(2017年3月15日 診断から約10年1ヶ月)
本日はお日柄も良く…。なんて落語のような前振りですが、お天気が良いとおママも気持ちが浮き立つようです。
と言っても、これは昨日の事です。
私はいつも黒いビジネス用のリュックサックを背負って実家に行きます。
男女兼用、ノートパソコンが入る、色気も何とかも無いやうな、可愛くないヤツ。
いつものおママはこれを見ると、
「大きいわね〜。」
「そんなの重そうで大変じゃない?」
と、眉をひそめていたのですよ。
ところが昨日のおママはやけに関心を示したのです。
「背負ってみたいわ。背負えるかしら?」
自分で肩に掛けようとするから私は手を貸して、捻れた肩紐を戻してあげました。
「しょえたわ!どう?」
どうと言われても、お婆さんが黒のビジネスリュックを背負っているのですから、
不釣合いに見えますね〜。
それに、
『真っ黒は嫌だ!』
と、言っていたはずなのに…。
「私もまだこういうの背負えるんだわ。わりと良い感じ。
ずっとこうしていても良いわ。」
おママの言葉に心が浮き立つような楽しさを感じ、私はふと考えてしまいました。
そういえば、昔のおママは滅多にリュックを使いませんでした。
私が幼い頃、旅行の時に見た記憶があるか、ないか⁈です。
まぁ、私が子供の頃(昭和40〜50年代)、一般的に大人はリュックを普段使いしていませんでしたが…。
若い頃のおママのアルバムの中に、お友達や銀行時代のお仲間と旅行やハイキングに行った時の写真が有ります。その中にリュック姿を見た気がします。
もしかして…。
春の陽気に誘われて…。
独身時代の気分が蘇ったかしら?
(おママに小振りの可愛いリュックはどうかしら?両手が空く方が安全だし。)
そう思いましたが…。
アルツハイマー型認知症のおママにとって、
この日の気持ちの高揚は留めておけない…。
しかも、新しい物にはなかなか馴染めません。
う〜〜ん。悩ましい春です。