(2019年11月24日 アルツハイマー型認知症の診断から約12年9ヶ月)
*共に歩いた
一昨年の冬くらいまで、ジジとおママは買い物に出掛けるのを日課にしていました。
それはおママが認知症と診断されてからだと思います。
それから10年。ジジは89歳まで保険関係の仕事を在宅でしていました。
日々、仕事が一段落したり、時間に余裕がある時を見計らって、おママと駅前のスーパーまで行くのです。それはジジにとって運動だし、おママには楽しいお散歩だったでしょう。
ひとつの土地に何十年も暮らし、子育てもしますと、自然と知り合いもできました。商店街には私やオネコのお友達の実家もあります。
「時々、チャーコのご両親が2人で歩いているのを見て、今日もお元気でよかったと思っているの」
数年前に小学校の同窓会があり、友人にそう言われたことがあります。
やがて、ジジとおママの2人はデイサービスに通うようになり、毎日は買い物に行かれなくなりました。
そして、ジジは足腰が弱くなり、シルバーカーが無いと外を歩けなくなりました。
それでも、週に1度か2度は2人で共に歩いていました。
「最近、チャーコのご両親をあまりお見かけしないんだけど…、お元気?」
昨年はコンビニでアルバイトをしている友人から心配そうに聞かれました。
「デイサービスに行くようになったしね…。」
「おうちでお元気なら良かったわ。」
この時は、親の衰えを客観的に突きつけられて、胸にちくんと小さな痛みを覚えました。でも、2人が共に歩く姿を温かい眼差しで見つめて下さっている人が何人かいる…。
それはとてもありがたいことです。
*ジジ、肝を冷やした大晦日
昨年の大晦日。
私の実家通いはお休みとなり、デイサービスもない。
それで、ジジはおママと2人で駅前のスーパーまで買い物の行きました。
ジジはシルバーカーを押していました。これを使うと、ジジはどうしても後ろや横への注意が散漫になる傾向があります。しかも耳は遠い。
スーパーの前まではおママが一緒だと確認していたそうです。しかし、入口周辺に積まれていた特売の菓子を見ていたほんの僅かな間に、おママの姿を見失ってしまいました。
認知症の家族がいない❗️
これは家族にとってはまさに恐怖‼️
ジジは肝を冷やして頭が真っ白になったそうです。
(このほんのちょっとの間で、おママはどこに行ったのか?)
(スーパーの中に1人で入ったか?
それは、あり得るが…。なら、そうと仮定して…。
スムーズに動けない自分がスーパーに入って中を探しているうちに、入れ違いでおママが外に出てしまったら、もっと状況は悪くなりそうだ。1人で中にいるなら、いづれは出てくるか店員に保護されるかも。
それなら、しばらくスーパーの入口に立って、待ってみようか…。)
待つこと15分から20分。
だんだん焦りを感じ始めていたジジの視界におママの姿が見えました。
なんと、私の同級生で近所に住むT君のお母様と、スーパーの外を一緒に歩いているではありませんか⁉️
T君のお母様もジジに気が付いて、おママを連れてきてくれました。
どうやらおママはジジが目を離した隙に1人で外に出て行ったらしい…。
T君のお母様は偶然通りかかり、
「いつも、お二人で歩いていらしたから、あれ?お一人だわ、どうしたのかなと思って…」
それでおママを捕まえていて下さったのです。
ジジはT君のお母様にお礼を言って別れたそうです。
年が明けて、私はこの話を聞きました。
本当に有り難くて、目頭が熱くなりました。
T君とは前述の同窓会で会ってから、殆ど交流はありません。その時、おママが認知症であることを話したかどうかの記憶すらありません。
「私達が思っているより、ジジとおママが2人で歩く姿を目にして気に留めてくれていた人は多かったのかも…。」
*今後は…
それからジジとオネコと3人で話し合いました。
残念ですが、今後はあまり2人だけで買い物に出るのは控える事にしましょう。
今回は幸運だったと思います。
でも、同じようなことがあったら、今のジジには走り回っておママを探す事はできません。
やはり、誰かがついて行くか、完全に私やオネコが買い物を代行するかだと思います。
長年、連れ立って買い物をしていた2人の姿が見えなくなるんですね。
「『最近お父さんとお母さんをお見かけしないけど…』って聞かれる事が何度かあるかもね…。」
やめる事が増えていくのは悲しい事です。
でも、現実は受け止めなければなりません。
私が実家へ行った時は、天気と体調が許せば、なるべく3人で一緒に買い物に行くかな…。
*本日アップの貼り絵
不思議な造形。
時計のような、花の植えられた鉢のような?
決して美しい訳ではないと思います。でも私には思いもよらぬ構成で面白い。
そう感じるには私だけかも知れませんが…。
中央の黄色の円形に文字が書かれています。これはマクドナルドのチキンクリスプの包み紙から切り抜かれています。左右に配置された黄色と緑の弧もそうです。
直にチキンクリスプが包まれていたので油汚れやソースで汚れていたんですよ。
しかし、ママは包み紙を丁寧に広げてティッシュペーパーで汚れを拭き取っていました。
「汚れているしさ、貼り絵に使うのは止めようよ。 」
「貼り絵?なにそれ?私、そんなのやってないわよ。」
マクドナルドのハンバーガーを食べた後、おママと私はいつもそんな不毛な会話を繰り返しております。
この貼り絵は私の見ていない時に制作された作品です。
認知症のおママは記憶がないので、そんな意図はさらさらないでしょう。
でもね、私は「鬼の居ぬ間の洗濯」をやられた気がして複雑な心境です。(^O^)
実はこの作品はリバーシブル。
裏面に⬇︎この貼り絵がされていました。
おママの貼り絵を見てくださり、ありがとうございます。