アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

「ドキュメンタリードラマ 母、立ちあがる」の感想

  NHK総合認知症の二夜連続特集番組があります。

昨夜、その第1回として「ドキュメンタリードラマ 母、立ちあがる」が放送されました。

f:id:harienikki:20170330225635j:plain

            (2017年3月12日 診断から約10年1ヶ月)

    鳥取県にお住いの藤田和子さんは2007年45歳で若年性アルツハイマーの疑いありと診断されました。そして、一年の経過観察の後、アルツハイマー認知症の初期と診断されだそうです。

   それから10年経ちますが、藤田さんは今もお食事を作り、御家族と御自宅で暮らしていらっしゃいます。それだけでなく、若年性アルツハイマーの患者が自ら語る活動をなさって、忙しい日々をおくっておいでです。

 

    認知症の患者が、自ら認知症であると認識し続けるのは、難しい事だと思います。おママには無理でしたね…。
藤田さんは若いうちにごく初期で診断されたから、可能だったのでしょうか…。

 

  私からすると、認知症患者が自らの体験を客観的に語る。それはすごい事です。ケアする御家族にとっては、患者の心に寄り添う手掛かりになるでしょう。

 

   私もおママの気持ちを考える上でヒントとなる言葉を見つけました。

 

   診断前の経過観察中、藤田さんはご自分の症状について、こんな思ったそうです。(ナレーション)
『物忘れとは呼べない違和感。何かをした事、言った事がすっぽり抜け落ちている感覚。』
もしかしたら、おママもこんな感じだったのかしら?
あの頃の私はあまり共感する心がありませんでした。不安だったろうね。

おママ、ごめんね〜。

 

   10年経った現在、活動が忙しい時、藤田さんは次のように感じるそうです。(ナレーション)
『やらなければならない事が次々重なると、アクセルを踏み続けているような、脳が焼き切れるような感覚になります。』
藤田さんとは比べものになりませんが、おママも貼り絵に集中した後は、
「頭がガーッと締め付けられるみたいに痛いわ〜」
と言っていますね。
  そして、一度に2つ以上の事を人から言われると、ひどい頭痛を訴えます。
『脳が焼き切れるような…』をヒントにすれば、つまりおママの頭もキャパオーバーになり、ショートしそうなのかも知れない。

 

  診断から間もない頃、藤田さんはこう思ったそうです。
『早期診断、早期絶望。そんな状況でした。認知症になったら何も分からなくなってしまう。そう思い込んでいました。』(ナレーション)

 

  そんな事ないですよね〜。
藤田さんも活動を通してそれを伝えようとしていらっしゃいます。

おママのような高齢者のアルツハイマー認知症もそうです。診断されたからといって、終わりではない…。

 

   認知症は1人1人症状も進行の度合いも違います。おママが例になるとは思えません。

  それでも、診断から10年、おママは記憶力こそ弱くなりましたが、その時その時の判断力を頼りにして、日常をおくっています。
『何も分からなくなってしまう』のは、本当の最末期だと思います。
それに、認知症が進んできても、本人はかなり周囲の状況を敏感に感じ取り、よく見ているのではないかしら?

    私が口先だけで貼り絵を褒めると、おママに見透かされそうです。

 
   私の親友はお母様(91歳、4年前に中程度の診断、メマリー10mg服用中)を自宅でみています。
彼女、最近LINEでこのような事を言いました。
「で、認知症を進めないようにするには、会話という愛かな。
本当の意志疎通ってところですかね。」
う〜〜ん。胸に深く刻まれるような言葉ですね。
私は笑顔と会話が大切だと思います。

 

   番組を見て強く感じた事。
藤田さんは笑顔いっぱいでした!
そして御家族や周囲といっぱい対話してる!
その精力的な活動の源はその辺にあるのかしら?

