アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

15年目の約束

(2008年11月 アルツハイマー認知症の診断から約1年9ヶ月)

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おしゃれ

今日ご紹介した(↑)の貼り絵はとても均整のとれたシンメトリーの作品です。

余白もしっかり活かして、とても素敵だと思います。

落ち着いたグリーンのピースは全て布地です。中央の花の形はクラフトパンチで型抜きをしたものでしょう。それが小津和紙で購入した友禅紙とよく調和して、とてもオシャレな感じに仕上がっています。

まだ認知症と診断されて1年9ヶ月の頃、今から15年前。おママ75歳の時の作品です。

前記事「おママの手遊び」のために、古い貼り絵のファイルを開いて写真撮影をしていた時に見つけました。連作の中の一枚です。

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(↓)小津和紙で購入した友禅紙です。おママは短冊状の模様を切り抜いて、その組み合わせを楽しみました。

 

果たされなかった約束

2023年4月9日。

私が15年前のファイルを広げて写真撮影をしていると、オネコが実家にやってきました。そして、そのページにある貼り絵を見て開口一番、

「キレイねーー❗️」

と叫んでいました。ここ数年のダイナミックさとは異なる、端正な作品群です。

そして、何か思い当たったように、

「あ❗️これは❗️私がおママに

『素敵だから、もう一枚同じの作って欲しい』

と頼んだやつだわ」

と言うではありませんか。なぜなら、その貼り絵には

もう一枚

と書かれた小さなメモが添えられていたからです。

「やっぱり、オネコさんへの『もう一枚』なのね。」

私も合点がいきました。

(↓)写真の赤い矢印のところにそのメモがあります。実は写真を撮影するときにチャーコがファイルから出してしまいました。ご存じのことと思いますが、私は大雑把な粗忽者。(↓)の写真では私が無造作に入れてしまいましたが、元は几帳面なおママが作品の左下に行儀よく添えていました。

2008年といえば、オネコは横浜市から実家の近くへ引越して間も無くの頃です。

認知症になったおママを気遣って一緒に小津和紙に行ったり、歌舞伎を観に出かけるようになっていました。貼り絵をよく見てくれて、裏面に制作年月日を記入するように仕向けてくれたのもオネコでした。

「おママの貼り絵を褒めて、気に入った作品はリクエストしていたの。そうしたらおママも喜んでいたしね。実際に何枚か作ってもらったのよ。」

それらは今もオネコ宅に飾られています。

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オネコは感慨深げにファイルを見ていました。

「私はこれも、頼んでいたのね…。おママは自分で忘れないように、こんな小さなメモを挟んでいたんだわ。それでも、おママは忘れちゃったんだけど…。」

「そうね。」

当時だって、おママはメモを入れたことすら、1日経ったら忘れてしまったでしょう。

「まぁ、私だって忘れていたんだけどさ。」

ええ、お互い様ですわよ。15年前のことですから。

相手は当時から認知症患者。仕方ありませんわ。

ため息をつくオネコさんは、ちょっぴりセンチメンタルでした。

 

オネコさんがおママにリクエストしたのは、当記事の一番上に掲載した貼り絵とこちらでした。(↓)すっきりとした良い作品だと思います。

(2008年11月2日 アルツハイマー認知症の診断から約1年9ヶ月)

 

15年目の…。

「ちょっとこれ❗️」

私は写真撮影を続けていましたが、またしても、オネコが声を上げたので、手を止めました。彼女はファイルの次のページを指差しているではありませんか。

「ね、これ❗️『もう一枚』のと同じじゃない?と言うことは…。」(↓)

(2008年11月11日 アルツハイマー認知症の診断から約1年9ヶ月)

 

「ああ、色違いだわね。

私はそっけなく言ったのですが、オネコさんは顔を綻ばせていました。

「これは、きっと、私のために、もう一枚作ってくれたのかも知れない。」

「そうかもね…。」

でもね、おママは同じデザインで色を変えて遊ぶこともありましたから、今となってはわかりませんよ。

オネコはその貼り絵をファイルから取り出して裏返しました。

「ね❗️見てよ。ほら。」

(↓)まだ、おママがしっかりしていた頃、他人に貼り絵を差し上げる時は、小さな名前印を押していました。

「本当だ、おママは誰かに上げるために、もう一枚作っていたんだね。」

こりゃ、確定だわ。1作目が11月2日。そしてリクエストが11月11日ですから、おママは小さな「もう一枚」のメモを見て、

「作らななきゃ❗️」

と思ったのでしょう。メモって本当に大事。(^。^)

15年前のおママは、ちゃんと約束に応えていたのですね。

私の想像ですが、一番上の中央に花がある貼り絵は、グリーンの布地がなくなってしまったから、作れなかったのかも知れません。

 

でも、「もう一枚」制作して、オネコに渡すのは忘れてしまった。

当のオネコもリクエストした事すら忘れていた。

そして15年。やはりお互い様ですね。(^。^)

 

「よかったわ。これはもらっていくわよ。15年経って、ようやく貰えた。」

「どうぞ、どうぞ。」(^○^)/

 

今となっては、おママは思い出すすべもありません。オネコだって、目の当たりにしなければ、知らなかった事実です。

 

「ちゃんと、オネコさんとの約束は果たしていましたよ。」

当時のおママが微笑んでいるような気がしました。

 

「おママの手遊び」が縁で見つかった15年前の約束です。

 

(↓)2008年11月初旬の連作です。

(2008年11月1日 アルツハイマー認知症の診断から約1年9ヶ月)

 

(2008年11月 アルツハイマー認知症の診断から約1年9ヶ月)

 

(2008年11月 アルツハイマー認知症の診断から約1年9ヶ月)

 

おママの貼り絵を見てくださり,ありがとうございます。