(2019年11月11日 アルツハイマー型認知症の診断から約12年9ヶ月)
全記事の続きです。
*「東京ルール」でもダメ
救急車に乗れたとホッとしていましたが、これから思わぬ展開が待ち受けていたのです。
<16:00>
デイサービスの前はとても道幅が狭い。それでジジを載せた救急車は少し離れた広い道に停車して入院先を探し始めました。しかし、なかなか搬送先が決まりませんでした。
<16:30>
医療体制が逼迫しているため、どこの医療機関も病床の空きがなくのでしょう。
入院先選定がなかなか難しいのは分かりますが、あまり時間がかかるとジジの体力が保つのだろうか。段々心配になってきました。
「病床が逼迫していて、これまで5つの病院に受け入れ要請を断られました。入院先選定開始から20分以上経っていますので、これからは「東京ルール」に則って入院先を調整することになります。」
救急隊員にそう言われた時、私は「東京ルール」というものを知りませんでした。
www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp
東京都内には12の医療圏域ごとに「地域救急医療センター」があります。
救急隊の医療機関選定において搬送先が決定しない場合に、救急隊と並行して、地域内の救急医療機関の連携体制を基盤として、受入先の調整を行う医療機関です。
しかし「地域救急医療センター」の調整をもってしても、ジジの入院先は決まりませんでした。
そこで、救急隊員の選定と並行して、東京消防庁に配置された「救急患者受け入れコーディネーター」にも調整を頼みました。このコーディネーターは
地域救急医療センターが行う地域内の調整では患者受入が困難な場合、東京都全域で調整を行います。
しかし、コーディネーターに「東京全域」で調整してもらっても、受け入れ病院は見つかりませんでした。
この頃、ジジは酸素吸入を始めたので、だんだん血中酸素濃度は97くらいに回復して、デイサービスに居た時より良くなっているように思いました。しかし、一瞬酸素吸入を止めると、直ぐに90位まで下がってしまいます。
救急隊員が「田中さん❗️聞こえたら目を開けでください❗️」と叫ぶと、ジジはうっすら目を開けました。
<17:00>
そろそろ、おママを載せた送迎バスがデイサービスを出発した頃でしょう。
救急車はまだデイサービスの近くで足止めをされています。
<17:16>
オネコのLINEでおママの帰宅を知りました。おママの方が早かったか…。
救急車のストレッチャーにベルトで固定されているジジに
「おママが家に帰ってきたって❗️オネコさんから連絡がきたよ。お父さん、おママの事はもう心配いらないよ」
と声をかけると酸素マスクの下でジジは微かに笑顔を見せました。やはり、ジジは自分がこんな状態になっても、おママが心配だったのですね。
<18:00>
救急車に乗って2時間経過しました。
「東京ルール」を適用しても、全く搬送先は見つからなかったのです。
(なんとかジジが生きているうちに医療機関にはいりたい。)
一度は諦めたジジの命ですが、せっかく救急車に乗れたのに、こんなことになるなんて。
しかし、救急隊員の必死の調整が耳に入ってきて、私が泣き言を言うのも躊躇われました。
*PCR検査を受けた
確かにジジは不利だったのかも知れません。
現状、高熱で酸素吸入がなければ生命の維持が難しい重篤な状態だが、検査を受けていないから、コロナの患者かどうか見極めがつきません。やはりコロナであれば専用の感染症専門病棟がなければ受け入れられないでしょう。
救急隊の選定でも、そんな高熱でPCRも抗原検査もしてない事がネックになっていたようです。
「此処に2時間以上とどまっていてもどうしようもない状態です。取り敢えずPCR検査をしてくれる医療機関を探して、その結果を踏まえて、更に入院できる医療機関を調整しても良いでしょうか。」
どうにもならない現状を打破するために、私はジジにPCR検査を受けてもらう事にしました。白黒つけないと先に進めません。
しかし、夜間にPCR検査を受け付けてくれる医療機関を探すのも大変だったようです。
1箇所だけ23区内のA病院が検査だけを引き受けてくれることになりました。
<18:40頃>
A病院の駐車場に到着。
診察も入院もないので、ジジは救急車を降りることもできず、ストレッチャーに乗せられたままPCR検査を受けました。
幸い酸素吸入を続けられているので、ジジの容態は安定していました。しかしそれでも40度近い高熱のままでした。
