(2018年12月26日 アルツハイマー型認知症の診断から約11年10ヶ月)
*随分久しぶりでした。(^O^)
1月下旬の事でした。
昼前に実家の最寄りの駅から、私はジジに電話をしました。例によって買い物があるか確認のためです。すると、ジジの声がいつもより明るく弾んでいます。
「実はね、さっきお母さんがパプリカを炒めたんだよ。自分で冷凍のパプリカを見つけて、『これ食べたい』って言ったんだよ。なんとか上手にできたよ。」
「へぇ…。」
ジジは業務スーパーの冷凍カット野菜を数種類常備しています。鮮やかな3色のカットパプリカはおママの好みですね。冷凍庫を物色して見つけて、「これ食べたい」となったのも頷けます。
そして実家について私が食卓の上に見つけたのがこれ⬇︎
「ほぅ〜❗️上手ですね。美味しそうにできましたね。」
舟形のグラタン皿に盛り付けて、見た目も大層よろしいですし、おママとチョイとつまみ食いをしてみると、柔らかく仕上がっております。
「あら、これ、美味しいわね。」
既にご自分が調理した事を忘れているようです。(^O^)
考えてみれば…。
おママが自分で材料を選んで調理をするなんて、いつ以来でしょうか?
一昨年の前半は自発的に野菜スープを作っていました。
でも、その後は殆ど出来なくなりました。以来、総じてジジや私の主導のもとに、おママはちょっと手を出すくらいです。基本的には何をどうすれば良いのか分からなくなったのだと思います。
料理は材料を揃えて、どの鍋や調理器具を使うか決め、手順を段取りしながら進めなければなりません。それだけでなく同時並行で作業を進める事もあります。(鍋に湯を沸かしながら、野菜の皮を剥くとか…)
おママもそうでしたが、認知症になっても軽い段階なら調理も可能だと思います。
しかし、症状が進んでくると、自分でも出来ないとか感じるのでしょうか?調理をする意欲がなくなりました。
そんなこんなを思うと、これは素晴らしいことです。(^O^)v
ジジと私の2人掛かりでおママを褒めちぎりました。
*大成功の陰に大惨事あり
褒めちぎった直後に私は台所に行きました。そこで目にした物は…、⬇︎これです。
( げっ‼️(°_°) 焦げてる❗️ このキャセロール鍋で炒めたのか⁉️)
なんてこった❗️コゲを落とさにゃならんのか…。
ショックで目眩がしたけど、ここはぐっと堪えなければなりません。
私が嘆き叫んだとしても、おママは覚えていないのだから。
「おママもね、『どうして鍋の端の方が焦げるんだろう?』って言ってたよ。」
「あの鍋は本来炒め物に使うもんじゃないのよ。おママはオーブン料理に使っていたんだよねぇ。何故、あの鍋を使ったかなぁ?」
「自然とおママがあの鍋を選んだから…。」
ジジを責めても仕方ない。一応おママは擦ってみたようですが、取れないから水に浸けて置いたのでしょう。その判断は正しいと思います。(溜息)
コゲを落とすなら重曹(セスキ炭酸ソーダも良い)です。でも実家にない❗️(°_°)
近所に住む姉のオネコの家にはあったので、午後、持ってきてもらいました。
この鍋に水と重曹大さじ1杯入れて煮溶かし、火を止めたら冷ましながら、割り箸の先で焦げた所を擦りながら落としていきました。
⬆︎夕方までにここまで落とすことができました。重曹って、やはり凄いです。(^O^)
*何故この鍋を?
「何であの鍋を使ったのかしら?」
オネコも私と同じ事を思ったようです。
フッ素樹脂加工のこびり付かないフライパンが手近にあったはずなのに、おママは敢えて奥の方からこの陶器製の鍋を出したのですから。
私が思い当たる事といえば、
おママは野菜スープを作っていた頃も、この浅い鍋を使う事がありました。
しかし、持ち手が小さくて暑くなるし。深さがないから吹きこぼれ易く危険です。そして、3年ほど前にガラス製の蓋が割れてしまいました。私としては、あまり使って欲しくなかったのです。それでなるべく目に付かないようにするため、奥に片付けていました。
しかし、それでもおママは何度もこの鍋を見つけては使っていたのです。
「きっと、おママはこの鍋が好きだったんだよ。」
そうとしか思えません。
側面にこんな模様が施されています。なかなかオシャレ。
ネットで調べてみますと、これは1970年代にNARUMIから販売された『クック マスター』というシリーズの鍋でだそうです。
約25㎝四方で高さ7㎝くらいでしょう。
私にとっても思い出深い鍋です。
グラタンだけでなく、鶏肉を醤油、みりん、レモン汁で漬け込んで、玉ねぎとピーマンと一緒にオーブンで焼いたのも美味しかったなぁ。(o^^o)
私の長期記憶の最初の方、
そう幼少期の台所風景に、このキャセロール鍋はありました。
おママはよく使っていたのです。
今の若い方には想像もつかないと思いますが、
私が幼稚園や小学生くらいの頃は、ガス台の五徳に直接載せて火を点けるオーブンがあったのです。
ガス台に載せるとなかなかゴツくて迫力のある大きさでした。重さは見かけよりずいぶん軽いので拍子抜けしますが…。(^。^)
特に子供の目から見ると、巨大な立方体がガス台の五徳に載っているように見えるので、かなりインパクトありましたよ。
オーブン自体を温めから焼くという物だから、火加減が難しいのです。
でも、子供の頃、私はおママが焼いてくれるクッキーやパウンドケーキが大好きでした。
そしてグラタンは美味しかった❣️
そのグラタンの時に使っていたのがこの鍋。
高度成長期に、憧れのシステムキッチンのある公団住宅(いわゆる団地)に住み、
「さぁ❣️今まで作れなかったオーブン料理もやってみたい❗️」
若かったおママが使い始めたオーブン。
そして、同時期にこの陶器製の鍋も買ったのかもしれません。
その後、引っ越しを経て、オーブンがガス台の下に組み込まれたキッチンを使うようになっても、この鍋は活躍していました。
きっと今もおママの記憶の深部にこの鍋を手にした時の喜びが残っているのでしょうね。
それは私達、家族の楽しい食卓の記憶でもあります。
だから、今でも使いたくなってしまうのかしら…?(^O^)
*リアルな対処法
ちょっとノスタルジーな気分になりましたが、現実は現実です。
今後、何かの弾みでおママが調理をしたとする…。
この鍋を使って火傷をしたり、噴きこぼしてパニックになったら大変です。
ジジは「しまってくれる?」
オネコも「見えない所に片付けたら良いのよ。」
との意見なので、三者の合意のもと、私は焦げを落とした鍋を袋に入れ、台所の天袋の奥に仕舞いました。
(これで、おママは2度と目にしないだろうな…。
ごめんね。おママの海馬の奥の嬉しい思い出を、
私は永遠に奪ったんですね…。)
(/ _ ; )
でも、安全第一❗️
いつか、私がこの鍋でグラタンを作る日が来るかも⁉️
(^O^)/
*本日アップの貼り絵
この写真⬆︎切れている左側が使われているようです。
2018年銀座百点5月号より
⬆︎このお祭りで行われたイベント「コドモあいらんだ 〜 銀座」の写真のようです。
⬆︎こちらにも使われております。
おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。