お題パック 」について
一昨年の夏ぐらいから、おママは貼り絵に使う紙を自分で1から探して選ぶ事が難しくなってきました。それで、あらかじめ私が「お題」と称して何種類かの紙を用意することが多くなりました。その他に組み合わせする紙片をおママに選んでもらってから、切り貼りを楽しんでもらうようになりました。私はこれを「お題方式の貼り絵」と呼んでいます。 私が実家に行かない時でもおママが貼り絵に取り組みやすいように、「お題」と台紙にするハガキをチャック付きのビニール袋に入れておく。これが「お題パック」です。
(↓)バッグクロージャーを使っていました。(^◇^;)
おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。