(2018年9月23日 アルツハイマー型認知症の診断から約11年7ヶ月)
特別お題「わたしがブログを書く理由」
私にしては珍しいのですが、特別お題に乗っかってみようと思いました。
*「私がブログを書く理由」
それは私の母である「おママ」が認知症になってもずっと続けてきた小さな貼り絵を紹介するためでした。
認知症になると、記憶がなくなるだけでなく、家族も認識できなくなります。出来ないことが増え、言葉も失われて、しまいには日常生活の全てが出来なくなるでしょう。
でも、その進行の速度は個人差が大きく、おママはゆっくりと坂道を下って行きました。
そして、認知症になっても、案外,出来ることはあるのです。
その出来ることを大切に続けて欲しい。私たち家族はそう思いました。
好きな事や好きな物ものは尊重したい。
手先の器用だったおママは診断から15年も貼り絵を続けました。もちろん,家族のサポートもありましたが、嬉々としてハサミで紙を切り、糊で貼る作業を楽しんでいました。
時には認知症とは思えないシンメトリーを構成したり、思いのまま色と形の配置に興じていました。
小さなハガキサイズの画面は
衰えゆく脳をフル回転させながら表現した
おママの世界です。
家族しか見る事はなかった「おママの貼り絵」ですが、出来れば他の方にも見ていただきたいと思いました。
認知症になっても、楽しみや好きな事を続けている一例にでもなれば、私達がこれから行くであろう道も少し明るく感じられるかもしれない。
「早期診断、早期絶望」
そんな事はない。認知症になっても、終わりではないのです。
そう感じていただけたら、幸いです。
*ブログを始めるきっかけ
2016年の秋頃、言い出しっぺはジジでした。
「おママがね。すぐ自分で言ったことも忘れるからあまり気にしていなかったけど、
『私がこんな事(貼り絵の制作)やっても、誰も見ないし、どうしようもないから、もうやめようかと思う』
って言うんだよ。だから,
『そんな事はないよ、私は楽しみにしているんだよ』
と言い聞かせたんだけど、せっかく毎日やっても、見るのは本当に家族だけ。
だから、ネットで公開したらどうだろう。他の人にも見て貰えば、おママの励みにもなるよ。それに少しでも収益があれば、おママの老後の足しになるし、考えてみてよ。おママにとって,やることがあるのは本当に良いと思うんだ。続けて欲しいよ。」
なるほど…。
その時はあまり乗り気ではなかったけど、ジジからこんな話を聞くと私も考えざるを得ませんでした。
娘のアズキに相談したら、前向きな意見が返ってきました。
「一番良いのはブログだね。簡単だから、お母さん,やってみたら?
おママの作品を見てもらうのは賛成。でもブログの収益ってそんな老後の足しになるほどじゃないよ。」
私は当時,実家で時事の仕事を手伝っていましたから、毎日作業机に向かうおママの後ろ姿を目にしていました。
黙々と貼り絵に没頭する集中力とエネルギーはどこから湧いてくるのだろう。
そして、多少、身贔屓もありますが、綺麗で素敵な作品も多いです。
しかも、当時すでにおママは10年近く貼り絵を続けていたので、作品枚数は膨大でした。
やってみようか。
私もネットで調べたし,考えました。姉のオネコにも相談しました。
そして,決めました。
「ブログはやってみようと思う。家族以外の人にも見てもらえたら嬉しい。でも、アフィリエイトはやらない。つまり収益化はしません。」
ジジは少し残念そうでしたが、ひとまずブログを作成して、作品を公開する事は喜んでくれました。
私がアフィリエイトを全く考えない理由は、おママ自身が貼り絵を収益目的で制作していないからです。あくまで趣味で、黙々と好きだから,楽しいからやっている事なのに、娘の私が収益化を考えるのはちょっと違うと思ったのです。
それにアズキの言う通り、おママの介護費用を稼ごうと収益化を期待すると、なかなか思うようにいかなかった場合、私はストレスを抱えてブログ自体をやめてしまいそうです。
おママが後何年貼り絵を続けられるかわからない状況でした。
おママが新作を制作している間はそれを紹介し、出来なくなったら、膨大な過去作品を紹介しよう。
おママが長年コツコツ続けてきた貼り絵を、私もコツコツと長いスパンで紹介していきたい。
そう思って,始めました。
(↑)2021年9月に描いたイラストを再掲載しました。
*なぜ,おママはこれだったのだろう
おママは2007年に認知症と診断されました。
その1〜2年前におママはこの貼り絵を始めました。
サイズはハガキ大。包装紙や千代紙,雑誌の広告や包装紙など、材料はおママの心の琴線に触れた身近な紙類です。そして一般的なハサミでそれを思い思いに切り抜き、和紙のハガキにコラージュしていく作品です。ほとんどが抽象的,幾何学的な画面構成で、具象はあまりありません。
一般的に高齢になれば何かをやる気力が衰えてきます。ましてや認知症になれば趣味で続けていたことができなくなってきます。
しかし、おママは貼り絵を続けていられたので、一人でじっと座って時間を過ごすことができていました。その事に私たち家族は救われてきました。
でも、おママが貼り絵を始めるきっかけは何だったのでしょう。
おママは40代から革工芸を習い始め、アメリカンクラフトカービングから、50代後半から60代は革を使ったヨーロッパの伝統的な本の装丁技術(ルリユール)を習い、皮の表面に異なる革を象嵌したり、金箔で模様を施す工芸金箔に取り組みました。
おママが認知症になってすぐの頃、本人からこんな話を聞きました。
「誰だったか忘れたけど、お仲間(ルリユールを一緒に学び、定期的にグループ展をやっていた仲間)の一人が言っていたの。『ハガキにね、きれいな紙や布を貼っていくのは手軽だし楽しいわよ』って。」
おママの道具類とともに布を貼った葉書のカードがたくさん出てきたので、その作者の方だったのかも知れません。
当時のおママにとって、革の象嵌や工芸金箔の箔押しだという工程の多い作業とは、比べ物にならないくらい、貼り絵は容易かったと思います。
綺麗な紙が好き。ハサミで切ったり貼り付けたりは、少女時代から大好き。
デザインを考えたりして頭は使うけど,何より気楽に取り組めて、楽しい。
おママは手軽な楽しみを長く続けられて本当に良かったと思います。
おママは今年(2023年1月)に特別養護老人ホームに入所しました。
そのため新しい作品はもうできません。
2016年末から2022年12月までの作品をご紹介し終わったら、それ以前の作品をブログにアップして行きたいと思います。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
(↓)貼り絵以前のおママの制作活動について
(↓)私が写真を撮影していると、おママは「なぜ?」と疑問を持つこともありました。
*本日アップの貼り絵
2018年9月23日の作品です。ほぼ5年前ですね。(^。^)
私のいない時に制作されたので、写真は全くありません。
(↓)こちらのチラシを使いました。
(↓)5年前の写真ですが、元はこんな感じのチラシでした。
(↓)おママにとってお馴染みの紅茶のティーバッグの袋も使っています。
(↓)同じチラシを使った関連作品です。」
おママの貼り絵を見てくださり,ありがとうございます。