アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

記憶について No.50「死んじゃう」

(2022年2月25日 アルツハイマー認知症の診断から約15年)

 

穏やかではないタイトルですが…。

内容は至って平穏です。おママの戦争体験がちょこっとあります。

久しぶりのシリーズ「記憶について」です。

なんと❗️このシリーズは50回を迎える事ができました。(^○^)

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歯磨きのハプニング

夕食後は歯磨きタイムです。

「歯磨き上手かな、あ〜

と歌いながらおママを洗面まで誘き寄せ、いざ歯磨き❗️

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昨夜は順調に「仕上げはおかぁ〜さ〜ん♫」までいって、ホッとしたのも束の間。

最後のクチュクチュぺ❗️の後で、ガラガラペー❗️をしたおママ。口に含んだ水をうっかり飲んで咽せてしまいました。危ない、危ない。飲んだ水が肺に入ったら大変よ。おママはびっくりしたようで、思わず叫んびました。

「いやぁん、死んじゃう」

最近では「立ってください」「座ってください」の理解も覚束ないのに、

極めて抽象的な「死」の概念がおママに残っているのに驚きました。

 

アズキの見解

私は帰宅して、娘のアズキとコーヒーを飲んでいた時の事です。

「すごいよね。おママが『いやぁ、死んじゃう』と言ったんだよ。使い方も合ってるよね。「死ぬ」って概念って、子供にも分かりにくいでしょ。それなのに、今現在、言葉の殆どを失いつつあるおママが「死んじゃう」と言えるのが不思議だよね。」

私はアズキに実家での事件を話しました。

すると、彼女は思いついたように、持論を展開したのです。

 

「おママの子供の時って、戦争中で死が今より身近だったんじゃない?

実際空襲があったから、人の死体だって見たことあると思うよ。だから、記憶の根底に「死」というものがハッキリ残っていたんじゃないかな。」

 

あぁ、なるほど…。

 

いつの記憶ですか?

実は今年の2月にも、おママの口から「死んじゃう」という言葉が出て、私はとても驚きました。詳細なメモは残していたのですが、ブログの記事にはまとめられないまま、今日に至っております。

 

そのメモはこちらです。(↓)

おママは気分がいいと、お喋りです。

昔のことか、最近のこと?全く判別しないことが多いし、その表現は「こそあど」ばかりで要領を得ません。

2月21日のおやつの時は、とてもご機嫌で、不明瞭ながらおママは嬉しそうに話していました。

 

「それでね、あ~もうだめ~、もう死んじゃうって言ったらね、

あのあーあーそれが言うのよ。

そんなことない、あなたは大丈夫なんだからってね。

それでね、死んじゃうって思ったけどね、それがなんとかしたみたいなのよ。」

 

不思議な話です。私はおママに確認をしました。

「誰が大丈夫っていってくれたの?」

「あー、あのなんかねそんなだったのよ。」

しかし、埒が開きませんでした。

 

おママはご機嫌ですが、人の生きる死ぬの局面を誰かが止めた話ですよね

私はしつこく聞き出そうとしましたが、

「死んじゃう」と言ったのがおママなのか?

「大丈夫」と言ったのがおママなのか?

どっちもおママではなく、第三者的に見ていた場面なのか?

全く判然としません。

それにしても、言語が失われつつあるおママが明確に「死んじゃう」をそのままの意味を理解して言っていることに驚きました。

 

おママの海馬の底から湧き上がってきた記憶の断面はなんだったのでしょう。

 

おママの思い出話

おママの88年の人生で、生き死にに関わる状況と言ったらいつでしょう?

実はおママからこの断片的な話を聞いた後で、

「あの時の思い出話かな?」

と、私もちょっと思い当たることがありました。

 

私がまだ若い頃に聞いた、おママの子供時代の話です。

 

芙貴子ちゃん(おママ)は昭和8年生まれです。小学校の頃に戦争体験があります。特に高学年の時は祖母や親戚のいる静岡に家族と縁故疎開をしました。

都会育ちのお嬢ちゃんでしたから、静岡では仲間はずれにされて辛い思いもしたそうです。でも、仲良くしていくれる同級生がいたのが救いでした。

疎開先は静岡駅も近い市内の中心部、いわば都会です。東京よりはマシかもしれませんが、空襲警報や散発的な空襲は結構あったようです。

 

