(2022年7月23日 アルツハイマー型認知症の診断から約15年5ヶ月)
*それぞれの思い
身内の介護に何人かの家族が関わっている場合、必ずしもその介護の方法や方針に対する考えが一致しているとは限りません。
おママの介護についても、考えの相違が多少ありました。
うちの実家の場合、おママの介護に携わっているのは3人です。
主たる介護者は94歳要介護1のジジです。
オネコさんはキーパーソン(連絡調整の窓口としての役割)です。主にケアマネージャーさんや通所施設との連絡、諸手続きなどを行ってきました。平日は在宅ワークをしており、実家から歩いて7分ほどのところに住んでおります。
そのサポートをしているのが私チャーコです。自宅は実家から電車を乗り継いで1時間。定期的に通っています。今夏からは泊まり込む機会も増えました。
認知症のおママは、いずれは何もできなくなり寝たきりになっていくでしょう。
その最後まで在宅で介護し続けるか?
それとも、おママの終の住処として、特別養護老人ホームを選択するか?
考えの相違はその点でした。
ジジは自分が絶対に死ぬまで施設には入りたくないという確固たる意志があります。ですから、なるべくおママも最後まで家でみてあげたい。そんな希望を持っていました。
でも、自分の衰えと共に、おママの面倒が負担になってきているようです。
オネコさんは、おママが終末期になって排泄の自立が失われた時点で特別養護老人ホームへの入所が一番良いと考えていました。
私たち姉妹は2人とも家庭の事情で両親と完全に同居することはできません。たとえ毎日通ったとしても、毎日24時間世話をすることは体力的にも状況的にも不可能です。
私はジジの気持ちを尊重すると、ジジ一人を看るのも、おママがいても一緒じゃないかと思っていました。ジジもおママも最後まで在宅で看取りたい派です。
特に一昨年、コロナの流行が本格化した中で、義母のクレバーを本人の希望通りに在宅で看取ってからは、その思いが一層強くなりました。
期間は短かったのですが、終末期癌の闘病はハードなものでした。だんだん衰弱して歩行も排泄も食事も困難になっていくクレバーを訪問看護ステーションの医師や看護師さん達と共に支えることができました。最後までお世話できた事は私にとって貴重な体験で財産だと思います。
「おママも、訪問医療、訪問看護、そしてヘルパーさん達をフルにお願いしていけば、私にもできるのではないか。」
義母にして上げられた事なら、実母にだってしてあげたい。
「癌の闘病と認知症の介護は違うわよ。」
オネコさんには言われました。
確かに、記憶力も認知力も衰え言葉も通じなくなってきたおママの介護と、頭脳明晰なまま末期癌で死を受け入れなければならなかったクレバァの介護では、大変さのベクトルが違うと思います。
それに、気がかりなのはコロナです。次々と現れる変異株によって今後も感染爆発はあるでしょう。おママを施設に入れたら、面会もままならなくなってしまいます。
しかし,現実は情け容赦もありません。
今年の春以降、おママの症状は急激に進んできました。
排泄の自立が揺らいできたのです。一応尿意と便意はまだ自覚位できていましたが、時々、全く自覚なくリハパンツを汚している事も増えました。
それで、オネコさんは今年に入って具体的に特別養護老人ホームを検討した方が良いのではないかと考え始めました。しかし、私は依然としてして在宅での看取りを主張していました。
最後まで在宅で看取るか、施設入所を考えるか。
これはどちらが正しくて、どちらが正しくないという問題ではありません。
個々に事情の異なる被介護者にとって、何が安心で安全なのかを 考えて答えを導くしかないと思います。
今年は色々ありました。
6月におママの緑内障が想像以上に悪化していて、視野の大部分が欠損している事が判明しました。
そして夏にジジ、おママ、私がコロナに感染して、その後ジジの体調がなかなか戻らなかったので、今までの介護体制を見直すことになりました。
実際、私がコロナで寝込んだ時は、おママと二人で実家に隔離状態となりました。おママの食事も世話もできない状態で、「共倒れ」という言葉が現実になる一歩手前でした。
