アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

ばぁーー⁉️

   いつものように、ジジに頼まれた買い物をして実家に行きました。
今日は食パン1斤です。税込72円なり。 安い❗️
実家の近くに安い業販スーパーがあり、そこはジジのお気に入りです。

 

   それで例によって、おママに家計簿を付けてもらい、立替分をもらいましょう。
お財布を逆さにして小銭をじゃらんと出し、おママは言いました。
「72円はないわ。」
確かに茶色の10円玉は1個も有りませんね。
「102円頂ければ、30円お釣りを差し上げますよ。」
私が自分の財布を開いて30円出しますと、おママは小銭を数えます。

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                 (2017年2月10日  診断から約10年)

 

「小さいのが、ひぃ、ふぅ。大きいのが、ひぃ、ふぅ。はい、102円。」
あらっ?いつの間にか202円になってますね。(笑)

「それでは100円多いわ。」

混乱したおママと一緒に数え直しました。

1円玉が1つ2つ。100円玉が1つで、102円。」

「あーっ、そうか、そうか。」
おママは理解してくれたました。
さっきは1円玉を数えた時の『ひぃ、ふぅ』のリズムが100円玉にも影響したのね。

 

すると、おママが自嘲ぎみに言うのです。

「私…、ぁーー!になったみたい。」

ばぁー?

83歳ですから確かに「婆ぁーー!」ですわ。言うまでもない。

 

「えっ?ばぁーー?」
聞き返すと、おママは笑顔で頷きました。

ばぁーー!なの。」

私は腑に落ちません。何か言い間違いかも知れないわ。


ばぁーー!ではなく、パァーー?」

私がそう聞き返したら、おママは真顔になってしまいました。


パァーー?」
そう発音しながら、何かこの音に悪い引っ掛かりを感じているようです。


何度か「ばぁーー!」と「パァーー!」を繰り返してから、


ばぁーー!パァーー!どっちにしようかなぁ。」
と言うおママ。


   私は少々気が咎めました。要らぬ事を言ってしまったか…。
「どっちでも良いわよ。」
もう、忘れてください。


   婆ぁーー!だって、パァーー!だって、良かぁないです。

でも、その音に込められた微妙なニュアンスが、なんとなく分かるのですね。

嬉しい。
おママ、侮れません。

 

どっちですかって…⁉︎

まぁ、本人の前では言えませんが、
両方ですね。(笑)

横綱

   先場所は稀勢の里関が横綱になり、ジジも大変喜んでおります。

春場所も応援に力が入りそうです。

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                  (2017年2月26日  診断から約10年)

 

  でも、話題は大相撲ではなく、おママです。

 

  何と申しましょうか…。
おママはお痩せさんではありません。(笑)
お腹周りは、なかなかどうして立派なものです。


  逆にジジは栄養が付きにくい体質で、カロリー高い食品を好む割に痩せています。

朝起きて、ズボンを履いて前を止めようとしているおママ。きついのでしょう。

 

「くるしい〜。」

と喚いたそうです。

   その時、ジジはちょっと嫌味が言いたくなりました。

 

  それで…。

「あなたはウチの横綱だね!」

すると、おママは目を三角にして怒り、

「なによ、ひどいわね‼️もう、知らないから!」
と言ったそうな。

 

  ジジは
「もう知らないと言われてもね〜。今さら…。」
と笑っていました。

その話を聞き、私は感動を覚えました。このところ、単語が失われているおママが

横綱」→「お相撲さん」→「その体型」

を連想して理解できたのでしょうか?

 

それなら、これは嬉しい!

でも、たんにジジの語感から、貶されてる事を本能的に感じ取っただけかも。(笑)

 

  本当はどっちか、おママに聞きたいけど、それは不可能ですね。

道路交通法改正

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                  (2017年2月27日  診断から約10年)

 

   先月、新聞でみて気になっていた事。(朝日新聞2月18日朝刊)

 

   3月12日に道路交通法が改正されます。

   今夜7時のNHKのニュースでも取り上げていましたね。
私は思わず画面に釘付けになりました。

 

   この改正、75歳以上のドライバーが免許更新時に受ける講習予備検査(認知機能検査)で「認知症のおそれあり」と判定されると、専門医の診断が義務付けられます。

もし、認知症と診断されたら…。

運転免許証を手放すしかない…。

 

ジジは若い頃から運転しないので関係ありません。
しかし私は以前、車がないと不便な所に住んでいたので、身につまされます。
買い物、子供の送迎、まさに車は私の足でした。

