(2021年12月3日 アルツハイマー型認知症の診断から約14年10ヶ月)
*最初は気にしてなかったのに
2021年12月3日。
この日の「お題」は(↓)こちらです。美しいモデルさんですね。
実はこの美しい女性の写真は、2019年の秋から時折見つかっては行方不明になっていました。
元は(↓)銀座百店の2017年8月号に掲載されていた銀座花菱の広告写真です。
このページは2019年11月当時、おママ自身が切り取っていたものです。恐らく、貼り絵に使おうと思ったのでしょう。
(↓)背景は使われたのですが、人物は使われませんでした。
折角、おママの作業机周辺から見つかったので、「お題」に使ってみようと思いました。
*「お題方式の貼り絵」と「お題パック 」について
2019年の夏ぐらいから、おママは貼り絵に使う紙を自分で1から探して選ぶ事が難しくなってきました。それで、あらかじめ私が「お題」と称して何種類かの紙を用意することが多くなりました。その他に組み合わせする紙片をおママに選んでもらってから、切り貼りを楽しんでもらうようになりました。私はこれを「お題方式の貼り絵」と呼んでいます。
私が実家に行かない時でもおママが貼り絵に取り組みやすいように、「お題」と台紙にするハガキをチャック付きのビニール袋に入れておく。これが「お題パック」です。
<貼り絵制作動画①>
2021年12月3日 14:46〜(2分7秒)
おママはモデルさんの写真を迷いなく切り抜いています。おママにとって、それほど難しいカットでもないのでスイスイとハサミが進みます。
スカートの裾の辺りでちょっと手が止まります。
マ「これはいいね」
裾の下には文字も印刷されていますし、おママは足は要らないと判断したようです。
チャーコも全く拘りなく、能天気に答えました。
チ「うん、いいよ」
切り終えて、おママ一言。
マ「これはこれでいい。」
「これでいい」なら「これでいい」を貫いてほしいのですが、そうはいかないのが、認知症患者なのです。とにかく,おままさんは自分が納得したことをすぐお忘れになるのです。恐らく30秒も記憶は保ちません。(^◇^;)
問題は、「スカートの下に脚がない」事です。
私はおママがハサミで切っている時に、チラッとこのことが脳裏をよぎりました。
しかし、考えてみてください。誰しもモデルさん体型ではありません。こう言ってはなんですが、おママが子供の頃に見知っていた大人は明治大正人ですから、そんなにプロポーションは良くないです。
「ロングスカートをはいている」
おママはそう思ってくれるのではないか。私は安直に考えたのです。
それに、語彙が少なくなってしまったおママですから、最近は「あし(脚・足)」という単語が出てこないのです。足が冷たい事を訴えるのも、自分の足を指差して、
「ここが、ああだから、ひぃー❗️」
とブルブルさせるのです。
よもや、スカートの裾から下を気にするとは、この時私は思いませんでした。
そしておママの関心は上野風月堂の包装紙に移っていきました。
(↓)この時の残りを使っています。
この作品は初めは横長画面でした。
おママははみ出したスカートの下部を指で触れながら
「こうしちゃえばいいね。(切っちゃえばいいね)」
と言っておりました。
が、しかし…。(^◇^;)
どういうわけか、おママの気が変わって縦長画面になってしまい、様子が変わってしまいました。
*あし❗️
縦長画面に変えて、おママは更に構成を考えました。モデルさんの写真が余裕をもって画面に収まるようになると、おママは気になり始めます。
<貼り絵制作動画②>
2021年12月3日 15:10〜(2分49秒)
動画開始から約21秒後、おママは突然スカートの裾を気にし始めました。
マ「ここんとこ、どうする? あし❗️あしはどうする❗️」
私はちょっと面食らいました。だって、このモデルさんの写真を見て、おママが「あし」という単語を使いながら、その失われた存在を主張し始めたのです。
チ「脚は無いのよ。それ、スカート切っちゃったから。」
マ「そうなのね,じゃぁ、いいわね。」
一旦、おママは納得したようですが、動画の最後の方で、おママは円弧を描くような円いピースをスカートの下へ持っていきました。
そして再び「あし」という言葉を言いながら、裾下の「あし」が無い不自然さを隠すように配置したのです。
*隠したつもりが…
(↓)こんな感じにすれば、「あし」が無い不自然さは緩和されます。
おママさん、よく考えたと思います。
この配置を完成形として糊付け作業に入りました。まず,メインピースを貼る時に、大きな円弧はどかさなければなりません。
<貼り絵制作動画③>
2021年12月3日 15:14〜(8分55秒)
動画開始から約1分28秒後。
モデルさんの写真を糊付けしたおママは、そのスカートの裾を指で触りながら、「あし」が見えない事を気にしました。
マ「これのこれがね、どうしようと思ったんだけどね、まぁ、あれしちゃうからね、やちゃうよ。」
字に起こすと全く意味不明ですが、おママとしては、
「脚がなくてどうしようかと思ったけど、まぁいいかなと思って作業を進めちゃうわよ」
と言いたかったのでしょう。
チ「脚がないね。」
マ「さっきから,あれしちゃうと…。」
チ「さっきから、(脚がないのが)気になっていたよね。」
そして、動画開始から約2分13秒後、おママは「あし」がない事を隠すために配置した円弧を、モデルさんの頭部を飾るように貼り始めたのです。
おママ自身で考えた不自然さをカモフラージュさせる案は、既に忘却の彼方です。
でも、画面は華やかになりました。
おママが「あし」の事を忘れてくれれば、私も別に良いのです。
動画の最後で、おママは完成させた貼り絵を喜び、
「チャンチャカ、チャンチャカ♫」
と歓喜の鼻歌を歌っておりました。
どうやら、脚が無い件は、忘れてしまったようです。(^◇^;)
(↓)完成❗️
*ぶり返す拘りのツボ
しかし、それでは終わりませんでした。
約1時間後の事です。
その間、おママはおやつを食べて、もう1作品貼り絵を完成させております。
再び、この作品を目にした時に、おママは又スカートの裾に触れながら言ったのです。
「ここがないのよ。ダメよ。」
そして、小さなピースを切って、脚の代わりに貼りました。
おママさん。まるでスカートの裾に綺麗なフリルがついたみたいで素敵だけど、
これじゃぁ脚の代わりにはならないよ。
だって、脚は2本なのに、3つ付いているんだけど。(^◇^;)
後日、収納ファイルを開いて眺めていると、おママはこの作品に注目していました。
そして、モデルさんのスカートの裾に触れて、
「ここがね、ないわね」
と呟くのです。記憶はなくても、おママなりに人体のイメージは想起できるから、見れば毎回拘るのです。
「あし」という単語が出てこなくても、それが暫くの間、おママの拘りのツボになっていました。
おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。