(2017年2月3日 アルツハイマー型認知症の診断から約10年)
*このタイトルは,なんぞや?
昨年12月中旬におママは貼り絵制作ができなくなりました。
そして、今年1月に特別養護老人ホームに入所しました。
まだブログに紹介していないおママの貼り絵作品はたくさんあるのですが、
今後、新しい作品は恐らく出来ないでしょう。
2016年12月から2022年12月まで、私はガッツリと、おママの認知症と貼り絵制作の見守りに取り組んできました。
それは事実だし、頑張ってきた分、心にポッカリと穴が空いてしまいました。
ふと立ち止まると虚無感に襲われます。
毎月恒例にしていた「月末企画 今月のイチ押し」は、もう出来ない…。
そんな寂しさを感じています。
およそ6年間、毎月毎月、印象深い作品を選んできた「月末企画 今月のイチ押し」。
これらは、今見返しても、新鮮さや面白さを感じる作品が多いです。そして懐かしい。
当時とは全く違った印象を受ける作品もあり、新たに振り返って文章を書きたくなったものも幾つかあります。
題して「月末企画❗️今月のイチ押し❗️リターンズ」
月末企画だけど、毎月ではないかもしれない。
そんなゆるい気持ちでやってみようかなと思います。
*文字は文字?
おママの貼り絵の中で特に印象に残っている作品は?
そう訊ねられたら、私はまず「ぶどんくぱつみる」と答えるでしょう。
まるで魔法の呪文のようですね。
私がブログを始めてまだ1ヶ月半くらいの時、この貼り絵に出会いました。
当時のおママは自分で貼り絵に使う紙を見つけて、一人で黙々と取り組んでいたから、
私はファイルを開いてこの作品を発見した時、軽く頭を殴られたような気がしたものです。
(あゝ、おママよ、ここに極まれり。)
元はこちらです。(↓)
ジジの目撃談では…。
朝食後に食卓で包みを開き、いきなり切り抜き出したそうです。
そして配置から糊付けまで、あっと言う間だったとか…。私が言うのも何ですが、この絶妙な構成はもはや神業です。(笑)
しかし、オネコと私は感動するのと同時に絶望感に襲われました。おママにとって、文字は遂に幾何学模様と同じになってしまったのか⁉️
文字は形ですが、言葉と音を宿すもの。
「ぶどんくぱつみる」では意味不明です。しかも「う」の上部分が有りません。
2017年2月の私は
(おママは文字を文字として認識できなくなっているのか?)
と恐れ慄きました。
実際、語彙が減少し始めていたので、このままでは意思の疎通が取れなくなるのではないかと不安だったし絶望的な気分でした。
少しでも語彙や文字を認識する能力を失わないようにと思って、「なぞり書き百人一首」を買っておママに勧めた事もありました。でもおママは本に書き込むという行為に抵抗があったのか、一緒にやろうと勧めても受け付けませんでした。
実際、年月が経つにつれ、おママの語彙はどんどん減っていき、殆ど「こ・そ・あ•ど」だけで話すようになってしまいました。
しかし、「ぶどんくぱつみる」から5年経過しても、おママは文字が発音と結びつくという事だけは理解していました。意味は全く理解できなくても…。(^◇^;)
(↓)
もし当時の自分に語りかけられるとしたら、私は「そんなに不安がらないで」と言いたいです。
アルツハイマー型認知症の進行は個人差が大きくてさまざまだと思うのですが、おママは極めて鈍行でした。なだらかな坂道を下り、しばらく平地を走り、そして、ゆっくりと下っていきました。
それに語彙がほとんど失われても、おママには笑顔もあったし、人としての感情は表現できていましたもの。(^。^)
*自由を謳歌
今、「ぶどんくぱつみる」を見ると、私は素直な気持ちで、この自由でのびやかな表現に圧倒されます。文字はバラバラにされて意味はさないけど、画面の中では躍動感があります。
私の知っている認知症になる前のおママは割と常識人で固定概念にハマるタイプでした。昔のおママだったら、まさか文字を完全に図形や模様と捉えて画面に構成しようとは思わなかったでしょう。
「こうしたらいいかも、ああしたらいいかも。」
ピースを動かしながら楽しそうに考えるおママの姿が目に浮かびます。
思う通りにやってみよう❗️
良いと思うようにやっちゃって良いよね。
「ぶどんくぱつみる」には、そんな、自由を謳歌するおママの歓声が聞こえてくるような作品です。
おママの貼り絵を見てくださり,ありがとうございます。