アルツハイマーとともに〜おママの貼り絵日記〜

アルツハイマーの母(おママ)が作った貼り絵と暮らしを紹介しております。

葡萄の季節

(2022年2月28日 アルツハイマー認知症の診断から約15年)

 

最近、当ブログは深刻な話が多いですね。

今回はちょっと軽い内容です。(^O^)

 

おママと葡萄の思い出

まだまだ酷暑の続く夏真っ盛りですが、スーパーの果物売り場は葡萄が多くなりました。

秋の味覚という印象が強いのですが、国産,輸入ともに周年出回っているのですね。(↓でも、旬と言えば、8月から9月を中心に10月頃のようです。

www.kudamononavi.com

おママは果物が大好きでした。

私が子供の頃は毎朝季節の果物が食卓に載っていて、もちろん葡萄も例にもれませんでした。

当時、葡萄といえば、種無し小粒で子供にも食べ易いデラウェア、大粒の種有りでは巨峰とマスカットくらいだったように思います。

私は葡萄の味は好きだけど、巨峰もマスカットも苦手でした。不器用な子供でしたから、手も口周りもベタベタになってしまうのです。

しかし、流石に果物好きのおママは上手でした。

ささっと巨峰を半剥きしてフォークで種を取り出し口元に運んだかと思うと瞬時に手には皮だけ残るという、今思えば当たり前の食べ方です。しかし、子供心に手品のように思えたものです。

その点デラウェアは楽です。しかし、朝食の食卓にこれが出るのも厄介ででした。

通学時間と起床時間との兼ね合いで、もっと早く起きればいいのですが、ちまちまと小粒を取って食べるのはとても難儀な事でした。

(葡萄って、味は好きなんだけど面倒なんだよね。種がなくて皮ごとパクッと食べられれば楽なんだけどさ。)

私はなんたる横着者でしょう。おママしてみれば高い葡萄を買っても娘がこの体たらくでは張り合いがなかったでしょうね。

 

冷凍しちゃえ

最近では、種無し皮ごと食べられる品種の代表格はシャインマスカットでしょう。

国産の品種も増えましたね。でも、私は輸入物の安価な葡萄をよく買います。

理由は皮が薄いからです。

よく洗って房から粒を全部外して冷凍すれば、ひんやりとした夏のスイーツにぴったりです。

最近、(↓)この記事を読んだので、デラウェアも冷凍してみました。

nlab.itmedia.co.jp

一粒づつ摘んで皮ごと食べます。

冷たくて葡萄の甘みが心地よくて、ついつい食べ過ぎになりそうなくらい美味しいです。

 

冷たいデラウェアを食べながら、ふと思いました。

(おママは絶対に皮ごと食べたりしないだろう。)

今のおママは口の中でちょっと硬いなと感じたら直ぐに口から出してしまいます。

それに、おママの感覚では

「皮ごと食べるなんて」

と抵抗があると思います。

今年はシーズン中に1度くらいは実家でデラウェアを買おうかしら。

皮を除いた実だけをガラスの器に盛ったら、グリーンの果肉が綺麗でしょうから。

(^○^)v

 

本日アップの貼り絵

葡萄の季節が来るまで待っておりました。(^。^)

2022年2月28日に制作された貼り絵です。

今から約半年前、写真や動画を見直していると、今年の2月はおママの目も認知力も今とは比べ物にならないほどしっかりしていたのだと思います。

この日、(↓)こちらの作品を制作した後に、

harienikki.hatenablog.com

おママはオレンジの隣にあったシャインマスカットの写真を使ってもう1枚制作しました。

 

さて、2月28日の制作の様子です。

(↓)シャインマスカットを切り始めました。今回は形に沿って切るというよりは、シャインマスカットが収まる扇型に切っておりました。

(↓)こんな風にしようかしら。

youtu.be

<おママの貼り絵制作動画①>

2022年2月28日 15:40〜(46秒)

おママは構成を考えています。ほぼ独り言で問答をしています。

マ「こうなってきていますか? これで良いよ。

  ちょんちょんって,こうしてくださいって。」

チャーコは丸いシャインマスカットのピースを今間に指し示しながら言いました。

チ「で、これはどうなるの?」

マ「これはどうなるかわかんない。こうして、だから、これでいいでしょ。」

しかし、記憶力のないおママはこの通りにはならないことが多いです。(^O^)

 

youtu.be

<おママの貼り絵制作動画②>

2022年2月28日 15:45〜(5分27秒)

おママは計画を変更してシャインマスカットを形に沿って切り始めました。

そして、どう配置するか考えています。

マ「どっち?」

チ「知らない。分かんない。私は知りません。ていうか…、(糊をつけたら)今の状態に戻せるか分かりませんが…。」

配置を決めたのですが、果たして糊をつけて画面に戻す時に、決めた位置に戻せるでしょうか?案の定、おママはわからなくなっています。

マ「どうするの?」

チ「そのまま貼るの。」

おママは画面内にシャインマスカットを貼りました。

マ「なるほどね。」

チ「なるほどね。」(^O^)

動画の終わりには完成だったのですが、その後さらに飾りがつきました。(↓)

一応、完成した時の向きを重視して、作品の上下を決めましたが、本当はどれが良いのか私にはよく分かりません。きっとおママも「わからないわ」と言うのではないかと思います。

(↑)こうして並べてみると、やはり、ブログトップの写真の向きで良いような気がしました。

皆様はどの向きがお好きでしょうか?(^。^)

 

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。

おママの視野狭窄 その3 この光を灯し続けて

(2022年5月13日 アルツハイマー認知症の診断から約15年3ヶ月)

 

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宣告

再び呼ばれた時、

「娘さんお一人で…」

看護師さんにそう言われました。

「でも、母は重い認知症なので一人にする訳にはいきません。」

「短い時間ですから、私たちがちゃんと見ていますから。」

看護師さんはとても優しい口調なのですが、全く揺らがない強い意向を感じて、私は一人で診察室に入りました。

 

「写真を撮ってそのデーターから機械で調べてみました。まず、この画像を見て下さい。」

OCT 設定 黄斑マップ Y~X (9.0mm ×9.0mm[512×128]

両眼 緑内障(画像の部分のみ)

え…、え…?

