アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

風の訪問者

(2022年7月25日 アルツハイマー認知症の診断から約15年4ヶ月)

 

どうしても気になる

実家は築90年近い木造家屋です。

ジジとおママ夫婦に娘二人が祖父母とこの家で同居を始めたのは、かれこれ50年くらい前。それから何度か手を入れていますが、全体的な老朽化はどうにもなりません。

風が吹けば、ガタガタというよりバサバサという音がします。

特に玄関のドアは少しの風でも振動して音を立てるのです。

 

今日(11月4日)は暖かい日でしたが少し風が吹いていました。

ガチャガチャガチャ。

おママはドアノブキーを開けるのですが、どうしてもドアを開けることができません。

「どうしてかしら、あら、困ったわ、どうなっているのかしら。」

何故なら、おママが一人で外に出ないように、暗証番号キーを取り付けているから、絶対無理なのです。

ドアが軋む音がしたから、おママは誰か来たのかと思ったのでしょう。

「すみません、ちょっと待ってください。」

でもね、やって来たのは風だけなのよ。

おママは必死にドアノブを回したり、チェーンをガタガタさせるから、ただでも古いドアが壊かねません。

 

「風の音なのです。誰も来ていませんよ。」

私はドアを開けて誰もいない事を確認してもらいました。

しかし、その時ばかりはおママも納得するのですが、悲しいかな…。

その記憶は10秒すら保ちません。

またドアが軋むと、おママは直ぐに玄関へ行ってしまいます。

 

「ごめんなさい。どうしてあかないんだろう。待ってくださいね。いまあけますから。」

 

またおママは見えない相手に謝っていました。

おママさん、それは風の訪問者。影も形もないのよ。

緑内障で極度に狭まった視野の中で、手探りで鍵やチェーンに触れて動かしては、一人芝居のように謝る。

それを何度も繰り返す姿は気の毒でしかありません。

 

「芙貴子さん、風の音だったのですよ。誰も来ていませんよ。」

「どうして?」

「風でドアが揺れて音がしただけです。」

「なんで?だって、お父ちゃんが、お父ちゃんが…。」

おママさん、「お父ちゃん」って誰ですか?ジジは家の中ですよ。それに、最近ジジの事は「お兄ちゃん」と呼んでますよね…。

「お父ちゃんはお部屋にいますよ。」

「だって、じゃぁ、誰なの?」

「風の音だったのよ。」

「どうして?なんで?」

 

この堂々巡りを止めるにはおママの気分を変えるしかありません。

「お散歩に行きましょう。」

私はおママと一緒に直ぐ近くのコンビニまで行きました。

やはり11月ですね。陽が傾いた午後の風は冷たかったです。

おママの白い髪を揺らすこの風が、あの悩ましい訪問者の正体だったのですね。

おママは帰宅しても、しばらく玄関で靴を並べたり、私やオネコの靴を履いたりして遊んでいました。

そして、まだ、風の訪問者を気にかけていました。

 

(↓)こんな暗証番号キーを取り付けています。

harienikki.hatenablog.com

 

本日アップの貼り絵

風の訪問者のイメージに合うかなと思って選んでみました。

2022年7月25日の作品です。

この日、おママは小さな切れ端を入れている箱を熱心に探っていました。

この中の紙片を幾つか並べるのも楽しそうですね。

youtu.be

<おママの貼り絵制作動画①>

2022年7月25日 10:47〜(37秒)

配置を考えながらピースを動かすおママ。

割とすぐにまとまりました。(^O^)

 

それほど込み入ったデザインではないので、糊つけは順調でした。とは言っても、糊を糊と認識してもらうのに時間がかかるので、私としてはちょっと大変です。でも,使い始めればだんだん慣れてくるようです。(↓)

 

(↓)最後に1ピース追加して、完成しました。

 

 

 

 

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。