話して説得しても、おママはじきに忘れてしまいます。
それを繰り返しても堂々巡りです。おママはその都度機嫌を損ね、私達は心身ともに疲労して行くだけです。
「何度も読み返せるように手紙を書こう!」
この年2006年の暮、オネコは東京医大の「物忘れ外来」に予約を入れて、手紙を書き始めました。
『お母さん、1月10日に東京医大の◯◯先生の診察を受けにいくのでしょう。その時ついでに、東京医大の「もの忘れ外来」にも寄ってみましょう。
お母さんは今、何も問題はありません。話していて楽しいし、素敵なカードを作っていてすごいなあとても才能があるなあと思います。ただ、ときどき同じことを何度も言ったり聞いたりすることがあります。それと去年の11月のバス旅行でお財布と携帯電話をなくした時に、持っていたバッグが何だったか思い出せなかったことも気になります。その点が心配なので早いうちにしっかり調べてもらいましょう。何でもなければ安心だし、たとえ記憶に少し問題があったとしても、よく効くお薬があるらしいから、やはりお医者様に見てもらっておいた方がよいと思います。
東京医大なら、よく知っている病院だし行きやすいでしょう。1月10日には私も行くので、◯◯先生の診察のあとに「もの忘れ外来」にも寄りましょうね。オネコ』
おママは何度もこの手紙を読みました。
この頃、全てオネコに任せて押し付けてしまい、今思うと申し訳なかったと思います。
(2007年 1月頃)