私も緑内障がありますから、あまりの事にその画像を見つめて息を飲みました。

「中央の丸い小さな灰色部分は眼球の中で視力を司っている部分です。緑色の部分が正常なところ、桃色の部分は緑内障に侵されているところです。」

「先生、これでは、ほとんど、視野が欠損している、そういうことでしょうか。」

私は一気に全身の血が頭に上昇し、沸騰していくような気がしました。

「ご本人がどのように見えて感じているかは、視野検査ができないので本当のところ分かりません。しかし、視力を司っている部分とその周りだけと考えると」

先生はご自分の顔の前に両手でバスケットボールくらいの円を作り、

「本当に中心部だけしか見えていない可能性が高いです。」

「このままでは近い将来視野が全てなくなるという事ですね…。つまり失明するという事ですね。」

先生も一瞬言葉を詰まらせました。

「娘さん、覚悟はしておいて下さい。」

「失明するまで、母には後どのくらい時間が残されているのでしょうか。」

「それが、はっきりとしたことは言えません。個人差がありますから。一般的に緑内障で年齢とともに徐々に視野が欠けていく場合、15年から20年かかると言われています。」

「その、最後の最後の…。」

光なのでしょうね。

 

私はふと、おママが認知症の診断を受けた頃の話を思い出しました。

おママはメガネの処方なのか、結膜炎だったのか忘れましたが、今はもう閉院してしまった近所の眼科に行った事がありました。

これはオネコに聞いた事ですが、その時、緑内障があるかもしれないと言われました。しかし、その頃は何気に良く見えているようだったし、実に緻密で細かい貼り絵を制作していましたから、あまり私達は深刻に考えていませんでした。

 

その話を先生にしました。

「それが15年か16年前なので、年数的には、その時から始まっていたのですね。」

「可能性はあります。しかし今となっては、欠けてしまった視野は元には戻りません。だから、覚悟はしておいて下さい。現状できることは目薬だけです。それで、芙貴子さんは点眼はできますか?」

「本人は自分ではできないので、家族が入れてあげるしかありません。」

「とりあえず、眼圧を下げる目薬を処方しますから、なんとか点眼だけでも続けて下さい。」

「先生、この事を父と姉に説明しなくてはならないので、お手数ですが、この画像をプリントアウトしていただきたいです。」

「分かりました。受付に渡しておきます。それで、また、気になる事があったら来て下さい。」

診察室を出ると、私は立ち眩みがしました。よろけながら待合室に戻ると、おママは大人しく座っていて、私を見るなりニッコリと微笑みました。

 

受け入れ難い

私は心が弱いので、覚悟なんかできません。

目薬を6本処方されました。それがなくなったら、また受診しようと思います。

でも、それまで、おママの目が見えていてくれるのでしょうか。

info.nittomedic.co.jp

「おママ、ごめんね。もっと早く気付けばよかった。本当ごめん。」

 

帰りの道道、私は涙が止まりませんでした。コロナ禍のマスクはこんな時に便利ですね。涙をしっかり吸収してくれるのですから。誰も私が泣いているなんて、分からなかったと思います。

ふと見れば、おママはシルバーカーを押しながらご機嫌で歩いています。

 

15、6年前から点眼していたら、状況は違っていたのでしょうか?

記憶のないおママには、今見える視界が全てなのでしょうか。

「こんなものだ」と思って暮らしているのでしょうか。

その小さい視野の中にある世界はどんな感じなのでしょうか。

おママに説明しても、言葉は通じない事が多いのです。理解は不可能でしょう。

しかし、何も分からないまま失明するのだとしたら、あまりに可哀想です。

 

細い道沿いの家の塀からこんもりと紫陽花が顔を見せていました。

「お母さん、ほら見て、きれいよ。」

私はおママを紫陽花の正面に誘導しました。

「ほんとうに、きれいね。」

せめて、その小さな世界の中で綺麗なものだけ見ていてほしいと思いました。

本当のところ、おママにはどう見えているのか分かりません。想像して描いてみたのだけど、あくまで私の想像でしかないのです。悲しい…。(TT)

 

認知症緑内障

オネコが見つけてくれた論文を読みますと(↓)

アルツハイマー認知症の患者の場合、緑内障を合併している例は多いようです。

https://www.osaka-med.ac.jp/deps/opt/oldweb/staffonly/pdf/openconference_100722_01_02.