ある日の下校時、芙貴子ちゃん(おママ)は仲良しの友人と一緒に家路についておりました。ところがそこへ、突然空襲警報が鳴り響くではありませんか❗️

まだ各々の家まで距離があり、走っても自宅付近の防空壕へは間に合いそうにありません。そこで芙貴子ちゃんと友人は手近に見えた木造の小さな倉庫に逃げ込んだのです。

後年、おママが私にこの話をしてくれた時、

「そんな燃えやすい木造の倉庫に逃げ込むなんて、焼夷弾を落とされたらひとたまりもないわ」

と言っていました。でも、まだ子供だったので、これが精一杯の選択だったそうです。

幸い焼夷弾は近くには落ちなかったのですが、爆撃の音に怯えた友人は

「もう、だめ、死んじゃう」

と泣き出したそうです。

「大丈夫だから」

芙貴子ちゃんだって焼夷弾が怖くて震えていたけど、泣きじゃくる友人を必死で宥めました。そうしたら、友人は両手を胸の前で合わせて、震えながら合掌し、

「ナンミョウホーレンゲキョウ!

ナンミョウホーレンゲキョウ!

ナンミョウホーレンゲキョウ!」

と大きな声でお題目を繰り返し始めたではありませんか❗️

芙貴子ちゃんはびっくりしたそうです。(°_°)

その後、空襲警報が解除され、無事に芙貴子ちゃんも友人も家に帰ることができました。やれやれ…。(^。^)

実は疎開先で一緒に暮らしていた芙貴子ちゃんの祖母は、熱心な日蓮宗の信者でした。それで彼女は直ぐその話をしました。

 

「そうしたらね、その時、おばあちゃんったら『その子はとても信心深い偉い子だ、将来きっといい事がある』と褒めちぎったの。なんだかねぇ。可笑しいでしょう。」

少女時代のおママは、祖母の言葉に釈然としなかったようです。

泣きじゃくりながらパニックになってお題目を唱え続けた『とても信心深い偉い子』の友人を、おママは必死で励まして支えたんですけど…。

それだったら、おママはもっと偉いよね…。(^◇^;)

 

私はおママが2月21日に語った思い出話はこの時のことだったと思います。

 

おママにとって「死」とは

おママにとって、そんな笑い話のような思い出もある静岡疎開でしたが、最後は大変な終わり方をしました。

その後、1945年6月19日深夜から20日未明の静岡大空襲があったのです。

おママは家族、そして静岡の親戚(祖母も含む)と一緒に、焼け出されて居場所を失いました。その時はまさに命からがらという状態で、全員生き残れただけでも幸いでした。それで、おママ達は結局、終戦を待たずに着の身着のまま東京に戻りました。

 

おママが子供時代に強烈な死という場面に直面したことは確かです。

それがアズキの言うように、言語も失うほど認知症が進んでも、死という概念を感覚的に理解して

「いやぁん、死んじゃう」

と言える理由になるかどうかは定かではないと思います。

でも、関係あるかもしれませんね。



本日アップの貼り絵

この日は「お題」を考えていなかったので、おママに選んでもらいました。

 

さっそく、切り始めました。(^O^)

 

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<おママの貼り絵制作動画①>

2022年2月25日 15:25〜 (2分44秒)

おママは手毬の中の細かい模様と金の線がキラキラするのが気になっています。

模様をパチパチ指で弾いたり、フーフー息を吹きかけて擦ってみたりしています。

マ「ほら,ほんとこれ、ちゃんと見えるのよ。これ、これだったらクロ、でも、ふっとちょっとみたら、こんな,ねーー。」

おママさん❗️印刷されているから、擦っても息を吹きかけても動かないんですよ。

後半は楽しくおシャベルをしながら構成を練っています。

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<おママの貼り絵制作動画②>

2022年2月25日 15:38〜(2分23秒)

動画は糊付けの途中から始まります。残りはあと2つです。

しかし、それは他のピースの糊付け中に若干位置が動いてしまっています。おママはそれを直さずに貼ろうとするのでチャーコは不安でいっぱいです。

チ「ちょ,ちょ,どういう風に貼るか考えてから糊を付けてよ。」

マ「これはどうやるの? こうやってんですもの、だいじょうぶよ。」

しかし、残り2ピースを貼り終わったら、おママは手毬ピースが正確に中央に位置していないことに気が付きました。

そして、剥がすことを決意しました。動画はアピールカッターを落としてバタバタしているうちに終了します。

 

(↓)剥がせました❗️台紙にしているハガキも千代紙も和紙です。和紙は強いですね。

(↓)そして,完成しました。

 

2枚目は残った千代紙を駆使して制作をしていました。

(↓)この紗綾模様は綺麗ですね。金色が施してあるのですが、あまりキラキラしていないので、おママも気にならないようです。(^O^)

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<おママの貼り絵制作動画③>

2022年2月25日 15:53〜(7分06秒)

長い動画ですが、おママはじっくり構成を楽しんでいます。

 

(↓)完成間近です。

 

(↓)使用した紙です。

おママの貼り絵を見てくださり、ありがとうございます。