頻繁にオネコとLINEで会話しているので、お互いの様子は把握できていました。
おママはご機嫌で夕食を食べていたようです。
<19:15>
検査結果が出ました。
コロナ陽性
私は少し気が遠くなりました。根拠はありませんが、てっきり陰性だと思っていました。
容体からすると、肺炎があり,酸素吸入が必要な「中等症Ⅱ」。
この結果が、更に医療機関の調整を難しくしていったのです。
ジジを乗せた救急車はA病院の駐車場で搬送先を探し続けました。
*付き添い問題
ジジがコロナ陽性と判明してから、リーダー格の隊員から聞いたのですが、
コロナ陽性の患者を救急搬送する時は、感染予防のために家族の付き添いを断るそうです。
恐らく、搬送先が決まっても、付き添いである私はその病院に立ち入る事ができないでしょう。
「まだ選定中ですが、難航しているので遠方の病院になるかも知れません。そこまで行っても病院の中には入れないし、遅い時間になると娘さん(チャーコ)が帰宅するのも難しくなります。決定した時点で、ここからは救急隊員に任せて、お帰りになるのも一つの手です。」
そうですね。家族が立ち入れない病院まで行っても、徒労かも知れません。
しかし、ストレッチャーの上でこの状況に耐えているジジを残しては帰る気にもなりませんでした。
「タクシーで帰るくらいのお金は持ってきていますし、私が帰ったら父も不安になると思います。やはり,病院に入るところまでは見届けたいです。病院に入れない事は了解しました。それでも連れて行ってください。」
「分かりました。」
*シュールで残酷な現実
隊員が必死に調整をしている様子を目の当たりにして、それでも搬送先が決まらない現実に、私は焦りを感じていました。ジジの体力がいつまで保つか心配です。
それと同時に不思議な気もしていました。
今、どこにいるんだっけ?医療機関の駐車場だよね。
決して受け入れてくれない病院の駐車場で、必死に搬送先を探している救急車。
なんとシュールな絵でしょう。
救急隊員はひっきりなしに電話をかけて、何十件と断られ続けているのです。
その間、別の救急車が入ってきて、普通に病院内に患者が運ばれていきました。
ジジはこの病院に入れないのに、一体どういう選別がなされたのでしょう。
高齢だからか?コロナの中等症Ⅱだからでしょうか?
高度な延命治療は求めていません。しかし、どこも受け入れてくれない。
なんて残酷なんだろう。
私はジジの手を握りながら何度も声をかけながら、意識があるかを確認し続けました。
<20:30頃>
私は救急隊員から衝撃的な事を聞かされました。
「長時間の対応となり、救急車の燃料が少なくなってきました。搬送先が決まっても、そこまで行かれなかったら大変です。救急隊員ごと救急車が交代となる可能性が高くなりました。本部からの決定次第で引き継ぎの隊が来ます。」
え、え、えーーーー⁉️
救急車が交代するって⁉️
親身にこれまで対応してくださったのに…。ショックでした。(T_T)
(まだまだ続く…(T_T)
*本日アップの貼り絵
今回も随分前に制作されて、ブログにアップしていなかった作品を掘り起こしてみました。
2019年11月11に制作されました。
この作品って,ちょっと不思議です。パッと見て,何が目につきますか?
私は「液状のり」という文字です。結構素敵な作品なのですが、なぜおママは「液状のり」を加えたのでしょうか。
「お題方式の貼り絵」です。
*「お題方式の貼り絵」と「お題パック 」について
一昨年の夏ぐらいから、おママは貼り絵に使う紙を自分で1から探して選ぶ事が難しくなってきました。それで、あらかじめ私が「お題」と称して何種類かの紙を用意することが多くなりました。その他に組み合わせする紙片をおママに選んでもらってから、切り貼りを楽しんでもらうようになりました。私はこれを「お題方式の貼り絵」と呼んでいます。
私が実家に行かない時でもおママが貼り絵に取り組みやすいように、「お題」と台紙にするハガキをチャック付きのビニール袋に入れておく。これが「お題パック」です。
(↓)私が用意した「お題」はこちらです。「液状のり」は入っていませんでした。
(↓)おママは順調に構成を進めています。
(↓)直ぐに乗り付けを開始しましたが、この写真の中に「液状のり」のピースがありました。(^O^)
そうです。青い矢印で示した糊のラベルです。剥がれそうになっていたから、おママはそれを容器から取って貼り絵に貼り込んだのでしょう。
おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。