おママが2007年に東京医大アルツハイマー認知症を受けた時、脳の萎縮より血流の悪さを指摘されていたので、その血流の悪さが緑内障のリスクだったのかも知れません。

ただ、この論文によると、

「我が国で一般的に用いられている抗AD剤・塩酸ドネペジルが網膜神経節細胞に対して保護作用を有するという~略~という実験結果が報告されている……(略)」

とありました。

塩酸ドネペジルはおママが長年服用してきた「アリセプト」です。

「効いてんのかな?」

と私達は懐疑的でしたが、飲んでいてよかったのかも知れません。

info.ninchisho.net

しかし、それも焼け石に水だったとも言えます。

 

この日の宣告は、私にはとても重いものでした。

何度も反芻して、今後のおママの介護をどうしていくか、悩みました。

綺麗な千代紙や包装紙が大好きで、切り貼りして楽しんできたおママが失明していくという現実を、私はどうやって受け入れたらいいのでしょう。

私は理論や理屈で割り切れるタイプではなく、身体や精神にうけた衝撃を徐々に慣らして頭に叩き込んでいく人間です。

私には正直、分かりません。

 

ようやく2ヶ月経って、文章に書くまで咀嚼できたように思います。

ジジの入院中、ともに濃厚接触者、陽性者になって2週間ほどおママと一緒に暮らしました。その細かい動作やや反応を見ていると、視野が狭くなっていることで説明のつく事が本当に多いです。

そして、この2ヶ月の間に、さらにおママの視野は狭まっているのではないかと思います。

願わくば、おママが最後の息を引き取るその日まで、

光の世界を感じていられますように。

心から祈っております。

 

本日アップの貼り絵

2022年5月6日に制作された作品の残りを使っています。

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ちょっと不思議な紙?布です。

表面は光反射効果のある生地で、光の当たる角度によって赤系から緑系に色が変化します。シルク風のサテンでしょうか。シワのような凹凸の加工が施されています。生地自体はそれほど厚くありません。

この生地は裏面に白い紙が裏打ちされています。

おママはこの紙をいつどこで買ったのでしょう。

恐らく、認知症診断前のルリユール(ヨーロッパ伝統製本技術)を習っている頃だと思います。

この頃、おママは大事にしていた布を裏打ちに出していたので、元々は布の状態で持っていたのかもしれません。

 

(↓)おママは不思議な切り方をしています。どうなるのでしょう。(^O^)

(↓)あら,仮面みたいですね。

(↓)大好きな市松模様で飾りをつけました。

youtu.be

<おママの貼り絵制作動画>

2022年5月13日 15:36〜(1分01秒)

おママは最後に金色の三角形を貼ろうと思いました。

でも、ちょっと間違えて剥がす羽目になりました。(^◇^;)

そして出来上がりです。

youtu.be

<おママのキラキラ動画>

2022年5月27日撮影(18秒)

見る角度で色の変化が楽しめます。

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。

 

使用した他の紙

(↓)おママは製本技術を学んでいた頃に自分で染めたマーブルペーパーです。

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。


 

 

おママの視野狭窄 その2 眼科の診察

(2019年10月13日 アルツハイマー認知症の診断から約12年7ヶ月)

 

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*おママは上機嫌

歩いて駅周辺まで行くのは大変だったけど、クリニックの中で、おママは大変上機嫌でした。

待合室では鼻歌を歌い、見ず知らずの小学生男児に声をかけていました。そして、隣に座った中学生くらいのお嬢さんには、彼女の髪の毛を止めているシュシュを褒め、どれだけそれがよく似合って可愛いかを少ない語彙で表現しようとしていました。

「あなた、いいわね、ほんとうにこれが(お嬢さんの髪の毛の色が)きれいで、いいわね。」

おママさん。思ったことはすぐに口にしてしまうのね。

フレンドリーなのはいいけれど、お嬢さんは戸惑っていますよ。

私は男の子のお母さんと、お嬢さんに一言謝っておきました。

「すみません。認知症なのです。気を悪くされていたら申し訳ありません。」

でも、待合室の方々は優しかったです。

「全然、気にしないでください。大丈夫ですから。」

そう言って頂くと心が軽くなります。おママは怒鳴ったり怒ったりするタイプではないので、その点は助かるのですが、認知症の人が出掛けるのって大変です。他の方の理解と寛容さに感謝でいっぱいでした。

 

その上機嫌のおママの横で、クリニックの看護師さんと私は診察の内容について話していました。

「今の母の目の状態がなんとなく分かればいいかなと思っています。白内障も年相応にはあると思いますから。それと認知症が重いので視野検査は無理だと思いますが、欠損の可能性があるのか知りたいです。今後の参考になりますので。」

「そうですね、一応初診なので、視力検査もしますが…、平仮名とランドルト環とどちらが理解しやすいでしょうか?」

はて、平仮名は読める字は読めたり読めなかったりします。ランドルト環に感しては「どっちが空いていますか?』の質問を理解するのがまず難しいでしょう。

「どちらかと言えば、ひらがなかしら…。」

「はい。それと眼球の中をしっかり見るために瞳孔を開くための目薬を入れてもいいでしょうか。しばらく明るいところや陽に当たるとチカチカ眩しいので歩くのが危なかったりします。」

「おそらく帰る頃には日も暮れると思いますので、構いません。」

 

やはり、おママは初診ですから、ジジより待ち時間が長かったです。ジジはさっさと視力検査を済ませ、診察が終わりました。

「全部終わったら、先にジジを連れて帰ってね。」

私がオネコに言った丁度その頃、おママはようやく視力検査が始まったのです。

 

