アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

Fのブローチ

(制作年代不明 平成の初め頃か?)

harienikki.hatenablog.com

見つけた

今日はいつもとトップ画像の雰囲気が違います。

おママがまだ認知症になる前、革工芸やヨーロッパの伝統的な装丁技法(ルリユール)を勉強していた頃の、小さな作品をご紹介します。

 

今年の1月におママは特別養護老人ホームに入所しました。

それで2月の下旬に、私はおママの作業机やその周辺を片付けました。積まれた紙の山に着手すれば、舞い上がる埃に閉口していたのです。

そんな時、白い箱が見つかったのです。

(↓)開けてみると、何かがゴチャゴチャと入っているではありませんか❗️(^O^)

1個ずつ恐る恐る取り出して、並べたのが一番上の写真。

これは何でしょう。革で作られています。

(↓)裏を返すとブローチでした。(๑˃̵ᴗ˂̵)

実は、私はこれらを見て、とても懐かしくなりました。

おママがこのブローチを作ったのは、私がまだ実家にいる20代半ばのことでした。

当時、おママの興味は40代から続けた革工芸のクラフトカービングからミシンで仕立てるバックやルリユールに移っていました。

それでも面白そうな革工芸のワークショップには参加していて、これもそんな機会に作った物です。

 

Fです。

ワークショップの課題はイニシャルのブローチでした。

まず3本(3色)の合成皮革のテープを二つ折りにして束ねます。それをプリントに描かれたイニシャルのデザイン通りに曲げて組み、最後に端の処理をしてピンを仕込んだ裏側を付けて出来上がりです。

文章にしたら、ものの3行ですが、これは器用なおママでも意外と難しかったようです。

「自分のイニシャルの『F』なのよ。」

おママは嬉しそうに笑っていました。

(↓)左のボルドーに近い紫と水色,黄色の3色が合成皮革。ワークショップで作ったブローチです。そして右の茶色系3色は本革で、自宅で復習がてら作りました。

娘は意地悪ですね。

「へぇ〜、『F』というより『Y』っぽいね。」

私がそんな事を言ったら、おママはちょっと口を尖らせていました。

「そんなことないわよ❗️」

 

でも、とても丁寧に良くできていると思います。

おママに言わせれば、

「合皮の方が組むのも仕立てるのも難しかったのよ」

との事でした。

合皮は弾力があって、しっかり折り目をつけて糊付けをしても膨らんでくるようです。それに比べて本革は少し湿らせてから折り目をつけるとしっかり折り癖が付いてくれます。端の処理や裏面の仕立ても本革の方がピチッと出来ています。(↓)

「でも、最終的には、合皮の方がぷっくりと仕上がって可愛いのよね。」

おママはため息混じりに微笑んでいました。

 

私のは?

もう30年ほど前の事ですが、私はこのブローチの事をよく覚えていました。

なぜなら、「私のイニシャルのブローチも作って❗️」と頼んだからです。

しかし、一度は快諾したにも関わらず、おママは結局それを作ってはくれませんでした。

その代わり、(↓)下のような葉をモチーフにしたブローチを作っていました。

応用作品です。茶色系の『F』と同じく本革で制作されました。

おママは以前自分で染めて使った革の残りを再利用しました。そして、仕上げに皮革用のラッカーを塗っていました。

 

結局、私のイニシャルブローチは作ってはもらえませんでした。

それはきっと、材料がなくなったからでしょう。

幾つか作って気が済んで、同じ革工芸でも他の作品に気持ちが映ったからかしら。

そして,最大の理由は、私自身が忘れてしまったからですね。(^◇^;)

 

でも、合皮で作ったブローチがもう1個あります。裏が黄色のブローチです。

もしかして、それだったのかしら?

因みに私のイニシャルは『S』です。

皆様,どう思われますか?『S』に見えるでしょうか?(^O^)

 

おママの作品を見て下さり,ありがとうございます。