これは去年2016年の秋の事です。
(2016年10年17日 診断から約9年8ヶ月)
その日、午前中は結構な雨でした。窓際のおママの作業机もどんよりと暗い。
そのせいか、この日は机に向かう気配はありませんでした。
貼り絵はお休みなのね。
なのにファイルを開けてみると、
その日の日付である2016,10,17と書かれた葉書が収められていました。
(これは昨日の貼り絵だわ。)
一瞬、私は狐につままれました。
アルツハイマーの人は日付や時間に弱い。だから、か…。
でもおママの今朝の行動を想像してみますと…。
いつも朝刊の日付で今日を確認しています。
おそらく前日、机上に置き忘れた工夫が、今朝の作品になったのね。
なんだか微笑ましい。
この日、机に向かわない代わりに、
午後のおママはガウディの写真集(注)を見て過ごしていました。
繰り返し繰り返しページをめくり続けているのです。
「面白い建物ね。」
「ほんとうにきれいだわ。」
おママはページを繰るごとに、いつも初めて見る写真に出会う。
だから、最後まで見てしまっても、別の行動が入ると、また、新しい写真集を開くように眺めます。例えば、一言二言私と話すとか、お茶を一口飲むとか…。
その繰り返しの午後。
「昔、一緒に写真展に行ったね。感動して買ったんだよ。写真撮った人にサインしてもらったね。」
私が思い入れたっぷりに語りかけても、
「そうだったかしら?」
覚えてない。まぁ、いいか。雨の日だけど、その日のおママは楽しそうだ。
ガウディのおかげかな。
(注)細江公英「ガウディの宇宙」1984年9月集英社