まさかのランドルト環

視力検査をしようと片目を塞いだ眼鏡をかけた途端におママは「なにこれ?」と外してしまいました。看護師さんと私で

「芙貴子さん❗️外さないで❗️」と必死に何度も掛けさせて、ようやく落ち着いたのですが、今度は

「こちらを見てください。」

と言う指示が理解できません。看護師さんは平仮名の検査板を指し示しながら言いました。

「この字は読めますか?」

「え?何のこと?知りません❗️」

あまり埒が開かないので、看護師さんはランドルト環の方に切り替えてみました。

そして、1番大きな輪っかを指し示していいました。」

「この丸、どっちが空いていますか?」

「え、え、なんだか、わかんないんだけど…。」

おママは少々混乱をきたしているようでしたが、不意に左手を上に挙げました。

そして、親指と他4本の指で丸く「C」の字を作って嬉しそうに笑うではありませんか。

「はい❗️これ。」

お,おおっ、おママ正解ですよ。

「あら、出来ますね。じゃぁ、これは?」

今度は、おママは指で作った「C」を下に向けました。

「これも正解❗️素晴らしいですね。」

おママは立て続けに4回正解して、後は疲れたのか、小さ過ぎて見えなかったのか。

正解には至りませんでした。

右目0.1、左目0.08

普段のおママの様子から考えると、実際はもう少し見えていると思います。

そして、おママは瞳孔を開く目薬をさされていました。



やはり…

しっかりおママの瞳孔が開いてから、先生の診察が始まりました。診察機械の前に座っても、おママは落ち着きがありません。不安なのでしょう。

「ここに顎を載せて下さい。」

おママは首を傾げて右手を載せました。

「載せるのは手じゃないってば❗️」

埒が開かないので、私はいささか強引におママの顎を所定の位置に載せてあげました。

先生は両目をレンズを使って診てから眼圧を測りました。

右目23、左目19。

眼圧、高めですね。

緑内障の私は毎日眼圧を下げる点眼薬を使って両目14くらいに抑えています。

「年齢相応に白内障はありますが、思いのほか白濁はありません。」

「そうですか。」

私は心の中でガッツポーズをしました。

「ただ、緑内障ですね。視野検査ができないとなると、本当にご本人がどう見えているのか判らないのですが、下半分は見えていない可能性があります。」

「手元のあたりでしょうか。」

それは、私のイメージ的にも想定内でした。手元が見えにくい、当然歩いていても足元が見えないでしょう。

「おそらく…。うーん。どうなのだろう。」

先生は少々懐疑的でした。何か気になるようです。

それで、おママの眼球の写真を撮り、画像検査を試みました。

(またもや、続く。次回が最終回です。)

 

本日アップの貼り絵

ランドルト環が話に出てきたので、この貼り絵を選んでみました。

2019年の秋におママは同じ雑誌の広告から3枚の貼り絵を制作しました。

1枚だけ、ご紹介していなかったようです。(↓)

harienikki.hatenablog.com

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元はこちらでした。(2019年10月撮影)

コム・デ・ギャルソンの広告だったと思います。

www.comme-des-garcons.com

 

他に使われたのは(↓)歌舞伎座の袋。劇場内でお土産を買うとこんな袋に入れてくれます。

(↓)そしておママが認知症になる前に大判で購入した友禅紙です。現在もよく使っています。

 

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。

おママの視野狭窄 (その1 疑念)

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(2021年11月29日 アルツハイマー認知症の診断から約14年9ヶ月)

 

動画を見ていて

私がおママの視野が気になり出したのはいつだっただろう。

そうそう、あの動画を撮った時。去年(2021年)の晩秋だったか。

ユマニチュードの特集番組を見たり,本を読んだりすると、こんな話が出てきます。

実は視覚情報の認知についても変化が起きていることが明らかになってきました。視野が狭くなったり、認知機能の衰えによって近くのものに気づかなかったりと、健常者とは違う世界を見ているといいます。

www9.nhk.or.jp

(だから、おママも認知症の症状として認知できる視野が狭まっているんだね。

つまり、問題なのは目ではなく、脳なのだ。)

 

(↓)この動画です。お時間のある方は是非診ていただきたいです。

youtu.be

<おママの視野狭窄を疑わせる動画>

2021年11月29日 15:29〜(1分16秒)

この日,1作目の貼り絵が出来上がり、おママは糊の蓋を閉めようとしました。

しかし、ごくごく手元にある橙の蓋をおママは見つけることができません。

動画の最後の方でおママは少々苛つきながら言いました。

「もう、いやになっちゃう。」

 

これが認知症の症状なのね。撮影時に、私はそう思いました。

「認知機能の衰えによって、本当に近くにある物に気付けないんだ❗️」

 

しかし、今年の4月に今回ご紹介した作品の動画を見直していて、私は「あれっ?」と疑問が湧いてきたのです。

本当にこれは認知症の進んでしまった脳の問題なのかな?

 

撮影したのは2021年11月29日でした。それから5ヶ月以上経っていました。

おママの貼り絵制作を見守っていると、更に視野は狭くなっているように感じたのです。

(だから、だから、認知症の症状が更に進んでしまったのよね…。)

それもあるでしょう。

でも、おママの目はどの程度見えているのか?

私の疑念は膨らんでいきました。

 

迷う事、2ヶ月

おママはハサミで紙を切る時,一生懸命に自分の見える位置に手元を持っていって切り始める動作をします。

老眼もあるでしょうから、それは年相応当然の動作とも考えられます。動画を撮影した11月から最近まで、ずっとハサミや糊を使っておママは貼り絵をしてきました。だから、おママには見える事は見えているはずです。

 

でも、一度、眼科に連れて行った方がいいのではないか?

