(2019年3月1日 アルツハイマー型認知症の診断から約12年1ヶ月)
*遂に救急車が交代した
確かに、走っていなくても救急車はずっと燃料を使い続けています。
患者に負担のない空調、ジジの命を繋いでいる酸素吸入だってそうです。ガソリン,電気系のバッテリーなど、全て駆動するためにはエネルギーがいるのです。
しかもこの救急車はジジのためだけに出動したのではなく、デイサービスに到着する前に既に他の患者の搬送を行なっていました。
<21:30>
遂に救急車と救急隊の交代が決定しました。
救急車が交代になるほど長時間に及んでも受け入れ先が見つからない。
この状況に私はもう絶望感で気が狂いそうでした。
私は今までずっと文句は一言も言いませんでした。
救急隊の方々には本当に感謝していますしかし、このまま思うことを言わないでいるのは、もう耐えられませんでした。
「PCR検査だけと承知の上で来ましたが、こちらの病院は駐車場に行き場のなくなった救急車が何時間も足止めされていても、平気なんですね。此処は病院なのに、それって病院としていかがなものか。私はこのまま此処で父にもしもの事があったら、この病院を恨みます。」
これまで必死に調整を試みてくれた隊員さんに、こんな事を言わざるを得ない状況が憎かったです。
「長い時間がかかってしまい,本当に申し訳ありません。御家族のお気持ちは痛いほど分かります。それは次の隊にきちんとお伝えします。しかし、PCR検査を引き受けてくれたのはこちらだけでした。今の状況は逼迫しています。救急隊としてできることは入院先の調整だけです。とにかく電話をかけ続けます。夜間調整入院窓口、保健所、コーディネーターと救急隊が連携をとりながら、これからも入院先を探します。たとえ次の隊になってもそれは変わらず、入院先が決まるまで絶対に続けられます。」
それは、本当にありがたい事です。
夜間だから余計に調整が難しいと思います。もしかしたら、朝になれば誰かがどこかの病院を退院するでしょう。それまで待てるでしょうか?
ストレッチャーの上のジジの体力次第だと思います。
「救急隊の方がどれだけ頑張っていらっしゃるかはよく分かります。感謝しています。ただ、長時間ストレッチャーに縛り付けれれている父が可哀想で、なんとか早くベッドに寝かせてあげたいです。このまま救急車の中でというのはあまりに気の毒だし無念です。いっそ家に帰ってあげた方が父には楽かもしれません。」
すると隊員は大きく息を飲み込んでから、噛み締めるように言いました。
「救急隊として、この酸素吸入が無ければ生命維持が難しい現状で、ご自宅に搬送するのは……条件があります。御自宅でかかりつけ医が診て下さり、酸素吸入に必要な一式が確保されている場合だけです。」
この件を直ぐにオネコに相談しました。
オネコは夜間だけど、かかりつけ医に電話して掛け合ってみてくれました。しかし結果は今現在酸素吸入に装置がないとの事。
どこに聞けば酸素吸入が手に入るのだろう。
オネコは自治体の自宅療養者相談センターに問い合わせたら、救急隊が対応している場合は対応できないとの事。
この後、かかりつけ医から電話があり、「ファストドクター」に問い合わせてみるようアドバイスされました。しかし、オネコが問い合わせてみると、実家周辺では対応できるドクターがいませんでした。
万事休す。自宅に連れ帰るのは不可能なのだと悟りました。
<22:00>
救急車と救急隊員が交代となりました。
今度の救急車はコロナ陽性者仕様なのでストレッチャーは厚いビニールのカーテンで覆われていました。もう、今までのように声をかけるのも手を握るのも困難になりました。
救急車に乗ってから実に6時間。はっきり言って…私は頭の中が真っ白になりました。
ジジは酸素6リットルで血中酸素濃度が98、体温39度台。容体は小康状態ですが、体を動かせない苦痛と疲労は限界に達していました。
*酸素があるんだから
交代した救急車に乗り込んだ後、ジジはストレッチャーの上でゴソゴソ足を動かしていました。どうやら膝を曲げたかったようですがベルトに阻まれて思うに任せませんでした。
そりゃぁ、辛いよね。
早くベットに寝かしてあげたいです。
それで新たに担当していただくことになった救急隊員に聞いてみました。
「病院じゃなくても療養施設のようなところはだめなのでしょうか?」
「酸素ステーションですか?」
私は大きく頷きました。
「確か医師や看護師もいますよね。」
「でも、「軽症」と「中等症 I」が対象で、田中さんのように酸素吸入を外せない「中等症 Ⅱ」の患者さんは、そこから救急搬送されています。」
それでも、私を納得させるために一応問い合わせてはくれました。結果は同じでした。
www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp
私は調整を頑張ってくれている隊員に余計な時間を使わせてしまった事を後悔しました。
ふと見れば、ジジは身動きが取れない気の毒な状況でしたが,6リットルの酸素吸入を受けて生命を維持しているのです。
もう考えるのは止そうと思いました。少なくとも、救急車の中にさえいれば酸素は確保されているのです。
私の疲労も激しく、脳が固く強直していくようでした。
今起きていることが、全て虚に感じました。
そして、ビニールのカーテン越しに横たわるジジの呼吸を見つめていました。
(つづく…次回が最終回です。)
*本日アップの貼り絵
今回も過去の作品です。
2019年3月1日に制作されました。
おしゃれな作品で私は大好きです。(^O^)
青と緑の円形は西武百貨店の包装紙の模様でした。
ピンクのピースは介護関係の請求書が入っていた封筒です。
(↓)関連作品です。
おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。