 

  今日は少し長くなってしまいました。読んでくださりありがとうございます。

再放送は4月22日(土)午後4時20分~午後5時10分です。

 

www.nhk.or.jp

お電話ありがとうございます。

    先週の土曜日におママのお友達がお電話を下さいました。

その方は小学校から女学校(高校)までの同級生で、おママにとっては子供の頃からの仲良しさんです。
おママがアルツハイマー認知症になったのも御存知で、気に掛けてお電話を下さったのでしょう。
   83歳になり認知症を患っても、お声を掛けて下さるお友達がいるなんて、おママは本当に幸せものです。

f:id:harienikki:20170329225844j:plain

(2017年3月14日 診断から約10年1ヶ月    この千代紙は相変わらずヘビーローテションですね。水色の丸型は皮工芸をやっていた時に使っていた丸い穴あけで打ち出しました。)

 

  とは言え、私はその時、実家に居ませんでした。すべてジジからの伝聞であります。

 

「割と長い時間話していてね、とても嬉しそうだったよ〜。」
本当に良かったね〜。

 

「子供の頃からのお友達と分かるらしく、昔の話をしていたよ。
まぁ、主にお友達が話すのに応えるような感じでね。」
ほぅ〜。相槌だけでもエライもんです。

 

「でも、途中で誰と話しているか分からなくなったみたいで…。」
あ〜〜。やっぱり。

 

「で…、おママはどうしたの?」
私はそこが気になります。するとジジは満面の笑みを浮かべました。

 

「聞き方が振るっているんだよ。

『あなた…、御名前はどういう風に書くの?』

どうしたら失礼にならないか、その場で必死に考えたんだね。驚いたよ。」
おそらく、お友達にはバレバレだと思いますが、それにしても上手な聞き方だと思います。
私が「ほぅ〜」とか「まぁ〜」とか感心していると、ジジはさらに笑って言いました。

 

「チャーコさん!
また、『頭がパーになっちゃって』とか『パーなの』って、何度も言ってたよ。」

おママ…。(笑)
まだ忘れてないのね…。
家ではあまり言わないのに。

 

もしかして、言えばお友達が笑ってくれる?

言われて嫌な言葉が、言って周りと笑える楽しい言葉に転化したのかしら?

 

そういう風に考えようかしら…⁉️(笑)

色々ありますが…、
本当にお電話を下さりありがとうございました。

 

harienikki.hatenablog.com

 

 

切るの上手

   切り抜く楽しさ。

構成を工夫しながら貼る楽しさ。

おママの貼り絵はその両方を感じます。

でも、時々、切り抜く事に強い欲求が生まれるようです。

これもそんなこんな貼り絵です。

 

f:id:harienikki:20170328231132j:plain

    (2017年2月28日 診断から約10年)

 

   2月27日の夕方、おママは黙々と作業机に向かっていました。

「お母さん、手元が暗くありませんか?大丈夫ですか?」

声を掛けても返事がありません。息を詰めているようです。

手元を見れば細かいジュエリーの写真を切り抜いていました。

 

このジュエリーは⬇︎の『貼り絵かな〜⁉️』でご紹介した写真と同じ画面に有ったもの。

harienikki.hatenablog.com

 

実は先日、2ヶ月遅れの『今月のイチ押し‼️2017年1月版』の時計もそうです。

⬇︎

harienikki.hatenablog.com

 

  上品な赤紫の背景から一生懸命ジュエリーを切りだしていると、

「あっ‼️」

おママは突然声をあげました。

細くて長いジュエリーの突起を切り落としてしまったのです。

「あ〜〜。残念だわ。」

おママはひどく嘆きましたが、私からすると大勢に影響はないのではないかしら?

「細いところは難しいですね。でも十分きれいに切れてますよ。」

気を取り直して再び切り始めるおママの背中を残し、私は家路につきました。

 

  あれ…、どうなったかしら?