 

私は緑内障です。右目は4分の1弱の視野が欠けています。しかし,自覚症状はありません。私の脳(誰の脳でも)は健気に補正をかけて欠損した部分を補って見せてくれますから。ただ、欠損部分が大きくなると流石に脳は補正が効かなくなり自覚症状が現れるようです。

そのため白内障の手術をした眼科で、年に3回視野検査をしています。

だから、視野検査がどのようなものかよく知っています。

行ったところで、認知症の重い現在のおママに視野検査が出来るとは思えません。

それどころか、日本語の語彙が相当失われているのですから、言葉が通じません。まともに視力検査だって受けられないと思います。

「いろいろな検査を今のおママに強いるのは可哀想よ。」

オネコの言い分も分かります。

私はそれから2ヶ月もあれこれ逡巡しておりました。

 

野生の勘

6月中旬になって、初期白内障のジジが駅前の眼科に行きたいと言い出しました。

「目薬がなくなった。やはり点眼したい。」

ふと、この時、私は思ったのです。

 

今だ❗️おママも今、診てもらわないとダメだ❗️

 

その心の声がどんどん強くなっていきました。

 

ほぼ、野生の勘です。半世紀に及ぶ経験上、こういう時はそれに従わないといけません。

「ジジとおママを連れて行くのは大変だから、おママは今日はやめた方がいいわよ。」

オネコさんの言うことも一理あるけど、この時ばかりは私も譲りませんでした。

「いや、今日は天気だし,そんなに暑くない❗️今日の午後、2人とも連れて行ってしまった方が良い❗️」

そして、オネコさんにはジジの方の付き添いをお願いして,半ば強引に4人で出掛けました。

ジジは車椅子でオネコに押してもらい、おママはシルバーカーを押しながら歩き、側で私がサポートしました。普通なら10分かからない道のりを倍以上の時間をかけて進むのです。本当に高齢になると近所のクリニックに行くだけでも大仕事です。

そして、結果として、私の野生の勘は正しかったのです。

(次回に続く)

 

(↓)この時,目一杯処方してくれた目薬が遂になくなって、ジジはどうしても眼科に行きたかったのです。(^◇^;)

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本日アップの貼り絵

この日は(↓)こちらの貼り絵で使った写真の残りをお題にしました。

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www.asocity-kanko.jp

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今回使用したのは右下写真の青丸で囲んだ写真の切り抜きです。

 

(↓)他に使う紙を選んでいます。

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おママは茶色い溶岩の写真を三角形に切り整えました。

(↓)その切り離された裏返しになっている紙片(黄色い矢印)は2作目で使われました。

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そして完成した後に、

最初にご紹介した動画の場面になります。

おママには手元の範囲でも部分的に認知できなくて見えない視野があるようです。

 

そして,2作目に取り組み始めました。

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youtu.be

<おママの貼り絵制作動画②>

2021年11月29日 16:01〜(1分41秒)

構成編です。

 

(↓)だんだんデザインがまとまってきました。

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(↑)これはおママが認知症になる前、製本を習っていた頃に買ったマーブルペーパーです。

関連作品です。(↓)

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おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。

遅ればせながら 月末企画❗️「今月のイチ押し‼️」(2022年7月版)

(2022年7月8日 アルツハイマー認知症の診断から約15年5ヶ月)

 

近況報告

1週間以上ブログをお休みしてしまいました。

私は7月25日にコロナに陽性になりましたが軽症でした。熱も下がり頭痛も鼻水も咳も治ったのに、体に力が入らない。

それが丁度1週間前でした。身体がだるくて食欲もなかったのです。

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「箸より重い物を持った事がない。」

私はそんなお乳母日傘のお嬢様ではありません。

しかし、箸やスプーンが重くて口元まで運ぶのに一苦労だったのです。(°_°)

 

8月4日に自宅待機が明けました。体調はイマイチでしたが、半月ぶりに我が家に帰る事ができました。巷の空気を吸って、見慣れ駅の光景なのに、どこか不慣れな土地のような気がして目眩を感じました。

今は自宅で束の間の休息をとっております。

 

7月30日に退院したジジも、なかなか体力と食欲が戻りませんでした。

誤嚥性肺炎は繰り返すといけないので、オネコも私も神経を尖らせておりましたが、

今日8月6日は漸くデイサービスに行けるくらい回復しました。

 

しかし、救急搬送前に血中酸素濃度80を切っていた影響は少々ありました。

その日から1週間前の記憶が全く無いそうです。

そして、救急搬送中はどうやら変な夢をずっとみていたようですよ。

「駅に集合させられて、たくさんの人と一緒に、千葉の方に拉致されたんだ。」

「よくわからないが、会社みたいなところで、スマホをもう1台契約されて持たされた。」

「畑みたいなところで銃撃戦に巻き込まれて、命辛々逃げおおせた。」

「よくわからない人たちが、お金を何十万も配っていて、自分も受け取ったけど、それがない…。」

ジジ。夢ですね。なかなか波瀾万丈な夢でしたね。(°_°)

しかし、その夢が現実味を帯びて感じるようで、いまだに混乱しております。

 

おママはコロナ陽性になっても元気にしていました。熱はすぐに下がって、食欲もあり、ジジの入院中もご機嫌でした。しかし、ジジ不在の間に、おママの症状は一層進んでしまったような気がします。

おママがご機嫌だったので、退屈しないようにと、私はおママと貼り絵をする時間を積極的に設けて取り組んでもらいました。

順調にハサミを使える時もありましたが、ハサミ自体を手にしても、何に使うのか理解できない事が多くなりました。

 

貼り絵もそろそろ限界なのかな…。
それが現実なのだと、思い知らされました。

 

私がコロナの症状が出てからは、全く貼り絵はしていません。また、機会を見つけておママに取り組んでもらおうとは思いますが、現状難しいような気もします。

おママには、あまり無理に頭を使わせないで、ゆったりと過ごさせてあげた方が、いいような気もしてきました。

 

月末企画❗️「今月のイチ押し」とは

2022年7月版、「月末企画❗️今月のイチ押し‼️」です。

 

このシリーズはその月におママが制作した貼り絵の中で、私やオネコが1番気に入った(面白いと思った)作品をご紹介するものです。

「月末企画❗️今月のイチ押し‼️」というカテゴリーがあるので、もし、ご興味があれば、他の月の「イチ押し」もご覧下さいませ。m(_ _)mお

 

毎月、オネコと私が「今月のイチ押し‼️」を選ぶ判断基準は⬇️こんな感じです。

 

①綺麗もしくは興味深い作品。

②制作エピソードがある。

③制作途中の写真があれば尚良し。

④おママの独自性が強い作品 

 

2022年7月版の「今月のイチ押し」はどうでしょうか?

