(2021年4月2日 アルツハイマー型認知症の診断から約14年2ヶ月)
*どうして決めつけるの
先日、習い事のお教室で、話の序でに自分のブログを紹介しました。
熟年より老年に近い男性が、おママの貼り絵の写真を見た途端に、
「この人は認知症ではありませんね。」
そう面と向かって言われてしまいました。私はビックリして一瞬固まってしまいましたが、
「診断を受けてから14年経ちますし、認知症だけで要介護3になっていますが…」
と反論するのがやっとでした。しかし、この方は更に続けて、
「認知症の人に、こんなもの作れるわけがありません❗️」
そう言い切られました。
この方はブログのテキスト部分を読む気は全くないようですし、口惜しいけれど、場の雰囲気がこれ以上悪くなるのも嫌だったので、私は口をつむぎました。
それから、私の頭の中は折に触れてこの言葉が蒸し返されて、動悸が起きます。
「認知症の人に、こんなもの作れるわけがありません❗️」
(どうして、そう決めつけるんだ!)
もっと強く反論すれば良かった。この点は後悔しています。
*何を以て作ったと言えるのか
ただ、私も頭を冷やして冷静におママの現状を考えてみなければなりません。
認知症歴14年、87歳。
おママは家族の名前はおろか、その存在自体が分からなくなっています。
今年に入って、 おママが自ら進んで貼り絵に向かう事は稀になりました。
私やジジが「遊びましょう」と誘ったり、おママの好きそうな紙を「お題」と称して提案すると取り組み始めます。
一昨年2019年の夏ごろから、おママは紙選びから全部の工程を一人きりで制作する事は難しくなりました。
私がいない時は、あらかじめ私がセットした「お題パック」を使って貼り絵をします。
私が材料の提案をしても、それをどう料理するかは、おママが自分で決めています。
いったん始めてしまうと、紙をどう切るか、どんなふうに組み合わせるか、おママはどんどんアイディアが出きてきます。
私が用意した紙の組み合わせが気に入らなければ、自分でイメージに合うものを見つけようとします。
それは私が想像もつかない紙や色だったりするのです。
デザインが決まって貼り付ける時、ピースに糊をつけるために台紙から持ち上げると、貼る場所を忘れてしまします。そんな時は私が「ここだったよ」と教えることもあります。
この程度のサポートが入った場合、本人が作った事にはならないのか?
私はなると考えています。
翻って考えますと、
おママは革工芸や製本技術を趣味で学び続け、手仕事を愛しました。
その終着点として、2005年頃から、手軽なこの貼り絵を楽しみ始めました。
2007年2月にアルツハイマー型認知症の診断を受けてからも、これをずっと続けました。
2019年の前半まで、おママは一人で机に向かい、作業机の周辺にある紙の中から材料を選んで、黙々と貼り絵を制作していたのです。
認知症の診断から12年間も一人で制作を続けられた事。
「お題」や「お題パック」を使いながらも、今現在まだ制作ができている事。
それはおママが楽しい、好きだと思う気持が有ったればこそです。
色や形の組み合わせとハサミを使った手仕事など、認知症になる前から好きだった事が、運良く継続できたのでしょう。
そして、出来上がった作品を見せると、ジジが褒めてくれる。
これは何よりもおママの糧になったと思います。
*個人差はあれど
「認知症の人に、こんなもの作れるわけがありません❗️」
こう言った方は、認知症になると、何も出来なくなると思っていらっしゃるのでしょうか。
そんなことはありません。
症状の進行とともに、確実に出来なくなる事は増えていきます。それでも、全く何も出来なくなるのは最末期だと思います。
認知症の症状の進み具合は、とても個人差があります。
認知症の前兆が萌芽し始めてから顕在化するまで、20年くらい期間があるようです。
症状の顕在化が早くて早期に診断されるのと、とても進行が緩やかで80代になってから診断される場合とでは、その後の症状の進み具合も違うと思います。
個人差はあれど、
認知症の初期から中期にかけてならば、患者はまだサポートを受けながら、自分で出来ることはあると思います。
日常の家事の中で、時にチグハグな事になっても、自分で仕事が出来たら、嬉しいでしょう。
発症前から好きなことや趣味があれば、出来る限りそれを楽しみながら暮せたらいいですね。
段々、灰色に萎縮していく脳に、それは彩と希望を添えられるかも知れません。
でも認知力や記憶力が衰えるから、その欲求をうまく伝えられなくなり、本人も苦しいし、周囲の人も辛いと思います。
私は自分が認知症になっても、好きなものを楽しみたいです。
だからこそ、おママにはなるべく長く好きな事を続けて欲しいです。
いずれ近いうちに、おママは貼り絵ができなくなるでしょう。
それは抗いようのない事です。
おママが作品を仕上げられなくなっても、綺麗な紙を見たり、ハサミで切ったりして楽しんでもらいたいなと思っています。
20年以上前に、おママが自分で染めたマーブル紙と、それを使った貼り絵を、背景にしてみました。
*本日アップの貼り絵
実はこの作品,前記事でアップしたパンの貼り絵と同じ日に制作されました。
以前使ったことのある紙を入れたファイルから、面白い形が2枚見つかりました。
おママはこれを見て、俄然やる気になってくれました。
こんな感じで中央に配置しています。(↓)
これは昨年4月に小津和紙の紙袋から切り抜いて貼り絵を作った残りです。
(↓)これです。
<貼り絵制作動画>
2021年4月2日 15:06〜
画面中央に小津和紙の紙袋の模様を配置し、おママは両サイドにピンクを持っていきたいようです。
このピンクは通所施設からのお手紙が入っていた封筒の内側です。
どう貼ろうかおママなりの工夫があります。糊付けをしようとして、糊の蓋を取るのを忘れているのはご愛嬌というところで…。(^◇^;)
ブルー系の千代紙を使うと決めたようです。
(↓)「こんなふうに、しようかしら。」
ブルー系とグリーン系の千代紙も小津和紙で購入しました。(↓)
あっ❗️
前記事を書いた時には分からなかったのですが、
ペールオレンジは小津和紙の紙袋の色だったんだわ❗️(^O^)
おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。