お正月でちょっとお休みしておりましたが、
おママが「物忘れ外来」の診察室の扉をたたくまでのお話を再開しますね。
(2007年 1月 診断の頃)
しかし、ジジの認識を変える事件が起きてしまいました。
この年、2006年11月にジジとおママは茨城県の袋田の滝に行きました。
バスの団体日帰り旅行です。
景色も良く、楽しい旅でした。
ジジはそれなりに注意を払い、おママがトイレに行く時は必ず出口で待っていました。
帰りの途中休憩の時、おママは喉が渇いたから飲み物を買いたいと言い出しました。バスの車窓から近くに自販機が見えます。
「あそこで買ってきたら。」
ジジはおママを1人で行かせたのです。ジジもかなり疲れていたのでしょう。
すぐ戻ると思っていたら、なかなか戻らない…。
さすがに不安になって、降りてみると、どのバスか迷って途方にくれているおママが目に入りました。
しかし、ジジはホッとする間も無く大変な事に気が付きました。
おママが肩に掛けていたポシェットが無いのです。中には財布と携帯電話が入っていました。
「ポシェットはどこにやったの?」
おママはそれをどこに置いたかも分からず、不安そうな顔をしていたそうです。
「トイレに行ったわ」
しかし、トイレにはありません。パーキングエリアの土産物屋で聞いても落し物の情報はありませんでした。
問題なのは、おママが自分の下げていたポシェットの色や形態を思い出せなかった事、そして、肩に掛けていた事実すら記憶にない事でした。
結局、ポシェットは見つからず、諦めてバスは出発しました。
バスの中で、ジジは自分の携帯からおママの携帯に掛けてみました。呼び出し音だけが空しく聞こえました。
ポシェットの中身は携帯電話と5万円が入った財布です。保険証などの身分証が無かったのが、せめてもの救いでした。
おママの携帯は、いったい何処で鳴っていたのでしょうか…。