 

   それぞれの地域があり、さまざまな暮らしの事情がある…。(涙)

 

  でも、やはり…。
認知症の方が車を運転するのは危ないですね…。

 

  ニュースでは認知症の専門医や専門医療機関がまだ少ない現状も伝えていました。
改正後、受診者は確実急増するでしょう。
試算で改正前の13倍との事です。

   

    10年前のおママの時だって、予約を取るのは大変でした。

検査は別の日にしか取れず、待合室はいつも混雑。

医療機関の不安や懸念も頷けます。

 

  それでも、この改正がきっかけとなり、

認知症の早期診断に繋がってくれればと思います。

 

kaigo123.net

シルバーカー その2

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              (2017年2月24日  診断から約10年)

10日ほど前の昼頃、ジジ、おママと3人で近くの家電量販店に行きました。

そのお店は大きな幹線道路沿いにあります。
近くと言っても、片道徒歩20分。おママは足腰丈夫なので御機嫌ですが、シルバーカーを押すジジはなかなか辛そうでした。

 

  途中、狭くて歩道と車道の区切りがない道を歩きます。

それが、幹線道路への抜け道なので、車の交通量がとても多い。

それでも、その時間帯はまだマシでしたよ。
   この近辺は住宅地で、高齢世帯だけでなく子育て世帯も多いのです。

土地勘のあるドライバーさんはかなり慎重に減速して下さいます。
それでも、大きなトラックがドーッと走り抜けたりすると、その空気圧で私達のダウンコートがブルブル震えていましたわ。

  ジジはシルバーカーを押して歩くので、車の運転をしている方に気を遣わせて申し訳なかったです。

 

   商店街や街角ではベビーカーに匹敵するくらい増えたシルバーカー。

その根本的な違いは速度でしょうか?

シルバーカーは圧倒的にゆっくりです。少しよろよろします。

押している人の年齢が高いから仕方ないですね。

 

  高齢化社会のこれから、自動車と手押し車の高齢者が、お互いハラハラしないで通れる道が増えて欲しいですね。

 

  そして…。

ベビーカーと同じように、シルバーカーも温かく見守って下さると嬉しいです。

シルバーカー

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            (2017年 2月23日  診断から約10年)

 

    今年に入って、ジジは遂に買いました! 

シルバーカーです。いわゆる高齢者用手押し車で、腰掛けられるタイプ!

 

   ジジは杖も付かずに頑張ってきましたが、さすがに昨年から足腰が痛んで近所への買い物も辛かった。
勿論、重いものはオネコや私が手伝いますが、かと言って外に出ないわけにはいきません。
日に一度はおママを買い物兼散歩につれだす目的もあるのです。

シルバーカーの使い心地はまずまず。ジジには頼れる存在となりました。

 

   さぁ、今日も昼過ぎに、お買い物に出発!


   まず、コンパクトにたたんであるシルバーカーを玄関から外に出しまして、使えるように開きます。軽くて操作は簡単。

そこで必ず、おママの決まり文句が入ります。

「やだわ。そんなの持ってかないで良いわよ。なんで?要らないわよ。」
さも年寄りくさくて、嫌そうな顔をします。

「使うのは私。あなたじゃないの。毎日の事なんだから、いいかげんに分かってくれなきゃ…。」

 

    残念ですが、ジジ…。諦めて下さい。

同じ事を言われてウンザリでしょうが、おママには今しかないから…。


  私は門のところで2人を見送りますが、帰宅するとジジはたいていヘトヘトです。

 

「帰りは『私が押してあげる』ってうるさいんだ。いつも、いつも。
重くて上り坂で、押すのが気の毒だから、『私が代わりに押すから貸しなさい!』となるんだ。まったく、こっちは必要があって押してるのに、追い剥ぎされるみたいに取られるんだよ。」

 

 上り坂の途中で、
「貸しなさい」
「いいんだっては!」
の押し問答をしている2人の様子を想像すると、ちょっと可笑しいわ。

 

「悪気もなく、むしろ思いやりだから、始末に悪い…。」

今日もジジのぼやきが聞こえます。

 

あたり前田の❗️

   最近、おママの記憶についてあれこれ考えていますが、

私もかなり怪しいものです。(笑)

今日はおママの話ではないのですが…。

 

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                 (2017年 2月18日 診断から約10年)   

 