翌日、実家に行ってみると、赤い色紙の上でジュエリーが輝いていました。

背景の端っこがピンキングハサミで落とされていますね。

その時に出来た三角がきちんと利用されているのもオシャレ🎵

それにしても…。良く切ったものです…。今だに器用なおママです。

優勝おめでとう‼️

f:id:harienikki:20170327231930j:plain

(2017年3月11日 診断から約10年1ヶ月    葉っぱのようなグリーンはマーブルペーパーの一部です。おそらくこのマーブルは購入したものだと思います。)

 

   昨日はまさかまさかの…。奇跡の逆転優勝❗️

稀勢の里関、おめでとうございます㊗️

 

  すみません。
おママの話ではなくて…。でも、おママもお相撲は大好きです。

 

   春場所の前、
稀勢の里は初日負けるんじゃないか…?」
ジジはそんな事を言ってました。

これは負けたら落胆してしまう自分の気持ちに保険をかけるようなものでしょう。

「今日も稀勢の里勝った!」

嬉しそうにジジは勝ち星を数えて、
「全勝するか?」
と、12勝まできたのに…。


   あ〜〜左肩に怪我をしてしまった〜〜。(涙)
稀勢の里、もう、ダメだな。」
がっかりでしたね。ジジ…。

 

  昨日、私は年度末の事務処理が溜まっているので、実家で後輩さんと仕事をしていました。夕方の5時過ぎは
「数字が合わない❗️」
と、2人で必死に照合作業をしていました。
お相撲どころではなかった…。

 

  ところが突然、6時前に2階からバタバタ、バタバタと階段を降りてくる音がしました。
その勢いたるや!
何か有って、おママが駆け下りてきたと思いきや、ジジではないか⁉️

 

開口一番、

稀勢の里!優勝したよ!」
「え〜〜〜〜⁉️」

 

  後輩さんと2人で思わず叫んでしまいましたよ。

それにしても、ジジ。足腰の痛みも忘れて駆け下りてきたのね。
よほど嬉しかったのね。
階段から落ちなくて、本当に良かったわ。

 

  稀勢の里関、ありがとうございます。

月末企画! 今月のイチオシ❗️(2017年1月版)

  あらっ?

「今日は月末?確かに月末だけど、ちょっと早いか?月末とは?」

隣で娘のアズキが突っ込みを入れいます。

この企画、月の晦日にアップするつもりですが、いきなり今日やってみます。

でも、タイトルは(2017年1月版)ですよ〜。

 

  先月、急に始めようと思い立ったこの企画。

2月からでなく、キリよく1月から始めれば良かったのに〜!

その思いが強く、2ヶ月遅れでやってしまおうと決めました。

 

 こちらが1月のイチオシです。

f:id:harienikki:20170326234553j:plain

(2017年1月26日 診断から約10年)

 

   珍しい事ですが、私はこの貼り絵の制作所要時間をだいたい把握しています。

始めてから貼り終わるまで、約45分から50分でした。

これも珍しい事ですが、おママはあまり悩まずに構成を決めておりました。

始めに腕時計の写真を中央に配置して、後は順々に構成を楽しむおママ…。

私はずっと張り付いて見ていたわけではないのですが、

S字構成だけで終わりかと思っていたら、正方形が4つ配されました。

そのお陰で、ちょっと豪華になったと思います。

真ん中の腕時計は⬇︎のジュエリーと同じブランドのものでしょう。

 

harienikki.hatenablog.com

 

同じ昔の広告写真から取ったと思われます。

背景の紫が周囲の青系統のパーツによって引き立っていますね。

リズム感溢れる、私の大好きな貼り絵です。

 

   そんなこんなで…、

私の独断で「今月のイチ押し❗️(2017年1月版)」決定〜‼️

パチパチパチ👏

 

f:id:harienikki:20170326235324j:plain

 

f:id:harienikki:20170326235407j:plain

 

 

ブロッコリーを茹でる

ブロッコリーがあるわ!」

昼前に私が冷蔵庫を覗いていると、おママが恐縮しながら見に来ます。

f:id:harienikki:20170325213135j:plain

            (2017年3月15日診断から約10年1ヶ月)

 

「あら、申し訳ありません。」
他所様に言うように、とても丁寧な口調。
「いえいえ。とんでもない…。大丈夫ですよ。すぐ出来ますから。」
私も他所様になりきります。
おママは手伝いたい素振りを見せるので、やってもらおうと思いました。

 

  しかし、私が小振りの片手鍋に湯を沸かせば、お小言が飛びます。

突然、怖いおっ母さんに豹変しました。

「こんな小さい鍋じゃダメよ。大きいのにしなきゃ。」

大した量ではないし、私からすると問題ありません。さっと塩を鍋に振り入れ、洗ったブロッコリーの小房を投入すれば、

「あっ!入れたな!」
と文句を言います。

う〜ん。おママ。言いたいだけなの?

