アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

記憶についてNo.16 家族を忘れて⑨(2016年11月)

 

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              (2016年11月24日診断から約9年9ヶ月)

 

  前回からの続きです。
昨年2016年の秋は、おママがアルツハイマー認知症の診断を受けてから約9年9ヶ月経ちます。
今までよく順調にきたものです。
この時期になると、ジジも私もおママが家族を忘れているのは織り込み済みでした。それでも、何度目になっても、目の当たりにするのは辛いものです。

 

 ジジの溜息

   私が実家に行くと、ジジは溜息をつきながら言いました。
「昨夜、夜中にまた…。あと眠れなくなったよ。」

夜中にジジがおトイレに起きた時、おママがぼんやりと布団から身体を起こしていたので驚いたそうです。
「どうしたの?」
そう訊ねると、おママは言いました。
「ここは何処ですか?私の家ですか?」
小さな電球だけが灯る暗い寝室で聞くこの言葉。ジジはギョッとしましたが、気持ちを落ち着かせて言いました。
あなたの家ですよ。」
「私はずっとここに居て良いんですか?」
「あなたのお家なんだから安心して、ずっとここに居て良いんですよ。」
するとおママはホッとしたように言いました。
「あ〜、良かったわ。」
ジジは一応おママをトイレに行かせてから、再び就寝させたそうです。

  その頃はこんな事もありました。夕食後ののんびりした時に、
「あなたは誰ですか?」
と聞かれたのです。
「あなたの夫で、田中太郎です。」
「おっと……。」
おママはふぅ〜んと首をかしげたそうです。
それでいて、しばらくすると、「お父さん」と呼ぶのです。
歳をとった夫を自分の父親と思っているのでしょうか?

 

チャーコの溜息

   私も…。この時期におママに言われました
午後、私が階段を上がっていると、おママが上から私を見ているのです。
そして、
「あらっ?」
と首を傾げている。
私が上がり切ったところで、おママは余所行きの笑顔で言いました。
「あらっ? どなたですか?」
おいおい…。解ってはいたが、きついわ。
「あなたの娘ですよ。」
するとお母さんは「きゃはは!」と、誤魔化すように笑いました。


(これが冗談なら良いのにね。)
今思えば、一緒に「きゃはは」と笑ってあげれば良かったと思います。

おママは悪くありませんよ。仕方のない事です。
ジジやオネコはどうだか分かりません。
でも1年以上、私の心は被害者意識でいっぱいだったと思います。
淋しさでいっぱいだったのでしょう。


(ついに完全に母親に忘れられちまった…。

子は親を忘れないのに、親は認知症になるとコロッと忘れるのか。)


  いい歳をして母親に捨てられたように感じました。

その私の甘えた気分を払拭せざるを得ない事が2016年の12月にありました。

 

  読んで下さり有難うございます。もう少し続きます。