    朝、娘との会話の中で、私が「当たり前」と言うところを、

「当たり前だの」
と発すれば、娘はすかさず、
「クラッカー‼️」
と受けました。
これを言うのも久しぶり。古いギャグですね〜。(笑)

 

   えっ⁉️
歳は幾つなんだとお聞きになりました?
私、50をちょいと出たばかり。
アズキは大学生ですわ。

   このギャグは昭和37年〜43年までTBS系列で放送されたコメディ番組
てなもんや三度笠』から生まれたそうです。

スポンサーの前田製菓の商品名とかけて、藤田まこと
「俺がこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー!」
と言ったのが大流行したとか…。
私も後で聞いた話ですから、タイムリーには知りません。

 

   死語と言われても、なんとなく耳にに残っている不思議なギャグです。
それでも、私は前田製菓のクラッカーを食べた事がない。

「買った事も食べた事もないわー。」

と何気に言ったら、アズキが目を剥いて反論してきました。

「何言ってるのよ。私は何度も食べてるわよ。

プレーンのクラッカーで青っぽい箱に入っているやつ。
『あたり前田の』って書いてあったから、この言葉を知ってんのよ。」

「お友達の家で食べんでしょ?」
「ウチですー。お母さんが買ってきたんだよ!」

 

 私…、記憶にない。覚えがない。

今はなきヤマザキナビスコのPREMIUMクラッカーなら頻繁に買いましたが…。
懐疑的な母にアズキは憤り、
「何度もウチで食べたよ。冗談じゃないわよ。私が嘘をついてると言うの!」
おー、怖っ。
アズキはキリキリしてます。

   私がスマホ前田製菓のHPを開いてみれば、彼女はすぐに該当商品を見つけてしまいました。
「これよ。この箱よ。」
確かに『当たり前だの』と小さく書いてある。
写真を見ても、全く身に覚えがなく、私は困惑してしまいました。


「記憶にない…。子育てが大変だった頃って、細かい事はよく覚えてないし。」
言い訳に終始する私にアズキはトドメを刺しました。
「何回か食べたのは、私が小学生くらいの時だよ。お母さん、頭ヤバイよ〜。」

 

  それでも、思い出せない⁉︎
どうしてなんだろう。

私の頭にぽっかりと記憶の空洞がある。
なぜ?
その記憶の空洞に引きずり込まれるような不安感に襲われてしまいます。

 

  おママ…。
おママはよく言いますね。
「私、どうしちゃったのかしら…?」

もしかしたら、おママもこんな風に感じているのかしら?

記憶について No.4

 

harienikki.hatenablog.com

 

おママの場合、悲しいかな記憶のほとんどは残りません。

しかし、最近意外な事があったのです。

オネコも私も、些細なことは全て失われると思い込んでいたのですが、

どうなのでしょう…。

 

   2月13日月曜日の午後、私とオネコは過去のファイルからブログ掲載用に貼り絵の写真を撮影しておりました。

膨大な作品の中からセレクトする基準。

それは美的に優れているものというより、完全に私の好みです。

私とオネコの好みはかなり違うので、時折オネコに選んでもらうと偏りが出なくて助かります。

   この日、オネコが選んだのは、上の過去記事『お出掛け(2007年)』に貼り付けた貼り絵でした。

恐らく広告写真から切り抜いたと思われるマフラーやストールが、リズミカルに踊る連作の貼り絵。制作は2007年6月です。

 

「これ、面白いでしょう。あの頃もそう思ってたわ。印象的だったの。」

 

   オネコは口を極めて褒め、私に写真を撮るように勧め、

おママは私達の様子を楽しそうに見ていました。

 

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         (2017年2月14日  診断から約10年    上下はこの向きのようです)

 

   そして、翌日2月14日の貼り絵がこれです。

最近、写真を貼り絵に使うのは珍しいのでビックリです。

オネコが褒めて選んだマフラーの貼り絵を彷彿とさせる作風(⁉️)ですね。

 

  この春物(夏物?)のマフラーの写真は何処にあったのでしょうか?

オネコも私もいない時に作られたので、写真の出所は全くわかりません。

紙類の在庫の中で偶然見つけたのでしょうか。

 

   しかし、この貼り絵を作らせた原動力は偶然なんかではない。

私はそう思いたい…。

前日、目にした古いマフラーの貼り絵と、それを称賛するオネコの姿。

それが残像のように、おママの脳に浮かんだのだと思いたい…。

 

兎にも角にも、

10年の時を隔てて、連作の3つ目が生まれました。