 

   取り敢えず…。
「お鍋を見てて下さいね〜。」
とお願いしました。
すると、おママは楽しげに鍋の中で踊るブロッコリーを菜箸で突っいて、

鍋の底にバウンドさせました。
でも、すぐに吹きこぼれそうになるのです。
「火を細めて下さいな。」
と言っても、慌てるだけで埒があきません。
私は急いで火を細めました。

   鍋が大人しくなると、今度は物足りないらしく、おママはしたり顔で言います。
「こういうものは蓋をしないとダメなのよ。」
パコッと鍋に蓋をしてしまうのです。
えーっ!吹きそうになったから火を細めたのに〜。
(やはり、一緒にやっても調理はダメか…。)

 

   私はすかさずザルと水切り皿を用意しておママに言いました。
「お母さま、ブロッコリーをザルにあげて下さいね〜。」

「えっ?えっ?ど、どうしたらいいの?ザルに上げる?」

 

今日だけかもしれません。でも、言葉が通じない⁉️(涙)

 

私は身振りで鍋からブロッコリーをザルに移す動作ました。
「あ〜〜。はいはい。分かったわ。」
箸で器用にブロッコリーを摘んでザルに移してくれました。

 

言うより、見せる方が効果的なのですね〜。

 

   我が家は茹で上がったブロッコリーは流水にさらさず、ザルの上で自然に冷まします。
おママはザルごとブロッコリーを風通しの良い台所の窓際に持って行って、

粗熱を取ってくれました。なかなか、やるではないか❗️

 

  すったもんだはありましたが…。
ブロッコリーは良い感じに茹でられました。

それにしても…。
2人掛かりでやって、グタグタに煮崩れたりしなくて良かったわ〜〜。

 

 

 

リュックサック

 

f:id:harienikki:20170324233552j:plain

(2017年3月15日 診断から約10年1ヶ月)

 

 本日はお日柄も良く…。なんて落語のような前振りですが、お天気が良いとおママも気持ちが浮き立つようです。

と言っても、これは昨日の事です。

 

   私はいつも黒いビジネス用のリュックサックを背負って実家に行きます。
男女兼用、ノートパソコンが入る、色気も何とかも無いやうな、可愛くないヤツ。

 

   いつものおママはこれを見ると、
「大きいわね〜。」
「そんなの重そうで大変じゃない?」
と、眉をひそめていたのですよ。

 

  ところが昨日のおママはやけに関心を示したのです。
「背負ってみたいわ。背負えるかしら?」
自分で肩に掛けようとするから私は手を貸して、捻れた肩紐を戻してあげました。

「しょえたわ!どう?」
どうと言われても、お婆さんが黒のビジネスリュックを背負っているのですから、

不釣合いに見えますね〜。
それに、
『真っ黒は嫌だ!』
と、言っていたはずなのに…。

 

「私もまだこういうの背負えるんだわ。わりと良い感じ。

ずっとこうしていても良いわ。」


おママの言葉に心が浮き立つような楽しさを感じ、私はふと考えてしまいました。

 

  そういえば、昔のおママは滅多にリュックを使いませんでした。
私が幼い頃、旅行の時に見た記憶があるか、ないか⁈です。

まぁ、私が子供の頃(昭和40〜50年代)、一般的に大人はリュックを普段使いしていませんでしたが…。

 

若い頃のおママのアルバムの中に、お友達や銀行時代のお仲間と旅行やハイキングに行った時の写真が有ります。その中にリュック姿を見た気がします。

 

  もしかして…。
春の陽気に誘われて…。
独身時代の気分が蘇ったかしら?

 

(おママに小振りの可愛いリュックはどうかしら?両手が空く方が安全だし。)

そう思いましたが…。
アルツハイマー認知症のおママにとって、

この日の気持ちの高揚は留めておけない…。
しかも、新しい物にはなかなか馴染めません。
う〜〜ん。悩ましい春です。