①〜④に該当していると思います。(^O^)v

 

7月31日現在、おママは24枚の貼り絵を制作しました。

コロナの濃厚接触者から陽性者になる過程で、私が実家でおママと過ごすす時間が多かったから、枚数だけは多いと思います。

とても綺麗な作品も多いです。

「おママ、もう出来なくなっちゃうんですか?」(T_T)

ちょっと悲しいです。

そんな中で何故この貼り絵を「今月のイチ押し」にしたのか?

それはおママが自分で選んで嬉しそうに切り抜いていたから。

そして、赤い包装紙も自分で配色を選んで配置したからです。

全てが、おママ好みの作品だと思うからです。(^O^)

 

これが最後の「イチ押し」になるのか?

「お題方式の貼り絵」です。

*「お題方式の貼り絵」と「お題パック 」について

2019年の夏ぐらいから、おママは貼り絵に使う紙を自分で1から探して選ぶ事が難しくなってきました。それで、あらかじめ私が「お題」と称して何種類かの紙を用意することが多くなりました。その他に組み合わせする紙片をおママに選んでもらってから、切り貼りを楽しんでもらうようになりました。私はこれを「お題方式の貼り絵」と呼んでいます。

 私が実家に行かない時でもおママが貼り絵に取り組みやすいように、「お題」と台紙にするハガキをチャック付きのビニール袋に入れておく。これが「お題パック」です。

 

(↓)今回の「お題」はこちらです。6月に小津和紙で購入した友禅紙です。

おママ好みの民芸調で、絶対に気にいると思って購入しました。

案の定、見ればすぐ切りたくなるおママ。

(↓)ほんの1ヶ月前ですが、信じられないくらいハサミを使って上手に切り抜いておりました。

youtu.be

<おママの貼り絵制作動画①>

2022年7月8日 14:49〜(1分48秒)

マ「「チョイ、チョイ、チョイ〜。 チョッ、チョコ、チョコ🎵」

既に今井切り抜いていて、それと同じようにする為に、先に切った物を確認しながら作業をしています。

そして最後に福砂屋さんのカステラの赤い包装紙の上に載せたら、

チ「あら、赤いのの上に載せるとステキじゃない❗️」

 

(↓)切り抜いた2ピースをこんな風に配置しています。

(↓)糊を付けてしまいましょう。

(↓)周囲をどう飾ろうか思案中。

youtu.be

<おママの貼り絵制作動画②>

2022年7月8日 15:03〜(5分07秒)

この動画が撮影されてたのは安倍晋三氏が銃撃を受けて亡くなった日でした。ジジがずっとテレビの報道を見ていて、消させてくれなかったので、背景にニュースの音声が割と大きく入ってしまっています。

 

おママは赤い福砂屋の包装紙をどう使おうか一生懸命に考えています。

折り目をつけて印にしているのだけど、その動作をすぐに忘れてしまいます。

チ「さっき、此処にもって言っていたよ。」

マ「そうよね。こことここ。」

チ「そう、これを着るって言っていたよ。」

おママは軽く混乱気味です。先ほどおママ自身が折り目をつけた事をチャーコが教えました。

(↓)だんだん赤いピースが増えていきました。

最後は頑張って糊付けをして完成しました。

www.fukusaya.co.jp

www.ozuwashi.net

おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。

チャーコ、コロナになる (T_T)

(2019年11月18日 アルツハイマー認知症の診断から約12年9ヶ月)

 

抗原検査キットに救われた

先週のジジの救急搬送の記事に、お見舞いのお言葉を下さり、ありがとうございます。

お陰様で,ジジは明日退院です。(^O^)

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おママもコロナ陽性ですが、幸い軽症でした。

私はというと…、

4本の記事を勢いに任せて連投した後、7月25日の午後から発熱し、やはり、陽性になってしまいました。

 

喉の激しい痛みと強い咳。そして止まらぬ鼻水。

体温は気がつけば37度8分に上がりました。

直ぐに重い鉄を頭に打ちつけられるような頭痛と連鎖的に起こる吐気に襲われました。

 

慌ててジジとおママのかかりつ医のクリニックに電話すると、そちらも患者が多くてどうにもならず、

「明日の午後3時の発熱外来の予約が、今時点で1番早いです」

と言われました。

勿論、予約しましたが、この時、既に立ち上がるのも難しい有様ですから、私は自分が翌日に出かけられるとは思えませんでした。

 

(あぁ、そうだ。あれを取り寄せていて良かった…。)

実は私は濃厚接触者になって直ぐに、東京都が無料配布している抗原検査キットを1つ申し込んだのです。2日で届きました。

 

対象者は「都内在住・濃厚接触者になった人」です。

tokyo-testkit.jp

結局、この高原検査キットで陽性が判明し、翌日朝に電話でかかりつけ医に連絡しました。ジジとおママの経緯をご存知ですから、話は早い❗️

「来なくていいです。直ぐに「擬陽性」として発生届を出します。薬は薬局が配達しますから。」

あれこれ症状をお話しして、私は一歩も外に出ることなく、無事にお薬を手にすることができたのです。

これで私の自宅(実家)療養が始まりました。

 

