アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

波の音

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(2021年10月11日 アルツハイマー認知症の診断から約14年8ヶ月)

 

ハサミを持って紙を切る。

この作業は簡単ではないと思います。小さい子供が初めてハサミを使うようになるのはいつからでしょうか?極めて個人差が大きい問題だと思います。

それでも2歳以降からが多いようで、ハサミで切る作業に興味を持った時に練習を始めるのが良いようです。

私がアズキを育てていた頃を思い返すと、3歳で幼稚園に入る頃には出来ていたように思います。

「きれた❗️」

と嬉しそうに笑っていた娘と、今のおママの笑顔が私には重なって見えます。

本来手先が器用なおママでも、認知症歴14年にもなれば難しくもなるでしょう。今のおママは時々「切る」という動詞が理解できません。だからこそ切り終えて、

「できた❗️」
というおママの笑顔は、3歳のアズキと同じくらいの達成感だと思います。

 

ハサミで紙を切ると、4つの刺激が脳に伝わると思います。

見ながら切る視覚、紙を持つ手とハサミを持つ手のバランス感覚、紙に触れる触覚、

そしてハサミが紙を切っていくときの音を聞くという聴覚です。

 

私はおママがハサミを持てる間は、なるべく紙を切って欲しいと思っています。なんなら、貼り絵を完成できなくても、切るだけでも良いのではないか。

だから、私はおママが切って遊ぶのに丁度良い紙をいつも探しています。(^O^)

 

波模様を切る

10月8日金曜日に私がおママの部屋から見つけたのは(↓)こちらです。

2017年11月の国立劇場(小劇場)の公演チラシです。4年前、オネコが歌舞伎公演を観に行った時にもらったのでしょう。

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www2.ntj.jac.go.jp

(ママの好きそうな配色で、切って遊ぶのに良いかも知れない。)

この日はこれを「お題」にしてみました。

 

*「お題方式の貼り絵」と「お題パック 」について

一昨年の夏ぐらいから、おママは貼り絵に使う紙を自分で1から探して選ぶ事が難しくなってきました。それで、あらかじめ私が「お題」と称して何種類かの紙を用意することが多くなりました。その他に組み合わせする紙片をおママに選んでもらってから、切り貼りを楽しんでもらうようになりました。私はこれを「お題方式の貼り絵」と呼んでいます。

 私が実家に行かない時でもおママが貼り絵に取り組みやすいように、「お題」と台紙にするハガキをチャック付きのビニール袋に入れておく。これが「お題パック」です。

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おママはこだわりながら切り進めていきます。

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<おママの貼り絵制作動画①>

2021年10月8日 14:37〜(4分15秒)

おママはとても楽しそうです。

「チョンチョンチョン♪

こうして、こうして、こうしても、

チョビッとチョビ、チョビ♪

これがどうなんでしょうかね。

これが、こわいいんですけどね…。」

まるで歌うように独り言を言いながら切り進めていきました。最後の「こわいい」は切り落としそうで「こわい」のと、「かわいい」がごちゃ混ぜになったのでしょう。

 

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波模様を切るだけで草臥れ果てたおママは、

「なんだかわからないわ」と言い出して、結局直ぐには完成できませんでした。

ジジが眼科へ行く時間となり、ひとまず中断しました。

 

(↓)下の記事はこの日の出来事でした。

harienikki.hatenablog.com

それでも、おママは帰宅後におやつを食べたら元気になり、制作を再開することができました。

完成❗️(↓)チラシの波模様に小津和紙で購入した「波紋」を合わせて流れを感じます。

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(2021年10月8日 アルツハイマー認知症の診断から約14年8ヶ月)

 

この日は私が「お題パック」を作るお手伝いもしてくれました。(↓)

Apeel-cutter(アピール・カッター)というおママが以前愛用していたペーパーナイフで三角や菱形を切っているところです。

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続きがある

実は、10月8日金曜日に、おママはチラシから他にも小さな波模様を切り抜いていました。私が次に実家へ行った10月11日にそれを「お題」にしてみました。

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(↑)おママが手にしているのは、2017年5月におママ自ら小津和紙で選んで購入した千代紙です。よく見るとこれも青海波模様と言えそうですね。

画面は「波づくし」になりそうです。

元々『青海波』とは雅楽の演目の1つで、青海波模様はその衣装に用いられた柄だそうです。日本の伝統模様でおママも過去にこの模様の千代紙を貼り絵に使ったこともあります。

kotobank.jp

youtu.be

<貼り絵制作動画②>

2021年10月11日 14:41〜(1分17秒)構成編

おママはあまり迷いもなく楽しそうに配置を考えていました。

 

そして、完成しました。

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(2021年10月11日 アルツハイマー認知症の診断から約14年8ヶ月)

 

「お題パック」になるはずが…

おママが上記の作品の糊付けをしている間に、私は「お題パック」をセットしていました。ところが、1作品を完成させてまだ余力のあったおママは、私の手元にある紙片を見て言ったのです。

「あら、それ、いいわね。」

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そして、小さな飾りを糊付けをしましょう。

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良い感じに仕上がりそうです。

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<貼り絵制作動画③>

2021年10月11日 15:39〜(4分44秒)

貼ろうとして糊をつけたら、どこに貼るか忘れてしまう…。

そんな事の繰り返しですが、認知症のおママはにはそれも結構楽しいのかも知れません。

側から見たら可笑しな親子ですが、これはこれで良い時間です。(^O^)

 

こうして出来上がったのが、一番上に掲載した貼り絵です。

 

『青海波を聴く』というチラシから、

3枚の貼り絵が出来上がりました。

どれも静かな波の音が聞こえてくるような作品です。

 

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。