長く続いてきたジジとおママ二人の暮らしは困難になってきました。
私とオネコのサポートも増え、今まで通りの状況は続けられなくなっています。
それで、私たちは一つの決断をしました。
今年の9月におママの特別養護老人ホームへの入所を申し込みました。
*大きな理由、それは視野欠損
これは本当にショックでした。
しかし、当初、私はこんな風に考えていました。
「視野がもっと欠けたり、失明してしまったら、おママはもう怖くて動かなくなり、そのまま寝たきりになるだろう。そうしたら、訪問医療や訪問看護をお願いして、ヘルパーさんを手厚く入れれば、在宅でもできるのではないだろうか。」
それでどうだったでしょうか。
おママの様子をを見ていると、やはり現在は6月より視野が狭まっているように感じられます。
しかし、おママはよく動き回ります。
玄関での音が気になれば、まっしぐらに玄関に突進して鍵をガチャガチャさせます。
実家は古い木造家屋で、玄関の床面からたたきまでの高さは30センチ以上。もしおママが足を踏みお外したら大怪我になります。部屋の出入りにも段差が多いです。足元が見えにくいおママにとっては危険がいっぱいでしょう。
しかし、おママは危険を感じません。
記憶のないおママにとって、現状の視界が昔からのごく当たり前なのです。
なんの躊躇いもなく、今はもう居住空間ではなくなった2階へ向かって階段を上がります。
たとえ電気がついていなくても、たとえ誰もいなくても。
視覚障害のある高齢者は動かない。それは私の思い込みに過ぎなかったのでしょう。
人間は動きたければ動くのです。
おママの視野がほとんど欠損していることが判明して、私はベテラン介護職の従妹に相談しました。
「今まで、全盲で認知症で在宅だった利用者さんを知っているけど…。」
「その方は今、どうなさっているの?」
「ご自宅で階段から落ちて半身不随になり、以来入院がずっと続いているの。」
恐ろしい話です。
何がおママにとって安全なのか?
何がおママにとって良いのか?
私には答えは見つかりません。
従妹に言われました。特別養護老人ホームの施設は基本的に床面はフラットです。
「在宅で看たいと思うチャーコちゃんには辛いかも知れないけど、特養に申し込んでおくのも手かも知れないよ。だって、すぐに入れるとは限らないし、順番が回ってきて、どうしても嫌だと思ったら、断ることだってできるんだし。」
そうですね。でも、私の心のモヤモヤはずっと晴れません。
9月初旬に認知症専門クリニックの医師から
「全盲になったら、ご家庭でのお世話は難しいと思います」
と言われた言葉が身にしみました。
全盲になってからではなく、現状まだ少し見える段階で申し込みをしよう。
そして、希望した施設にショートステイをしながら、様子を見ていこう。
これが、私達の苦渋の決断です。
次回は忘備録もかねて、特別養護老人ホームの入所手続きについて書こうと思います。
*本日アップの貼り絵
2022年7月23日の作品です。
実はこの作品を制作する直前におママは(↓)こちらの作品を仕上げていました。
つまり、その材料は残りが中心です。(↓)
<おママの貼り絵制作動画①>
2022年7月23日 15:19〜(1分24秒)
ピンクと朱色の紙の配置を考えています。
(↓)おママは前の作品で使った花柄をもう一度手に取りました。
<おママの貼り絵制作動画②>
2022年7月23日 15:30〜(2分10秒)
花柄をどのように切りましょうか。
おママはハサミを入れながら次第に迷走していきます。何を切ろうとしていたのか。分からなくなっていくようでした。
(↓)更に小さく分割していきます。
(↓)面白い形が出来ました。偶然でできたのか?おママの意図なのか?
見ていてもどちらか分かりませんでした。
<おママの貼り絵制作動画③>
2022年7月23日 15:38〜(15秒)
おママは面白い形のピースの配置を考えています。
使った紙です。
おママの貼り絵を見て下さり、有難うございます。