軽症でした

おママもそうですが、私も熱は37度8分が最高でした。

それも発熱自体は7時間で36度台に下がってくれました。

しかし、丸2日激しい頭痛吐気に見舞われて、水分も少量しか受け付けず、脱水症状寸前で悶絶しておりました。

全身だるいような痛みがあり、トイレに行くのも一苦労。

頭痛が2日,鼻水は4日で治りました。

既に発症から5日経ちますが、未だに食欲はありません。食べられるのはお粥とゼリーくらいです。

食べられないせいか、倦怠感も強く、直ぐに立ちくらみがします。

ごくごく軽症でもコロナウイルスは侮れません。

どうぞ、皆様、罹りませんように。心からお祈り申し上げます。

コロナなんて、罹らないのが1番です。

お身体を大切になさって下さいませ。

 

それにしても、私にうつしたはずにおママさん❗️

私が調理できないので、毎日宅食と生協に冷凍弁当ですが、完食までいかなくても通常に近い食欲です。本当に逞しい❗️

食欲がなくてヨタヨタしている私が、元気なおママの食事やトイレのサポートをしているなんて…❗️

頭ではわかっているのですが,ちょっと割り切れない…。

でも、2人とも重症化しなくて本当にに良かった。救急車は懲り懲りですもの。

 

そんなこんなで、ここ数日、いただいたコメントのお返事もかけず、申し訳ありませんでした。おいおい、読者登録させていただいているブログにお伺いしようと思います。

絵を描く気になるのですから、私もまぁまぁ元気です。

本日アップの貼り絵
今日も3年前の作品をご紹介いたします。

制作日は2019年11月18日です。

この貼り絵は裏面に謎の数式が書いてあります。通常、おママは日付を書いていたのですが…。

0120=081−560

どうゆう計算式なのでしょう。もしかして、どこかのフリーダイヤルを見ながら書いたのかしら?(^O^)

(↓)最初はこんな感じだったようです。

同じ日にもう1枚製作していました。

(2019年11月18日 アルツハイマー認知症の診断から約12年9ヶ月)

 

(↓)おママが認知症になる前に購入した紙です。木炭紙くらいの大きさでした。

素敵なのですが、個性が強く、なかなか使い勝手が難しそうでした。きっと舶来の紙でしょう。裏面を見るとて染めだったのではないかと思います。

おママの貼り絵を見て下さり,ありがとうございます。

コロナ禍の救急搬送(その4 光明)

(2018年4月12日 アルツハイマー認知症の診断から約11年2ヶ月)

 

ブクマやTwitterでジジへのお見舞いのお言葉をいただきました。

ありがとうございます。

長くなりましたが、7月19日にジジが救急搬送された時の話も今回が最終回です。

絶望的な状態の中で、事態は少しずつ進展していきました。

harienikki.hatenablog.com

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必死の任務遂行

交代した救急隊も懸命に医療機関の調整を行なってくれました。

その間、私はビニールのカーテンに開けられた処置用の切り込みから手を入れて、ジジの手や胸をさすっていました。

 

「23区内の病院(リスト)は2周目ですが、状況は変わってくるんで、何度でもかけ続けます。でも、都内の少し遠い地域も当たっても良いでしょうか?」

「構いません。お願いします。」

「設備的にエクモはなくて、酸素吸入までしか対応出来ない病院でも良いですか?」

「構いません。」

 

PCR検査をした病院に到着してから約4時間。その駐車場内で救急車の交代があって、まだそこから動けません。

 

ふと隊員は私に尋ねました。

「この病院には一度入れたのですか?」

「救急車の中で検査を受けただけ、診察もしてもらっていません。降りることはできませんでした。」

「そうですか…。もう,あまりに長いです。なんとしても自分達で決めたい。次の隊に引き継ぐなんて絶対にしたくないです。」

私は涙が出そうでした。

 

救急隊員は3人1組です。

1人は「東京ルール」のコーディネーターや保健所との調整役でしょうか?分かりません。

1人は機械的にリストをしらみ潰しにかけまくる。

もう1人は御自身の経験から感触の良かった病院に、詳しい状況を説明して理解を求めつつ説得を試みました。

その後も断られ続けるのを聞くのは精神衛生上キツかったです。でも、ストレッチャーの上で身動きができない上に、酸素吸入マスクをつけているジジはもっと辛かったと思います。時々,自分の手でマスクを外してしまい,その都度血中酸素濃度が低下しました。

 

受け入れる

断られる場合、大抵瞬時に不可能の返事が来て通話は終わります。ところが、どうも隊員と問い合わせ先の病院との会話が続いているようです。

 

「そうなんです。とにかく15:00からです。こちらは最初の隊から交代している状況です。6時間以上入院先が決まらず、一度も救急車から降りることもできず,患者さんには大変な御負担になっています。付き添われているご家族も憔悴していらっしゃいます。なんとかお願いしたいです。はい是非、問い合わせていただけたらと思います。」

 

しばらくして返事が来て、更に問い合わせが続いていました。

そして22時50分。

 

「受け入れ可能になりました。先生が『俺は受け入れる、でも病棟のOKが出ないと入院は出来ないから待って』と言われていて,病棟からも了解を取り付けてくれました。」

「ありがとうございます。」

 

私は涙が出ました。地獄に仏とはこのことです。

ただし遠い西東京の中核病院でした。高速に乗って50分かかります。

「エクモの設備はなく酸素吸入と出来ることだけしかできないから、高度な延命は無理です。それでも良いですか。」

私に否やはない。

「お願いします。」

直ぐに隊員は受け入れ先病院に連絡を入れました。

「50分で着きますのでよろしくお願いします。付き添いの娘さんも一緒に向かいます。」

 

これで、あと1時間くらいでジジは入院できる。本当に嬉しかったです。

「お父さん,入院先が決まったよ。これから出発だから、もう少しがんばってね。」

するとジジも微かに笑い酸素マスクの中で

「あひがと、あひがと」

というではありませんか。

そして、病院に到着したのが午前0時でした。

処置室が空くまで待って、との事で15分ほど車内で待機し、ようやくジジは救急車から降りることができたのです。

 

コロナなんだけど…

結局、私はジジと一緒に病院の処置室に入れてもらえました。

丁寧に身体を拭いてもらい、リハパンツも紙オムツに替えてもらっている時、私はジジが耐えてきた7時間がどれだけ苦痛であったか、目に見える形で実感しました。

そして、サッパリと処置着に着替えると、ジジはようやくホッとした表情を見せました。

「田中さんはこれからMRIを撮ってきます。先ほどの血液検査の結果が出たら診察になりますので、もう少しお待ちください。」

 

あ、診察にも立ち会えるんですね。(^O^)

 

MRIから戻ったジジは点滴を受け全体的に体に張りが戻ってきました。そして、酸素吸入は鼻からになったので、話ができるようになりました。

「本当にお疲れ様でした。大変でしたね。」

「あぁ、ひどい目にあった…。」

「でも入院できて良かったわ。」

「うん。」

 

それから暫く経ち、先生が見えて診察が始まったのが午前2時過ぎでした。

MRIの画像を見せていただきながら、先生のお話は分かりやすかったです。

 

「肺炎ですが、COVIT-19の特徴的な画像とは違い、肺の底部が重点的に白く、全体的には飛沫が飛んだような細かい影なのです。これは誤嚥性肺炎の特徴です。」

 

「え…コロナではないのですか?」

 

「最近の検査は精度が高いから、陽性反応が出たということはCOVIT-19に感染していることは確かだと思います。ただ、午前中に3回嘔吐した時に誤嚥が発生して、それから高熱が出たと考えても矛盾がありません。ただ、吐いたのはそれなりに体が弱っていたことが原因かもしれないしです。」

 

「もしかしたら、無症状感染者だったけど、誤嚥性肺炎によってコロナが陽性だったと分かってしまったのでしょうか?」

 

「それは分かりませんが、仮説としてはあるかも知れません。それにCOVIT-19の肺炎は後から急に悪化することもあります。今現在、COVIT-19だけで考えたら軽症です。

でも、重い肺炎ですから、入院は絶対には必要です。」

 

なんだろう。「中等症 Ⅱ」で搬送先がなかなか決まらなかったのにね。(^◇^;)

それでもコロナが軽症ならば、ジジはしっかり退院できそうです。(^O^)

 

「しかし陽性者ですから、感染病棟に入院して頂きます。ここはあまり歩き回ったりできないので刺激が少ないのです。だから、退院後、高齢の患者さんは歩けなくなっていたり、ボケたりする方もいらっしゃいます。」

 

うむ…。これは退院後の方がが大変かもしれません。

 

その後、病棟に行くジジを見送り、入院セットやオムツセットの申込みなどをしていたら、午前3時近くになってしまいました。

看護師さんに駅までの道を教えてもらいました。

「歩いて25分くらいですよ。始発は4時半です。」

「ゆっくり歩いて行きます。」

私は深く頭を下げて歩き始めました。

人っこ一人いない、車も滅多に通らない幹線道路の歩道を歩いているうちに、急に目眩を感じました。

私…、慌てて食べた昼ご飯の後、口にしたのは持参した水筒のお茶だけです。それだって,だいぶ前になくなっていました。

それで眩しいほど明るいコンビニに寄って,プロテインドリンクを買いました。

真夜中に多少匂う大きな洗濯物の袋を下げて、プロテインを飲みながら、よろけて歩くオバサン‼️

絶対、怪しいし不気味でしょう。(^◇^;)

幸い職質などは受けずに駅に辿り着きました。そして、始発で実家へ戻りました。

長い1日でした。

お世話になった2組の救急隊員の皆様、ありがとうございました。

そして、受け入れてくださった病院の皆様、ありがとうございます。

 

その後

ジジは感染病棟で容体は安定しているそうです。ただ、オネコさんが看護師さんとの電話で聞いた話ですが…。

ジジは家に帰りたい病で看護師さんを困らせているようです。

それに夢と現実がごっちゃになったような発言があったり、どうして自分がここにいるのか、あの過酷な7時間のことは忘れているようです。

おママはというと、翌日から咳が出て、2日後には微熱。しっかりコロナウイルスの陽性者になりました。それでも高い熱にはならず軽症です。

私もおママと一緒に検査しましたが、不思議と陰性でした。それでも濃厚接触者ですから、只今おママと実家でお籠り中です。

 

長々と書いてしまいましたが、このような救急搬送も現実には起きています。

改めて、ワクチンを含めて、感染予防は重要だと思いました。

どうぞ、皆様お身体を大切になさって下さいませ。

 

本日アップの貼り絵

2018年4月12日に制作された作品です。

古いデータを見ていましたら、この貼り絵を見つけました。

なんだか救急車のように見えました。(^O^)

(↓)おママが長年貼り絵に愛用してきた紅茶のティーバックを使っています。

星形はクラフトパンチで型抜きしました。(↓)

よく見るとベージュの三角形と菱形は布のようです。

 

(↓)関連作品です。

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おママの貼り絵を見て下さり、ありがとうございます。